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素材を集めろって簡単に言うけど、これがなかなかめんどくさい


 キトリが持つタブレットには、これさえあれば魔界へ行っても大丈夫と書かれた文章と、お守りの材料の写真が映っており、詳細について書かれていた。


「これ本当に大丈夫か? 文字の色合いもセンスないし、フォントも一世代前のセンスじゃ。つーか、ネットが始まった初期によく使われたフォントじゃぞ。こんな胡散臭いサイト、信じられるか?」


 と、クーアはいかにも疑っているような表情をしたが、シアンはため息を吐いてこう言った。


「とにかくこのサイトを信じるしかないよ。胡散臭いのは私も同じだけど」


 シアンの言う通りだ。ベーキウはそう思いながらサイトの文章を読んでいた。お守りを作るのに必要な材料は三つ。


 アオクーサと呼ばれる希少な薬草。


 イエロースライムと言うスライム型のモンスターの液体。


 クレナイザメと言う危険な鮫のモンスターの目玉。


 これら三つが必要な素材だった。


「これさえ手にすれば、お守りが作れるんだな」


「そう簡単にはことは進まないみたい。素材を集めた後、ラフトって町に住む職人に素材を渡して、お守りを作ってもらわないといけないみたい」


 キトリの話を聞いたクーアは、大声を上げて驚いた。


「あんな遠い町に行くのか? しかも、あそこは堅物頑固の職人がわんさかいるのじゃ。わらわたちが素材を持って作ってくださいって言っても、話を聞いてくれるか分からぬぞ」


「そこは頼み込むしかないわね。いざとなったら、私が色仕掛けでどうにかするわ」


「止めてくれ、勇者のすることじゃないぞ」


 ベーキウはため息を吐いてこう言った。だが、キトリのおかげで次の目的が決まった。お守りを作るための素材集め。そして、ラフトの町へ向かうこと。ベーキウは立ち上がり、シアンたちを見てこう言った。


「次にすることは決まったし、すぐにでも素材を取りに行こう」


「そうだね。やってみないと分からないし」


「ベーキウが言うなら、やろう」


 シアンとクーアはそう言って立ち上がり、キトリもタブレットをしまって立ち上がった。




 数日後、ベーキウたちはモリモーリと言われる深い森の前にいた。森の見張りを行っている戦士は、ベーキウたちの姿を見て近付いた。


「あんたら、このモリモーリの森に入るつもりかい?」


「はい。アオクーサと言われる薬草が欲しいのです」


 ベーキウは簡潔にこう説明したが、戦士は声を上げてこう言った。


「珍しい人もいるもんだなぁ。アオクーサは質のいい薬草で、魔よけの効果もあるって言われていたさ。だけど、化学が発展して質のいい薬がたくさん発売されて、アオクーサの出番はなくなったってわけさ」


「まだアオクーサはあるんですか? 貴重な薬草と言われていますが」


 シアンの話を聞き、戦士は笑いながらこう言った。


「どこのサイトを見たのか分からないが、モリモーリの奥深くにアオクーサはたくさん生えているぞ。だけど、危険なモンスターがうじゃうじゃいるから気を付けろよ」


「分かったのじゃ。それじゃあ行ってくるのじゃ」


 と言って、クーアはモリモーリの入口へ入って行った。その後を追うように、ベーキウたちもモリモーリの中に入って行った。戦士はベーキウたちの背中を見て、小さく呟いた。


「あ、遭難に気を付けろって言うの、忘れてた」




 モリモーリの中はかなり薄暗かった。時刻はまだ昼なのだが、生い茂った木々が太陽の光をさえぎるため、暗くしているのだろうとベーキウは思った。


「ベーキウー。こんなに暗いとわらわこわーい」


 と、クーアは悲鳴を上げながらベーキウの左腕に抱き着いた。それを見たキトリは、汚物を見るような目でクーアを見つめた。


「ク……クーア……おばあちゃん? おばあちゃんって言っていいのかな? それより、八十五歳でぶりっ子するのはどうかと思うけど……」


「あぁん? エルフからしたら八十五歳はまだ青春時代真っ只中なんじゃ! わらわはまだ、青春をエンジョイしている真っ最中じゃ! 大体、わらわのことをおばあちゃんと言うな! 体の年齢で言えば、わらわはピッチピチの十七歳じゃ!」


