洞窟の中での再戦!
宝石の洞窟の中にいるジャオウたちは、今までずーっと中で迷っていた。
「おや? ここは確か、さっきも通ったはずだ」
「さっきもそうだけど、何度もこの道を通ってるわよ」
と、疲れた表情のレリルが呆れてこう言った。アルムは壁を見て、うなり声をあげた。
「確かにそうだね。同じ道を通った時に作った見印がある」
「ふむ……迷いやすい洞窟だな」
ジャオウはこう呟いたのだが、祖のつぶやきを聞いたレリルは、大声を上げた。
「迷いやすいと言うか、あんたがただ方向音痴なだけでしょうが! ああもう! こんな調子で焔のルビーを手に入れられるの?」
「それは……その……何とも言えない」
自身のせいで道に迷ってしまったため、ジャオウはレリルに対して言葉を返すことができなかった。
その時、アルムはベーキウたちの魔力を感じ、ジャオウとレリルに近付いた。
「大変だよ! 勇者パーティーがこの洞窟に入ってきた!」
「そうか……今、奴らと遭遇して戦うのは時間の無駄だ。早く焔のルビーを探そう」
と言って、ジャオウは歩き出したが、レリルは急に化粧をし始めた。
「あのイケメンがいるんなら、お化粧しないとねー」
「止めておけ、ニンニク女に好意を抱く男はいない。せめて、口臭を何とかしろ……」
ジャオウは呆れながら、化粧をするレリルにこう言った。
ベーキウたちは洞窟の中を走りながら、周囲を見回していた。いつ、どこで、どのタイミングでジャオウたちと遭遇し、戦いになってもいいように構えていたのだ。
「あいつらは一体どこにいるのやら」
「かすかにジャオウの魔力を感じる。この洞窟にいるのは間違いないわ」
走りながら、シアンとキトリは会話をしていた。クーアは道中に散乱しているヒャクアーシの体を見て、気持ち悪そうな声を発した。
「あのヒャクアーシはあいつらがやったのか。襲われたとはいえ、えげつないことをするのう」
「生かしておいたら、また襲われる可能性があるからな。多分俺も……そうするかもしれない」
ベーキウはヒャクアーシの死骸を見て、こう答えた。
しばらく走っていると、近くの曲がり角からレリルが姿を現した。
「ゲッ!」
シアンたちの姿を見たレリルは、反射的に姿を隠した。だが、レリルの姿を見て殺意を開放したシアンたちは、猛スピードでレリルに襲い掛かった。
「見つけたぞクソサキュバス!」
「ここがお前の死に場所じゃ!」
「跡形も残さない……」
殺意を放ちながら迫るシアンたちに追いかけられ、思わずレリルは大声を発した。
「助けてェェェェェ! ジャオウ助けて! この際だから、アルムでもいいわ! 殺されるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
レリルの大声を聞いたジャオウは、呆れながらも背中の大剣を手にし、シアンたちに攻撃を仕掛けた。前にいたシアンは魔力で盾を作り、ジャオウの攻撃を防いだ。
「グッ!」
「同じ相手に二度負けてたまるかァァァァァ!」
攻撃を受け止めたシアンは、魔力で作った盾を蹴り飛ばし、ジャオウに命中させた。ジャオウは盾を弾き飛ばし、剣を振り上げるシアンを睨んだ。だが、その後ろには魔力を開放しているクーアの姿があった。
「エルフの底力! 見せてやるのじゃ!」
魔力を開放したクーアは、両手から無数の風の刃を発した。ジャオウはバリアを張って風の刃を防御したが、クーアが放つ風の刃は威力が高く、ジャオウのバリアを削った。
「クソッ! 俺のバリアが簡単に削られる!」
「ジャオウ!」
後ろにいたアルムは、ジャオウの危機を察して魔力を開放し、地面に向けて放った。クーアは攻撃を止め、キトリを抱えて後ろに下がった。
「何か感じたの?」
「下から攻撃がくる!」
クーアが答えた瞬間、クーアがいた場所から炎の柱が発した。
「避けられたか……」
攻撃が避けられたことを察したアルムは、魔力を抑えて炎の柱を消した。その隙にキトリは闇の魔力を使い、アルムの動きを封じようとした。だが、ジャオウが大剣を構えてキトリに接近した。
