ジャオウたちを追いかけろ!
ジャオウたちの手助けにより、スノウは何とか宝石の洞窟の出入り口に到着した。
「俺たちが案内するのはここまでだ。あとは自分で何とかなるだろう」
「外に出られたから、携帯電話も使えると思うよ。電波も届くし」
「ま、今度散歩をする時は気を付けなさいよね。今回、助かったのは運がよかったと思った方がいいわよ」
「ありがとうございます。あなたたちのおかげで、命拾いしました」
スノウはそう言って、頭を下げた。ジャオウは少し笑って返事を返すと、アルムとレリルと一緒に洞窟の奥へ向かった。
仮面を被っていたから変な人だと思ったけど、案外いい人でよかった。
と、スノウは去って行くジャオウの背中を見て、こう思っていた。
ベーキウとキトリは、疲れた顔をしてカンベイたちの小屋に戻ってきた。ベーキウとキトリの疲れ切った顔を見たツーシロは、声を上げて驚いた。
「ベーキウさん、キトリさん! どうしたんですかその顔は!」
「実は……」
ベーキウはツーシロにスノウの家で騒動のことを語った。ベーキウとキトリはヒルヴィルと一緒にスノウを探していたが、結局見つけることはできなかった。ヒルヴィルが城の兵士と探すから、二人は一度戻ってもいいと伝えたので、ベーキウとキトリは一度、戻ることにしたのだ。
「スノウ王女がまた家出。ずーっと探してたんですか」
「はい。また明日、城下町に行って探そうと思っています」
ベーキウがコーヒーを飲んでこう言うと、チャイム音が鳴り響いた。近くにいたロウベが扉を開けると、そこにはスノウが立っていた。
「ブッフェ!」
「王女!」
スノウの姿を見たベーキウはコーヒーを吹き出し、キトリは目を丸くして驚いた。スノウはベーキウに抱き着こうとしたのだが、キトリがスノウを止めた。
「ああん! ベーキウ様に抱き着こうとしたのに!」
「その前に、どうして助かったのか教えてください」
キトリがこう聞くと、後ろからシアンたちがやってきた。
「帰ったわよ……げ! 発情王女! どうしてあんたがここにいるのよ!」
「貴様もしかして、ベーキウを追いかけてきたのか! しつこい幼女じゃのう!」
シアンとクーアはスノウに向かってこう言った。そんな中、ベーキウが何も状況を理解していない三人に話をした。
「家出したのねー」
「話は分かった。さっさと城に戻って皆に頭を下げてくるのじゃ」
シアンとクーアはそう言うと、スノウを外に追い出した。これで邪魔者がいなくなったと思ったシアンとクーアだったが、すぐにスノウは扉を開けた。
「ちょっと! 私はこの国の王女よ! そんな扱いしなくてもいいではありませんか!」
「うるさい! 王女だろうが何だろうが、私とベーキウの恋路の邪魔をする奴はぶっ飛ばすわよ!」
「ちょっと黙ってて」
イライラしていたキトリは、シアンとクーアを闇のロープを作り、口と体を縛った。
「スノウ王女、どうやって助かったのか教えてください」
「はい。実は……」
その後、スノウはジャオウたちによって助けられたことをベーキウたちに伝えた。
「とても素敵な方でした。変な仮面を被っていたから、最初は変な人かと思っていたんですけど……もしかして、お知合いですか?」
「ああ。あいつを倒すために、俺たちは旅をしているんだ!」
「あいつらはまだ洞窟にいるはず! 行くわよ、皆!」
会話後、ベーキウたちは急いで宝石の洞窟へ向かった。スノウはベーキウの後を追いかけようとしたのだが、カンベイがスノウの手を握って動きを止めた。
「王女はここで待機していてください。また迷子になられては困ります」
「むー。仕方ありませんわねぇ……」
スノウは頬を膨らませながら、近くの椅子に座った。
宝石の洞窟へ向かったベーキウたちは、急いでジャオウたちの姿を探した。
「今回も負けるかもしれないけど、今回は絶対に勝つ!」
