表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/300

その頃のジャオウさんたち


 ベーキウたちがヘルグリームの城下町でスノウと遭遇しているころ、ユイーマから逃げているジャオウたちは、道中で野宿をしていた。


 道から外れた人がいなそうな場所で、ジャオウたちはテントを張って休んでいた。アルムがテントの入り口から、顔を出して周囲を見回していた。


「今、人はいないよ」


「そうか。料理をするなら今のうちだな」


 ジャオウは外に出て、簡易的なコンロと小さな鍋を取り出し、スープを作り始めた。アルムはジャオウの横に立ち、食材を切り始めた。そんな中、レリルはテントの中で横になっていた。


「ああ……テントの中ってあまり快適じゃないわね」


 そう呟いた直後、レリルの耳元で羽音が響いた。飛び起きたレリルは周囲を見回し、飛び回る蚊を見つけた。


「ああもう、蚊がいるのね。夏じゃないのに……」


 レリルは殺虫スプレーを探したが、そんな便利なものは買っていないと思いだし、苛立ちながら飛び回る蚊を狙って手を叩き始めた。その音を聞いたアルムは、ため息を吐いていた。


「バカなことをやっているなら、こっちを手伝ってほしいのに……」


「止めておけ。あいつ一人に料理を任せたら、ニンニク料理になるぞ」


「うーん……それは勘弁」


 ジャオウとアルムは話をしながら料理を続けていた。しばらくすると、アルムはジャオウにこう聞いた。


「ねぇ、焔のルビーがある洞窟まで、あとどのくらいかかるの?」


「徒歩で行っても、明日までには到着するだろう。近くにドワーフの家があると聞いたが、彼らに知られないように行動しないと」


「あの人たちがいなければいいんだけど」


 アルムの子の言葉を聞き、ジャオウはベーキウたちのことを思い出した。


「いる可能性が高いな。いずれにせよ、また会ったら戦うだけだ」


 そう言いながら、ジャオウはお玉を動かしていた。




 翌日、ジャオウたちは宝石の洞窟の前にいた。ジャオウは地図を見て、アルムとレリルにこう言った。


「どうやら、ここが焔のルビーがある洞窟のようだ」


「ここにあるんだね」


 アルムは洞窟の入り口に近付き、洞窟の中から発する風を受け、何かを感じた。


「とんでもないモンスターがいるかもしれないね。うなり声が聞こえる」


「うっげェェェェェ。こんな危険な洞窟に入るの? マジかんべーん」


 レリルは嫌そうにこう言ったが、アルムはため息を吐いた。


「それじゃあレリルさんとはここでお別れだね」


「ようやくニンニク臭い女から解放されるのか。少しホッとした」


 と言って、ジャオウとアルムは宝石の洞窟へ入って行った。レリルはあくびをして、ジャオウとアルムの帰りを待とうとしたのだが、ここにベーキウたちがいるかもしれないことを思い出した。


 やばい。今ここであのちんちくりんの勇者たちと遭遇したら、私……殺される!