「年の離れた女の子にむきにならないの、クーアおばあちゃん」


「お前におばあちゃんと言われたくないわァァァァァァァァァァ!」


 何度もおばあちゃんと言われたクーアは、シアンに襲い掛かった。シアンは飛びかかったクーアの首を掴み、そのまま地面に叩きつけた。地面に転がったクーアはすぐに立ち上がり、シアンに飛び蹴りを放った。シアンは腕を交差して飛び蹴りを防御し、クーアの足を掴んだ。


「こんのクソババアがァァァァァァァァァァ!」


 シアンは叫び声を上げながらクーアを再び地面に叩きつけようとしたのだが、地面にぶつかる前にクーアは火の魔力を放ち、再び宙に浮いた。


「何ィ!」


「ざまぁみろ! 再び宙に浮くことを予想しなかったようじゃのう! まだまだまだまだ尻の青い小娘じゃのう!」


 クーアは宙に浮いているが、バランスを崩しているシアンの顔面を見てにやりと笑った。


「このまま蹴りを喰らえェェェェェェェェェェ!」


 クーアは叫びながらシアンの顔面に向かって飛び蹴りを放った。クーアの予想通り、シアンの顔面に蹴りが命中した。シアンは小さな悲鳴を上げながら後ろに下がり、ゆっくりと倒れた。


「うっしゃー! これが経験の差という奴じゃ! わらわに勝つのは十年早いようじゃのう! カーッカッカ!」


 倒れたシアンを見て、クーアは笑いながらこう言った。だが、地面から光で作られた茨が現れ、クーアの体を縛った。


「何ィ! やられたふりをして茨を作ったのか!」


「このままあんたをズタズタにしてセクシーな姿にしてやるわ! あんたみたいな年齢のババアでも、発情する奴はいるでしょ!」


 と言って、シアンは笑いながら茨を操った。だが、ベーキウとキトリがシアンの頭にチョップを入れた。


「止めい。これ以上無駄に暴れるな」


「目的を忘れないでください」


 ベーキウとキトリの言葉を聞き、シアンは返事をして魔力を抑えた。その様子を見ていたクーアは、笑い始めた。


「カーッカッカ! 叱られてやんのー!」


「後でお前にも説教するからな」


 呆れた表情のベーキウを見て、クーアはベーキウとの親密度が下がったと心の中でショックを受けた。


 その時、騒ぎを聞きつけたのか、巨大な蛇のモンスターの群れが現れた。


「俺たちを狙っているようだな」


「そうみたい。二人があんなバカなことをしなければ、無駄な戦いをしなくてよかったのに」


 キトリの言葉を聞き、シアンとクーアは変な声を上げ、申し訳ない気持ちになった。その後、シアンは武器を持ち、クーアは魔力を解放して前に出た。


「こうなったら、あの蛇を蹴散らして評価を上げるしかない!」


「わらわも同じ気持ちじゃ! とにかく暴れて暴れて暴れまくってやるのじゃ!」


 そう言った後、シアンとクーアは蛇の群れに向かった。蛇に飲まれるかもしれないと思ったベーキウとキトリは急いでシアンとクーアの後を追いかけた。




 ベーキウは蛇を相手に戦うシアンとクーアを見て、二人の戦闘能力が高いことを察した。シアンは軽そうな見た目の剣と盾を使って戦っているが、一撃で蛇を倒している。クーアは火、水、雷、風の魔力を手足のように扱い、次々と蛇を倒していた。


「あの二人、結構やるわね……私も頑張らないと」


 そう言って、キトリは闇の魔力を解放した。キトリの足元から発した闇はいろいろな種類の武器の形となった。それを見たベーキウは驚きつつ、キトリにこう聞いた。


「キトリ、いろんな武器を使えるのか?」


「幼いころから、お父さんや魔族の人たちが鍛えてくれたの。おかげで、いろんな武器を使えるし、知識も身に着けた」


 と言って、キトリは闇で作った剣を手にし、蛇に斬りかかった。キトリの強さを目の当たりにしたベーキウは、すごい戦士が仲間になったと思った。そんな中、ベーキウの頭上から蛇が現れ、ベーキウに向かって飛びかかった。最初から蛇の存在に気付いていたベーキウは素早くクレイモアを手にし、襲い掛かってきた蛇に向かってクレイモアを振るった。クレイモアの一閃を受けた蛇は悲鳴を上げ、地面に倒れた。


「皆強いね。この調子で蛇の群れをやっつけよう!」


 シアンはベーキウたちを見回し、大きな声でこう言った。シアンの声を聞いたベーキウたちは気力が上がり、周りの蛇を睨むように見回した。


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