「シアン、何を言っているのか分からないわよ」
「そのくらい気合が入っているってことで!」
シアンとキトリは、走りながら話をしていた。しばらく走っていると、掘られた跡がある壁を見つけた。
「壁が掘られてる」
「雑に掘られてるわね。カンベイさんたちなら、道具を使って掘るからこんなに汚くないけど」
シアンは壁を見ながらこう言った。その時、何かを見つけたキトリは、ベーキウとシアンに近付いた。
「あれを見て、宝石が散乱してるわ」
「ありゃほんと」
散乱している宝石を見て、ベーキウたちは急いでその場に近付いた。宝石の一つを手にし、ベーキウは様子を見た。
「誰かが手に入れたけど、邪魔だから捨てたのかな?」
宝石を調べていると、宝石にまとわりついているニンニク臭を鼻にし、思わずベーキウは咳き込んだ。
「ウゲェッ! トラウマになるようなニンニク臭!」
「ニンニク臭? あ……もしかして!」
シアンの脳裏に、憎きレリルの顔が映った。
「あのサキュバス、宝石を手に入れたのはいいけれど、邪魔だから捨てたわね!」
「多分、動きにくいから捨てたのじゃろう。もったいないからわらわがもらっちゃおー」
クーアはリュックを開き、散らばっている宝石を拾い始めた。その様子を見たキトリは、クーアの頭を叩いた。
「何すんのじゃ!」
「みっともないことをしないで。それよりも、ここにジャオウたちがいるって分かったから、探し出して倒そう」
「そうじゃのう……でも、宝石はどうする?」
「とりあえずいくつか持って、後でカンベイさんたちに渡そう」
ベーキウはそう言って、周囲を見回した。
ベーキウはしばらく歩いていたのだが、ジャオウたちと遭遇することはなかった。
「あいつら、一体どこにいるの?」
「広い洞窟だから、すれ違ったかもしれないわね」
キトリの言葉を聞き、シアンは納得した。そんな中、クーアがあくびをしながらこう言った。
「罠を仕掛けるか?」
「罠?」
ベーキウがこう聞くと、クーアはリュックから一冊の本を取り出した。ベーキウはその本の表紙を見て、驚きの悲鳴を上げた。
「おいクーア! どうしてエロ本なんて持っているんだ!」
「落ちてたのじゃ。奇麗だったし、落ち着いたら古本屋で売ろうかなーって」
その言葉を聞き、シアンとキトリはクーアの行動に呆れていた。その後、エロ本の周囲にありとあらゆる魔力で作った罠を仕掛け、ベーキウたちはしばらく様子を見ることにした。
「あんな方法で引っかかるかな?」
「あいつらも男だから、エロい姿の女を見たら興奮すると思うのじゃが……」
「あんたねぇ、男全員が全裸の女を見て、興奮すると思ってんじゃないわよ。男の中には、ベーキウのような真面目な人もいるかもしれないのに」
「シアンの言うことに同調するわ。クーア、早く本をしまってきなさい」
シアンとキトリの視線を感じ、クーアは舌打ちをして立ち上がった。
「わーったわーった。それじゃあエロ本をしまってくるわ。いいアイデアと思ったんじゃがのー」
ぶつぶつ文句を言いながら、クーアはエロ本の元へ向かった。その途中、クーアは転倒し、罠があるところに顔をぶつけてしまった。その直後、罠が発動し、大爆発がクーアを襲った。
「ノッジャァァァァァ!」
「はぁ……何やってんのよあのおばさん……」
「とりあえず助けに行きましょう」
「だな」
その後、ベーキウたちはクーアの元へ向かった。爆発のせいでクーアとエロ本は真っ黒に焦げていた。
「あーあ、ボロボロ」
「本もボロボロになっちゃったわね。持っただけで、塵になった」
「は……早く治療して……」
周囲の惨状を目にして感想を言うシアンとキトリに対し、クーアは苦しそうにこう言った。
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