 下手をしたらシアンたちと遭遇することを考え、レリルは急いでジャオウとアルムの後を追いかけて走り出した。




 ジャオウとアルムは嫌そうな顔をしていた。ようやくレリルから解放されたと思ったのだが、すぐにレリルが追いかけてきたからだ。


「レリルさん、何かが起きても、自分の身は自分で守ってください」


「お前を助ける余裕が、いつでもあると思うなよ」


「はーい。了承してまーす」


 レリルはそう答えながら歩いていた。しばらく歩いていると、ジャオウたちの前に光が見えた。


「光? 誰かがいるのかな?」


「魔力は感じないわよ。モンスターの気配も感じないし」


「多分、壁や天井に埋まっている宝石だろう。この洞窟、少しくらいから宝石の光が目立つんだ」


 壁や天井に宝石がある。その言葉を聞いたレリルは歓喜の声を上げ、壁を掘り始めた。


「宝石宝石! たくさんあれば私が美しく輝く! ヒャッハァァァァァァァァァァ! 宝石のバーゲンセールやァァァァァァァァァァ!」


 獣のような声を発しながら、素手で壁を掘るレリルを見たアルムは、ジャオウにこう言った。


「女の人って、どうして宝石とかに弱いのかな?」


「分からん。ただ、目立ちたいだけかもしれん」


 奇行を始めるレリルを止めた後、ジャオウとアルムは奥へ歩き続けた。


 しばらく歩くと、ジャオウは足を止めた。


「あえ? どうして止まるの?」


 レリルがこう言った後、ジャオウは背中の大剣を手にした。アルムもナイフを持ち、周囲を見回していた。


「あー、モンスターがいるのね」


 モンスターがいることを察したレリルは、あくびをしながら後ろに下がろうとした。だがその時、アルムがレリルの方を向いて叫んだ。


「動かないでください!」


「え?」


 アルムの叫び声を聞いたレリルは、驚いた表情をしてその場に立ち止まった。その瞬間、後ろから巨大なヒャクアーシが現れた。


「あっげェェェェェ! 気持ち悪い!」


「油断するな! 今、あいつを倒すから逃げろ!」


 ジャオウは大剣を構え、ヒャクアーシに向かって振り下ろした。強烈な一撃を受けたヒャクアーシは、体を回しながらその場に倒れた。その直後、無数のヒャクアーシが地面や壁、天井から現れた。


「噓……か……囲まれた? あんな気持ち悪い奴に?」


 腰を抜かしたレリルは、ジャオウにこう聞いた。ジャオウはため息を吐き、言葉を返した。


「ああ。こいつら、奇襲をするのに慣れている。しくじった、気付くことができなかった。それに、ヒャクアーシは群れで動く。大量にいても、おかしくない」


 ジャオウは悔しそうにこう呟き、襲ってくるヒャクアーシに攻撃を仕掛けた。アルムは魔力を開放し、ナイフを振るってヒャクアーシに攻撃を仕掛けた。レリルは仕方ないと思いつつ、魔力を開放した。


「私が力を貸すわ! だから、ちゃちゃっとあんなムカデ野郎ぶっ飛ばして!」


「俺たちを強化してくれるのか。頼む!」


 ジャオウの言葉を聞き、レリルは自身の魔力を発してジャオウとアルムの強化を行った。


「おお……力がみなぎる……」


「レリルさん、見直しました!」


 ジャオウとアルムは礼を言った後、ヒャクアーシに攻撃を仕掛けた。レリルは後ろから、戦うジャオウとアルムの応援を始めた。それからしばらくして、ヒャクアーシとの戦いを終えた。


「ふぅ……やっと終わった」


 ジャオウは大剣を背中にしまい、周囲を見回した。洞窟は広く、深い、そう考えたジャオウは、大変な探検になると思った。




 一方その頃、ベーキウたちはカンベイたちの家に帰ってきた。


「ただいま戻りましたー」


「おお。戻ってきたか」


 クーゾはベーキウたちの方を振り返りつつ、こう言った。ベーキウたちは手洗いうがいをした後、城下町での出来事を話した。


「スノウ王女と遭遇したのか」


「はい。王女……俺のことを気に入ったみたいで大変でしたよ……」


 疲れたような表情で、ベーキウはこう言った。その言葉を聞いたシアンたちは、怒りの形相となった。


「あのクソガキ。たとえ王女だろうが何だろうが分からんけど、ベーキウを寝取ろうと考えるなんざ千年早いのよ」


 シアンの怒りのつぶやきを聞いたカンベイたちは、冷や汗をかきながらシアンを冷静にさせた。


「こりゃ、俺は城下町に行くのは止めた方がいいかも」


 ベーキウの言葉を聞いたクチヨは、少し考えてこう言った。


「いや、そこまでしなくてもいいと思う。スノウ王女は、ベーキウを探して頻繁に城下町にくるかもしれないぞ」


「だとしたら、王女の行動を止めるために、何回か城下町に行って運よく遭遇して、説得したほうがいいってわけか」


 ベーキウはそう言いながら、スノウのことを思い出した。


 焔のルビーを取りにきただけなのに、大変なことになっちゃったなぁ。


 と、ベーキウは心の中でこう思い、深いため息を吐いた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