誤解を受けるのは、それらしい行動をしたからだ
ベーキウは目の前に突き付けられたレイピアの刃を見て、深いため息を吐いていた。ペデラタンはレイピアを振り回していたのだが、その動きを見て、ベーキウはペデラタンの剣の腕は素人レベルだと判断したのだ。
「さぁ、私のレイピアでハチの巣にしてやる! 覚悟しろ、誘拐犯!」
と言って、ペデラタンは情けない掛け声を発してベーキウに攻撃を仕掛けた。呆れた表情でベーキウは攻撃をかわし、シアンたちの方を見た。
「おーい、どうにかしてくれよこの人」
「うーん……情けない性癖を持っているとはいえ、一応この人王様みたいだし、半殺しにしたら後で厄介よ」
シアンはため息を吐きながら、ベーキウにこう言った。そんな中、クーアが腕を回しながらこう言った。
「ぶっ飛ばしてもいいなら、わらわが思いっきりドカーンってやるのじゃが」
「止めて、森がぶっ飛ぶわ」
魔力を開放しようとしたクーアを、キトリが止めた。
「決闘の最中だってのに、仲間のババアたちと話をする余裕があるのかい?」
レイピアを振り回しながら、ペデラタンが勝ち誇ったかのようにこう言った。ババアたちと言葉を聞いたシアンたちは、怒りが爆発した。
「ベーキウ! あのクソロリコン野郎をみじん切りにしなさい!」
「遺体の処理はわらわがやっておく! 大丈夫だ! 塵になって風に吹き飛べば、跡形も残らない!」
「闇で消すから、証拠はないに等しい!」
シアンたちの物騒な言葉を聞き、ベーキウはシアンたちを鎮めようとした。だが、ベーキウの頭上をレイピアがかすった。
「ふん。運がいいな」
ペデラタンはレイピアを構え、呆れた表情をしているスノウの方を向き、カッコつけるためにウインクをした。そのウインクを見たスノウは嗚咽し、ベーキウにこう言った。
「ベーキウ様! このクソみたいな気持ち悪いロリコン野郎の首をスパって切っちゃってください! こいつの国の連中があーだこーだ言っても、私の権力であなたを守ります!」
「何を言っているんだマイエンジェル! そんな物騒なことを言わないでくれ!」
ペデラタンは涙目でスノウにこう言った。戦う気がないベーキウは、ため息を吐いてペデラタンにこう言った。
「あのー。俺とあなたが本気で戦ったら、確実に俺が勝ちます。あなた、戦いに慣れていませんよね? ド素人ですよね?」
ベーキウの言葉を聞き、イラっとしたペデラタンはレイピアをベーキウに向け、言葉を返した。
「私を素人と思わないでほしいな。これでも毎日イメージトレーニングをしている。脳内での私は、幼女を守るスーパーヒーローなのだ!」
「おいおい……脳内でトレーニングしても、体を動かさないと意味がありませんよ」
「そんなことはない。私の剣技で、お前をあの世へ送ってやるぞ!」
ペデラタンは勢いを付けてベーキウに向かって走り出し、レイピアを連続で突いた。その攻撃に対し、ベーキウは隙を見て背中のクレイモアを手にし、下から振るった。クレイモアの刃とレイピアの刃が激突し、甲高い金属音が響いた。
「あ、これ危ないかも」
危機を察したシアンは、自分自身とキトリとスノウの周囲にバリアを張った。自分だけバリアが張られていないことを知ったクーアは、驚いた表情をしてシアンに問い詰めた。
「こらァァァァァァァァァァ! わらわもバリアの中に入れんかい!」
「あんたなら大丈夫でしょー? 何かが頭に突き刺さっても、あんたなら生きてるって信じてるから。信用してるから」
「それを信用と言えるかバカモノ!」
クーアが叫び声を発した後、少し離れた所にレイピアの刃が落下した。
「な……私のレイピアが……」
「これで理解してください。俺とあなたの力の差を」
ベーキウはそう言ってクレイモアを背中に担いだ。敗北を受け入れられないペデラタンは、魔力を開放してベーキウに襲い掛かった。