「覚悟しろ、魔王の娘!」
「覚悟するのはあなたの方よ」
キトリがこう言うと、クレイモアを手にしたベーキウがジャオウに接近し、クレイモアを振り下ろしたのだ。
「なんて速さだ!」
「悪いが、この前のようにやられはしないぞ!」
ジャオウはベーキウの攻撃に対し、大剣を使って防御した。攻撃の衝撃でジャオウは後ろに下がったが、大剣を握る手は強く痺れていた。
「あのイケメン、かなり強くなっているわね。手助けするわ」
状況が五分だと察したレリルは、魔力をジャオウに分けた。
「すまん。また助けられた」
「いいってことよ。それよりも、私を守って!」
レリルはそう言って、急いで後ろに下がった。クーアとキトリが叫び声を上げながら、レリルに襲い掛かったのだ。
ベーキウはクレイモアを構え、シアンは剣を振り回していた。それに対し、ジャオウは大剣を両手で構え、アルムは無数のナイフを宙に浮かした。
「二対二だな」
「そのようだな。今回は確実にお前たちを倒す」
「何言ってんのよ。倒されるのはあんたたちの方よ」
「すみません、僕たちはやることがあるんです。そう簡単にやられるわけにはいきません」
ベーキウたちは短い会話をした後、それぞれの武器を持って走り出した。
それから、ベーキウたちの激しい戦いが幕を開けた。ベーキウのクレイモアがジャオウに襲い掛かる中、アルムがナイフを使ってベーキウを攻撃。アルムの援護を止めるため、シアンは光の魔力で矢を作り、アルムに向かって放った。
「クッ!」
シアンの攻撃を察したアルムは、急いで後ろに下がった。だが、光の矢はアルムの頬をかすった。
「アルム!」
「僕は無事だよ! ジャオウ、前に彼がいる!」
アルムの言葉を聞いたジャオウは、前を見てクレイモアを振り下ろすベーキウの姿を見た。ジャオウは横に飛んで攻撃を回避し、隙だらけのベーキウの腹に向かって大剣を突き刺そうとした。その時、ジャオウの足元が光り出した。
「光の魔力か!」
ジャオウは後ろにジャンプして様子を見た。その直後、足元から光の柱が発した。
「あれは僕の技! すぐに同じ技を使うなんて……」
光の柱を見たアルムは、自分の技がシアンによってコピーされたことを察し、驚いた。そんな中、シアンはにやりと笑った。
「マネするだけじゃないわよ!」
そう言うと、地面から次々と光の柱が現れた。
「クソッ! 次から次へと!」
ジャオウは次々と現れる光の柱を見て、急いで逃げ始めた。しばらく逃げると、目の前からベーキウが現れた。
「今だァァァァァ!」
ベーキウは力強くクレイモアを握り、ジャオウに向かって振り下ろした。後ろに下がったら光の柱によって大ダメージを受けると考えたジャオウは、急いで大剣を使って防御しようと考えた。ベーキウのクレイモアとジャオウの大剣がぶつかり合い、周囲に激しい金属のぶつかる音が響いた。
「グッ……」
「あの時より本当に強くなった……だが、俺は負けない!」
ジャオウは横にジャンプし、ベーキウから距離をとった。
長い戦いになるな……これは。
ベーキウはクレイモアを構えつつ、乱れた呼吸を整えた。そんな中、いきなり小さな石が落ちてきた。
「な……何だ?」
「変な音がする。何かあったのか?」
ベーキウとジャオウが周囲を見回す中、突如轟音が響き渡り、上から土が降ってきた。
「おわァァァァァァァァァァ!」
「まさか、戦いで発した衝撃で、地面が崩れたの?」
「のじゃァァァァァ! そんなのってありかァァァァァ!」
「落ち着いて! とにかく一度集まろう……無理ね」
「こんな展開になるなんて!」
「うわァァァァァ! 少し派手にやりすぎたァァァァァ!」
「いやァァァァァァァァァァ! こんなところで死にたくないィィィィィ!」
上から降ってくる土を見たベーキウたちは、悲鳴を上げることしかできなかった。
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