仕方ないときはライバルでも手を組め
宝石の洞窟でジャオウ一行と遭遇したベーキウたちは、洞窟内で激しく戦う。そんな中、いきなり天井が落下してしまった。
ベーキウは砂煙を振り払いながら、周囲を見回して声を出した。
「おーい! 近くに誰かいるかー!」
「ベーキウ! ベーキウがいるのか!」
少し離れた所から、クーアの声が響いた。クーアの無事を知ったベーキウは安堵の息を吐いた。だが、クーアらしき人影の近くに、もう一つの人影があった。
「おい、そこにいるのは誰だ!」
「あの……僕です。アルムです」
アルムの声を聞いたベーキウは驚きのあまり、声を出した。それからしばらくして、周囲に舞っていた砂煙は消えた。クーアはベーキウに近付き、抱き着いた。
「怪我がなくてよかったのじゃー。にしても……まさか、インキュバスのこいつが無事とはな」
と、クーアはアルムを睨め付けてこう言った。アルムは戸惑っていたのだが、ベーキウはため息を吐いてこう言った。
「仕方ない。こうなった以上、一時休戦だ。互いの仲間がそろうまで一緒に行動するしかないな」
その言葉を聞いたクーアとアルムは驚いた声を上げた。だが、アルムはすぐに考えた。この状況を一人で打破するのは難しい。そして、この場にいないシアン、キトリ、ベーキウ、レリムが別のところにいるかもしれないと思ったのだ。
「そうですね。僕もその案に賛成です」
「わらわは反対じゃ! 魔界のルールを破って外に出るような奴じゃ! きっと、わらわたちの不意を突いて攻撃するに違いない!」
「そんな卑怯な真似はしませんよ!」
「その言葉、俺は信じる」
ベーキウの言葉を聞き、クーアは驚いた。だが、ベーキウたちが宝石の洞窟で迷ったスノウを助けたことを思い出し、少し考えて口を開いた。
「そうじゃのう。仕方ない、ここから出るまではわらわたちもお前に手を出さん」
その後、ベーキウたちは宝石の洞窟の中を歩き、シアンたちとの合流を急いだ。
「そう簡単に合流できなさそうだな」
「さっきの戦いで、一部の天井が崩れてますね」
ベーキウとアルムは崩れた天井を見て、話をしていた。クーアは光を照らしながら周囲を見回し、ベーキウとアルムにこう言った。
「壁も崩れたようじゃ。じゃが、これはある意味新しい通路ができたってことじゃ」
「そうですね。とにかく歩くしかなさそうですね」
「シアンたちが魔力を開放していれば、それを頼りに探すんだけどな」
ベーキウがこう言った直後、上からヒャクアーシが現れた。
「こんな時に出やがって」
ベーキウはヒャクアーシの奇襲をかわし、背中のクレイモアを手にして抜刀しつつ、振るった。強烈な一閃を受けたヒャクアーシは、紫色の血を流しつつ、叫び声を上げながら後ろに下がった。
「まだ倒してないか」
「わらわがやる!」
「援護します!」
クーアの魔力解放に合わせ、アルムがナイフを投げてヒャクアーシに追撃を仕掛けた。投げたナイフはヒャクアーシの体に命中し、奥深く突き刺さった。
「僕のナイフは少し特殊なナイフです。あれに魔力を当てれば、ナイフ全体から強烈な魔力を放ちます!」
「すごいナイフじゃのう。なら、それに当てて一発ぶちかましてやる!」
クーアは突き刺さったアルムのナイフに標準を合わせ、炎の魔力を放った。炎の魔力はアルムのナイフに命中し、広範囲に広がった。
「おお! すごい炎じゃ!」
「にしても、これはすごすぎないか? 一度、離れて炎が収まるのを待とう」
ベーキウがこう言った後、ベーキウたちは後ろに下がり、炎が弱くなるのを待った。しばらくして炎は収まり、黒焦げになった床の上には、炭となったヒャクアーシがあった。
「ふぅ。何とかなりましたね」
「ああ。援護ありがとう」
戦いが終わった後、ベーキウとアルムはこんな会話をしていた。その様子を見ていたクーアは、少しもやっとしていた。
何じゃこの空気は? 敵ながらうまく連携して、なんかいい雰囲気になっておるのか? ざけんじゃねェェェェェ! BLはゲームの中で十分じゃ! ベーキウとくっつくのは、わらわだけで十分じゃァァァァァァァァァァ!