「まだ私は負けていない! 勝負はこれからだ!」
「えー? まだやるんですかー?」
呆れた表情のベーキウはペデラタンの突進をかわし、後ろに飛んだペデラタンの様子を見た。ペデラタンの両手からは雷が発していて、ベーキウはペデラタンが雷の魔力の使い手だと判断した。
「今度は確実にお前に攻撃を当ててやる! 喰らえ! 私の一族に伝わる必殺の拳! インフィニティローリングパンチ!」
ペデラタンは必殺技の名前を叫ぶと、走りながら両腕を振り回した。
「ただの駄々っ子パンチじゃない」
インフィニティローリングパンチを見たシアンは、呆れてこう言った。ベーキウは仕方ないと思いつつ、下に落ちていた石を拾い、ペデラタンの右足のすねに向かって投げた。投げられた石は、見事に右足のすねに命中した。
「あごん!」
右足のすねから激痛を感じたペデラタンは情けない表情になり、バランスを崩してその場に倒れた。
「これで理解してください。あなたは俺を倒せないって」
ベーキウは倒れているペデラタンに向かって、大声でこう言った。
一方その頃、カンベイたちから連絡を受けたヒルヴィルが、箒に乗ってカンベイたちの小屋に向かっていた。
「あと少しでカンベイたちの小屋ね……あら? 嫌な奴の魔力を感じるわ」
ヒルヴィルはカンベイたちの小屋の前で、何かが起きていると察し、急いで小屋に向かった。
小屋に到着したヒルヴィルは、近くにいたキトリに声をかけた。
「あなたは確か、あのイケメンさんと一緒にいた魔界の子よね?」
「ん? あ、ヒルヴィル様」
キトリの声を聞いたシアンたちは、ヒルヴィルの存在に気付き、ベーキウとペデラタンもヒルヴィルの姿を見て、驚いた表情をしていた。
「これはこれはヒルヴィル様。あなたのような方が、どうしてここへ?」
「知り合いのドワーフが、スノウを保護したと連絡をしてくれたのよ。それで、迎えにきたのよ。私からも質問です。どうして王の立場であるあなたがここにいて、情けない恰好をしているのですか?」
ヒルヴィルにこう聞かれ、ペデラタンは言葉を失った。ペデラタンはヒルヴィルを出し抜いてスノウを保護し、いろいろとやろうとしていたのだ。
「姫、あのロリコン野郎のやることは一つに決まっています」
「どーせ、先にあの王女を保護して連れ帰って、全年齢対象の小説では書けないことをやろうとしていたのですよ」
シアンとクーアの言葉を聞き、ヒルヴィルは鬼のような目つきでペデラタンを睨んだ。視線を感じて恐怖を覚えたペデラタンは、急いで倒れているバイクに近付いた。
「私、急用を思い出した! あー! 急がないと大変だー!」
と、見え見えの嘘を言い、ペデラタンはバイクに乗って逃げて行った。その途中、大きな岩に激突し、ペデラタンは悲鳴を上げながら宙に舞い、どこかへ消えてしまった。
騒動が落ち着いた後、ヒルヴィルはスノウに近付いた。
「スノウ、家出なんてするもんじゃありません。昨日は大変だったのよ。鏡さんも一晩中あなたを探して気配を探っていたし、城の兵士たちもずーっと走って探していたから、皆ばてて疲れたのよ」
「うう……ごめんなさい」
スノウはそう言いながら、ベーキウの方を見た。その時、シアンとクーアがスノウの両肩を持ち、ヒルヴィルに押し付けた。
「とりあえず三度目の脱走騒動がないようにお願いします!」
「わらわたちには重大な使命があるので! これ以上王女様に危険な目に合わせるのはごめんでーす!」
と、シアンとクーアは笑顔でこう言った。その様子を見たキトリは、ため息を吐いて呟いた。
「恋のライバルを減らすために必死ね……」
その後、キトリは騒ぐシアンとクーアとスノウを無視し、ジャオウたちがいるであろう宝石の洞窟がある方向を見ていた。
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