深夜の大激闘
ベーキウは昨晩のことを思い出しながら、テントを張っていた。ベーキウはカンベイたちの寝室の隣の客用寝室を使っていたのだが、隣の部屋で眠りカンベイたちのいびきがうるさく、その上シアンとクーアが夜這いを仕掛けるために窓から部屋に乗り込もうとしたのだ。
あんなことがあったから、眠い。今日は眠かった。
ベーキウはため息を吐きつつ、テントを張る作業を続けた。その様子を、シアンがこっそりと見ていた。
ベーキウは確実に寝るため、離れた所でテントを張って眠る。誰にもばれずにテントに侵入すれば、無事にベーキウとニャンニャンできる!
そう思ったシアンは、深夜のことを考えながらにやにやと笑みを浮かべていた。その一方で、クーアが別のところからテントを張るベーキウを見ていた。
今日、ベーキウはテントを使って一人で眠るのか。ぐひひひひひ。中に入ればベーキウと(ピーーーーー!)できる!
と、そんなことを考えていた。
数時間後、ベーキウは無事にテントを張り終え、中に入って休むことにした。その時、シアンとクーアは同時に走り出した。そして、目が合い、互いに同じことを考えていると察した。
「クソガキがァァァァァァァァァァ! もしや、お前も同じことを考えておったのかァァァァァァァァァァ!」
「クソババアァァァァァァァァァァ! 私と同じことを考えてんじゃないわよ! ババアババアらしく縁側で緑茶でも飲んでなさい!」
シアンとクーアはいがみ合いながら、ベーキウが眠るテントへ向かった。そんな中、上から闇で作られた檻が降ってきて、シアンとクーアを閉じ込めた。
「これは闇の魔力!」
「もしかしてキトリが!」
シアンとクーアが上を見上げると、そこには魔力を開放して宙に浮いているキトリの姿があった。
「バカなことを考えると思ってたわ。一晩そこで反省してなさい」
と言って、キトリはカンベイたちの家に向かった。ベーキウはテントから顔を出し、シアンとクーアに向かってこう言った。
「お前たちは少し反省しろ。もう少し自分の欲を抑えろ。飯は持ってきてやるから」
そう言うと、ベーキウはテントを出て、カンベイたちの家へ向かった。
数時間後、食事と風呂を済ませたベーキウは、テントへ戻って寝ることにした。シアンはテントの明かりが消えたことを察し、目を開けた。
今ならチャンス。
シアンはこの時を待っていた。キトリが闇の魔力で作った檻は頑丈だが、時間が経つにつれ、魔力は弱くなる。その時に檻をばれないように壊し、脱出してベーキウの元へ行こうと考えていたのだ。
ぐっふっふ。この隙にベーキウのテントに入って、寝袋の中に入って、そのままチョメチョメしてやるわァァァァァ!
シアンは下種な見えを浮かべながら、テントへ向かって走り出した。だが、その途中でシアンは転倒した。
「いたた……どうして? 足を取られるようなものはないのに」
「お前は愚かじゃなぁ。わらわも同じことを考えていたのじゃァァァァァ!」
後ろにいたのは、這いつくばるような姿勢をしているクーアだった。クーアは走るシアンの足を掴み、わざと転倒させたのだ。
「このクソババ……」
シアンはクーアに殴りかかろうとしたのだが、クーアは水の魔力を発し、シアンの口を封じた。
「ギャーハッハ! 愉快じゃのう! 忘れたかー? わらわは闇と光以外の魔力を使えるのじゃ!」
クーアは高笑いしながら、苦しそうな表情をするシアンを見ていたが、シアンは魔力を開放し、口元の水を吹き飛ばした。
「知っているわよ! この作者がたまにあんたの年齢以外の設定を忘れるけど、私はちゃんと覚えているわよ!」
と言って、シアンは光の刃を発した。クーアはジャンプして光の刃をかわし、地面にいるシアンに向かって落下しながら蹴りを放った。
「この蹴りを受けてぶっ飛べェェェェェ!」