そう考えたクーアは、アルムに近付いてこう言った。
「おいインキュバス。男のくせに男を誘惑するとかマジで止めろ」
「しませんよそんなこと。と言うか、あまり近寄らないでください。あの……加齢臭が……ちょっとだけ」
「んにゃにィィィィィ! わらわから加齢臭じゃと? わらわはエルフの中ではまだ若い部類じゃ! 加齢臭など、するはずがないィィィィィ!」
そう叫びながら、クーアはどこかへ走ってしまった。いきなり走り出したクーアを見て、アルムは驚き、言葉を失ってしまった。
「すまない。クーアは若く見えるが……実年齢が……」
「ああ……なんとなく理解しました。本当にすみません」
「大丈夫だ。よくシアンがクーアの年齢をいじっているから、多分……大丈夫だと……思う」
ベーキウは途中から自信をなくし、声を小さくしながらこう言った。
加齢臭がすると言われ、ちょっぴりショックを受けたクーアは、ベーキウたちから少し離れた所で泣いていた。だが、こんな時でもクーアはこんなことを考えていた。
加齢臭がすると言われてショックを受けたが、わらわのことを気にしてベーキウがやってくるじゃろう。その時に、エロゲーのヒロインっぽい動作をして、そのままベーキウに抱き着いてやろーっと。
バカなことを考えているうち、クーアは悪いことを考える悪人のような笑みを作っていた。そんな中、後ろから足音が聞こえた。
「あぁんベーキウ! わらわのために追いかけてくれたの? クーア、嬉しい!」
甘えたような声を発しつつ、クーアは振り返ったが、そこにいたのは無数のヒャクアーシだった。
「ビギョエウワァァァァァァァァァァ! 気持ち悪い!」
逃げようとしたクーアだったが、目の前が行き止まりだったため、逃げることはできなかった。
まずい。あの数のヒャクアーシに噛まれたら、確実に死ぬ。
命の危機を察したクーアは、魔力を開放しようとした。しかし、その前にヒャクアーシが襲い掛かった。
「ギャァァァァァァァァァァ! 襲われる! エロ同人のように襲われるゥゥゥゥゥ!」
「ムカデがエロい知識を持っているわけねーだろうが!」
と、ベーキウがクレイモアを振り回し、ヒャクアーシを攻撃しながらクーアの元に近付いた。
「無事でよかったです」
ベーキウの後ろから、魔力を使ってヒャクアーシを攻撃するアルムが姿を見せた。ベーキウとアルムの姿を見たクーアは、泣きながらベーキウに抱き着いた。
「ベェェェェェェェェェェキウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! マジでやばかった! 今回ばかりはマジで死ぬかと思ったァァァァァァァァァァ!」
「あまり一人で行動しないでください」
「その通りだ」
大声で泣いているクーアに対し、ベーキウとアルムはこう言った。だが、その隙を見計らった一匹のヒャクアーシが、アルムに襲い掛かった。
「なっ! うわぁっ!」
攻撃に気付いたアルムは、とっさに後ろにジャンプしたのだが、ヒャクアーシの牙がアルムのズボンに引っかかった。そのせいで、アルムの下半身が丸出しになってしまった。
「え? ああ! み……見ないでください!」
アルムの下半身を目撃したベーキウ、クーア、そしてヒャクアーシは、目を丸くして驚いていた。
「い……インキュバスって……」
「顔の割に意外と立派なモノを持っておるの」
ベーキウとクーアの言葉を聞いたアルムは止めてくださいと言ったが、ヒャクアーシは負けた気分になったのか、大人しく地面に潜ってしまった。
「あいつも帰ってしまった。自分のモノの大きさに自信を持っていたが、それ以上のモノを見て自信を失ったのか」
「そんなこと言わないでください!」
アルムは恥ずかしさのあまり顔を赤くしながら、クーアに向かってこう叫んだ。
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