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夢見る少女よ、王子様がピンチの時に毎回助けにくると思うなよ


 ヘルグリームの城にて、スノウの姿が見えないことを察したヒルヴィルが、甲高い悲鳴を上げながら周りの兵士に命令をしていた。


「あの子、多分変装して城下町に行ったわ! 町にはロリコン野郎もいるかもしれないのに! 今すぐあの子を見つけて、連れ戻して! 私も用意ができたら探しに行きます!」


「了解しました!」


 兵士たちは敬礼をした後、大急ぎで城下町に向かって走り出した。ヒルヴィルは部屋に戻り、愛用の空飛ぶ箒を取り出し、窓に近付いた。その様子に気付いた鏡は、ヒルヴィルに声をかけた。


「どうかしたんですか?」


「緊急事態よ! スノウが城下町に出て行ってしまったわ!」


「そりゃ大変だ! 今すぐ鏡ネットワークを使って、調べてみます!」


「兵士たちが探しているわ! 私も今から、空を飛んであの子を探すから!」


「分かりました。それじゃ、スノウ様を見つけたらヒルヴィル様の携帯に連絡しますので!」


「お願い! それじゃ、私は行くわ!」


 話を終え、ヒルヴィルは箒にまたがり、急いで空を飛んだ。




 その頃、スノウは厄介なおっさんに絡まれていたところ、ベーキウに助けられていた。おっさんは腕を振るってベーキウの手から逃れ、ベーキウを睨んだ。


「何だお前は!」


「通りすがりの旅の者だ。お前みたいな常識のないおっさんに、これ以上俺の身元を言いたくない」


 と、ベーキウはため息を吐きながらこう言った。その様子を見たおっさんは、苛立ちながら殴る構えをした。


「ふざけたキザ野郎だ! 俺の一番嫌いな奴だ! 一発……いや、千発殴らせろ!」


「あんたじゃ俺を殴ることはできないよ」


 ベーキウはそう言うと、再びため息を吐いた。おっさんは叫び声を上げながらベーキウに接近し、大きく腕を振るった。ベーキウはその動きを見切り、後ろに下がって攻撃をかわした。


「ありゃ?」


 攻撃をかわされたことを察したおっさんは、驚いた声を上げながら、前に転倒した。その際、目の前にあった木箱に激突し、破損させて中に入っていた物を地面に散らばしてしまった。


「クソが! 今度は本気だ!」


 と言って、おっさんは二度目の攻撃を仕掛けたが、ベーキウはおっさんの右足のすねをけり、大きく転倒させた。


「グバァッ!」


「小さい子供相手に威張るんじゃねーぞ、おっさん」


 倒れているおっさんに対し、ベーキウはこう言った。おっさんは立ち上がり、ベーキウの横にいるスノウを見て、にやりと笑った。


「お前じゃ相手にならないから、そのガキを狙ってやるぜ!」


 その言葉を聞いたスノウは、自身が狙われていると知り、恐怖のあまりベーキウに抱き着いた。だが、ベーキウは動じることなくこう言った。


「バカだな。次の動きを、相手に教えるなんて」


「何!」


 おっさんが驚いた直後、ベーキウとスノウの前に闇で作られた盾が地面から生えるように現れた。宙に浮いていたキトリが、魔力を使って盾を作ったのだ。


「あなたじゃあ私たちを倒すのは絶対に不可能。大人しくしなさい」


 キトリは地面に降り、おっさんにこう言った。そんな中、騒動を察したシアンとクーアが現れ、おっさんに向かって飛び蹴りを放った。


「このクソ野郎! 私のベーキウに手を出してんじゃないわよ!」


「貴様のような下劣で汚い豚野郎は、全身の穴に風で作った鋭い針を突き刺してやるわ!」


 と言って、シアンとクーアはおっさんに追い打ちを始めた。おっさんの悲鳴が響く中、スノウはベーキウの顔を見上げていた。視線に気付いたベーキウは、しゃがんでスノウの目線と自分の目線を合した。