シアンはクーアの蹴りに対し、腕を使って防御した。そして、シアンはすぐにクーアの足を掴み、勢いを付けて地面に叩きつけた。
「ブエッヘ!」
「はっはっは! そのかわいい顔が無様になっちゃったわねェェェェェ! あ、ババアだからかわいいもクソもないわね!」
「このクソガキがァァァァァ!」
地面に倒れていたクーアは、体をダンスするように回転させ、シアンの足を蹴った。バランスを崩したシアンは悲鳴を上げながらその場に倒れた。
「いったぁ……」
「ギャーッハッハ! 攻守逆転じゃのう!」
倒れたシアンに対し、クーアは魔力を開放して水を発した。その後、シアンの両手足を濡らして凍らし、動きを封じた。
「あああああ! このババア! 動きを封じやがったわねェェェェェ!」
「おーほっほ! 尻の青いクソガキはそこで地面でもぺろぺろしてなさーい。わらわはベーキウの腕の中で夢の世界に入ってくるからのー」
「クソッたれがァァァァァ!」
スキップをしながらベーキウが眠るテントへ向かうクーアだったが、シアンは気合と魔力を込めて、両手足の氷を吹き飛ばした。
「な……何!」
「無駄だったわね、クソババア!」
シアンは叫びながら、ベーキウのテントへ向かって走り出した。戦いよりもベーキウとの熱い夜を優先したとクーアは思い、急いで走り出した。
「待てゴラァァァァァ! わらわがベーキウと熱い夜を楽しむんじゃァァァァァ!」
「クソババア! あんたが熱い夜を楽しんだら、干からびて死ぬわよ! 歳を考えなさい!」
「歳を考えるのはお前の方じゃ! まだお前は未成年じゃろうが! エッチなことをするのはまだ早いのじゃ!」
「あんたは遅すぎたのよ!」
「このクソガキがァァァァァ!」
そんな感じの口喧嘩をしながら、シアンとクーアはベーキウのテントへ向かった。あと一歩のところで、上から闇の檻が降ってきた。シアンとクーアが上を見上げると、そこにはパジャマ姿のキトリが宙に浮いていた。
「うるさいわよ……眠れないじゃない」
キトリはあくびをしながらそう言うと、指を鳴らした。その直後、闇の雷がシアンとクーアを襲い、気絶させた。
「ようやく静かになった……」
キトリはそう言うと、再びあくびをして、寝室へ戻った。
スノウは自室のベランダで、満月を見ていた。何かを思っては、何度もため息を吐いていた。その様子を、ヒルヴィルと王様が見ていた。
「スノウ、何かあった?」
王様がヒルヴィルにこう聞くと、昼間のことを思い出しながら、ヒルヴィルは答えた。
「実は昼、あの子が城下町に出た時の話なんだけど、ベーキウって名前のイケメン剣士に助けてもらったの」
「イケメン剣士? ほぉ。それじゃあスノウは、そのベーキウって剣士に一目惚れしたわけか」
王様は納得した表情でこう言った。ヒルヴィルはスノウの様子を見て、不安な表情になった。
「私は不安だわ。あの子、結構行動力があるから、また城下町に飛び出す可能性があるわね」
「そうじゃのう。何か、策を練らんとこりゃーまずいな」
王様とヒルヴィルはそう言うと、ため息を吐いた。そんな中、スノウは満月を見て、小さくこう言った。
「ベーキウ様……また、あなたに会いたいですわ」
その直後、満月の近くに流れ星が通った。それを見たスノウは、大声を発した。
「あ! 流れ星! お願いですから、私とベーキウ様を夫婦にしてください! 私とベーキウ様を夫婦にしてください! 私とベーキウ様を夫婦にしてください! はい! これで三回唱えました! さっさと私の願いをかなえてください! 今、すぐに! あのお邪魔虫が邪魔をする前に願いをかなえてください! 早く願いをかなえなさいよ! 恋のライバルが多いから、早くかなえてほしいのにィィィィィ!」
美しい満月の夜の中、スノウの叫び声が何度も響き渡った。
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