「大丈夫か? これで変なおっさんは君に悪さしないから」


「はい……」


 スノウはベーキウの顔に見とれていて、少しぼーっとしていた。そんな中、キトリがスノウの肩を叩いたことで、スノウは我に戻った。


「ねぇ、大丈夫? 迷子なの?」


「え……いやその……」


 スノウが戸惑う中、上からヒルヴィルの声が聞こえた。スノウの姿を見つけたヒルヴィルは、大急ぎでスノウの元へ向かった。


「スノウ! よかった、無事だったんだねぇ」


「お義母さん」


 親であるヒルヴィルが登場したことにより、ベーキウたちは騒動が終わったと思った。だが、周りにいた人たちのざわつきを聞き、まだ何かあると気付いた。


「マジかよ。ヒルヴィル様だ」


「じゃああの子はスノウ王女?」


「変装して城下町にきてたのか。あのおっさん、とんでもない人に絡んだなー」


 人々の話声を聞き、ベーキウは自分がどえらい人を助けたことを察した。動揺して立ち尽くすベーキウを見て、ヒルヴィルは近付いて頭を下げた。


「ありがとうございます。娘を助けていただいて……」


「い……いえ、人として、剣士として当然のことを行っただけですよ」


 動揺しながらも、ベーキウはこう答えた。そんな中、ヒルヴィルはおっさんに攻撃を仕掛けるシアンを見て驚いた。


「まぁ、あなたはシアン・ダンゴ。では、あなた方は……」


「とりあえず、込み入った話は時間があるときにしましょう。今、私たちは別ですることがありますので」


 と、シアンはおっさんに攻撃を止めて、申し訳なさそうにこう言った。ヒルヴィルはそうですかと返事をした後、ベーキウの顔を見ているスノウの方を見て、口を開いた。


「ではスノウ、お城に戻るわよ。皆、心配しているわ」


 そう言ったのだが、スノウはベーキウの方を見て、何も言わなかった。その様子を見たヒルヴィルは、あることを察した。


「ごめんね。スノウったら、そこの剣士さんに惚れたみたい」


 ヒルヴィルがこう言うと、スノウは悲鳴を上げ、慌てながら叫んだ。


「ちょっと待ってお義母さん! 私はその、あの、えーっと、ただ、ただ単純にかっこよくてイケメンで……えーっとえーっと、とにかくイケメンだなーって思っていただけなの!」


「本当のことを言ってごらん? あの鏡は心の中を見通す力があるって自分で言ってたわよ」


「このお兄さんと結婚したいです」


 スノウの言葉を聞き、シアンとクーアの表情が変わった。


「ヒルヴィル様! 今はとりあえず王女様をとっととお城に戻しましょう!」


「ベーキウのことはわらわに任せてください! それと、王女様には恋をするには二十年早いと伝えてください!」


 慌てながらシアンとクーアがこう言った。それを見ながら、キトリは呆れてため息を吐いた。


 恋のライバルが出てこようが、ベーキウは必ず私が旦那さんにする。


 と、キトリは心の中でこう思った。状況が混沌となってきたため、ベーキウは慌てながらこう言った。


「とりあえず、お城の皆が心配しているんだ。無事な姿を見せてやってほしいなー」


 自分がこう言えば、スノウは納得して戻るだろうとベーキウは考えていた。だが、そんな安い考えは通らなかった。


「では、ベーキウ様もお城に向かいましょう! 私の将来のフィアンセと伝えれば、場内を自由に歩けます!」


 その言葉を聞いたシアンとクーアの怒りと焦りは、もっと加速した。スノウの肩を掴み、無理矢理ヒルヴィルの箒に近付けたのだ。


「とにかく戻りましょうよ王女様! 私たちはいろいろと用があるので、早く戻らないといけないので!」


「それに、ベーキウとのフラグはわらわが先に建てているので、後から惚れるのはなしってことで! と言うわけで、さっさと戻りましょうよ!」


 その言葉を聞いたスノウは苛立ち、無理矢理シアンとクーアの手を払い、ベーキウに抱き着いた。


「嫌です! ベーキウ様と一緒じゃないと嫌です!」


 何が何でもベーキウと離れたくないと言ったスノウに対し、クーアの怒りが爆発した。


「このクソガキがァァァァァァァァァァ! ベーキウはわらわの彼氏だって何度も言ったじゃろうがァァァァァァァァァァ! 人の話を聞け! そしてとっととベーキウのことを諦めろ負けヒロイン!」


「子供相手に……王女相手に言うセリフじゃないわよ」


 キトリは魔力を開放し、巨大な闇の拳でクーアを叩いた。騒がしくなる状況の中、ベーキウはこれからどうなるんだと思い、深いため息を吐いた。


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