城下町ではいろんなイベントが待ち受けている
レリルの予想外の手段で、何とか逃げることに成功したジャオウたちだったが、アルムは何度もため息を吐いていた。
「公然の面々で、あれを出されてしまった……」
気を落とすアルムに対し、レリルは笑いながら肩を叩いた。
「まー助かったんだし気にしないの! あんたの大きなあれが役に立つなんて思わなかったわ! 一部の女性と野郎が見とれてたけど」
「そんな言葉が慰めになるわけがないだろうが」
そう言いながら、ジャオウは胃薬を一気飲みしていた。
「はぁ……はぁ……とりあえず、とっとと焔のルビーを取りに行こう」
ジャオウの言葉の後、ジャオウたちは再び歩き始めた。アルムが元気を取り戻すのは、しばらくかかった。
カンベイの家にて、シアンとクーアは尻を丸出しにしながらベッドの上で横になっていた。
「い……痛い……座薬はもうこりごり」
「わらわのかわゆいお尻が痛い目に……もう、お嫁にいけない」
泣き言をわめくシアンとクーアに対し、キトリは魔力を抑えながらこう言った。
「そうでもしないと完全に毒が消えないわよ。そのままだと、二人は死んでたわ」
「確かにそうだけど、他に方法はなかったの?」
「すぐに治療をしたかったから、仕方ないじゃない。いろいろとお世話になったんだから、ありがたく思わないと」
キトリはそう言いながら、シアンとクーアを見た。そんな中、扉のノックオンが聞こえた。
「キトリ……そっちは終わったか?」
ベーキウの声が聞こえたので、キトリはすぐに返事をした。
「うん。闇の魔力で無理矢理ね。ベーキウは?」
「何とか自分でやった。まだ痛い……」
「終わったのね」
「ああ。そうだ、明日は近くの城下町に行くってさ。カンベイさんが一緒に行くかって誘われたけど」
この言葉を聞き、キトリは応えようとしたのだが、その前にシアンが答えた。
「そうね。洞窟探検のための道具を買いたいわ。今のままじゃあ、またあのムカデにやられるわ」
この言葉を聞いたキトリは、そうだねとつぶやいた。というわけで、明日の予定が決まった。
ベーキウたちがお世話になっているカンベイたちの家から離れた所に、ヘルグリームの城下町がある。ヘルグリームはユイーマと比べて、かなり治安もよい国である。その国には、一人の美少女の王女がいました。
「はぁ、私も小説みたいな恋がしたいなー」
王女、スノウは読んでいた子供向けの恋愛児童小説を見ながらこう呟いた。時計を見ると、おやつの時間が近いため、スノウは急いで用意を始めた。
スノウの義母、ヒルヴィルは自室に閉じこもり、鏡に向かってこう言った。
「鏡よ鏡、鏡さん。この国で美しいのは一体誰だい?」
ヒルヴィルがこう言うと、鏡の中から顔が現れ、ヒルヴィルの質問に答えた。
「それはもちろん、この国の王女であるスノウ様です」
鏡がこう言うと、ヒルヴィルはため息を吐いた。
「そりゃーまぁそうよねー。血のつながりはないとはいえ、あの子が一番かわいいからねぇ」
ヒルヴィルがこう言うと、鏡は笑いながら言葉を返した。
「確かにそうっすね。将来、どえらい美人になりますよ。旦那になりたい野郎たちがたくさん集まりそうっすね」
「あの子の旦那は私が決めるよ。見た目や発情するしないで女を選ぶようなダメ男は絶対に許さないわよ」
「世の中には常に発情している男がいますからねぇ。そんなバカな男に引っかからないでほしいんですが」
鏡がこう言うと、扉が開いてアップルパイを持ったスノウが入ってきた。
「お母さま。おやつを持ってきましたよー」
「あらまぁありがとう。いただくわ」
「こちらは鏡さんの分です」
「いつもありがとうございます、王女さん」
その後、スノウはヒルヴィルと鏡と一緒におやつを食べた。そんな中、スノウはヒルヴィルにこう言った。
「私、恋愛小説みたいな恋がしたいです」
「恋愛小説? 今、どんな内容の話を呼んでいるんだい?」
ヒルヴィルがこう聞くと、スノウは本の中身を思い出しながらこう答えた。
「えーっと、ヒロインであるお姫様は町から抜け出すんだけど、そこに超イケメンで超優しい長身の騎士と出会い、騎士の幼なじみの妨害や、年齢の差や身分の違いなどの波乱万丈な展開があるものの、無事に結ばれる素晴らしい物語です」
話を聞いていた鏡は、アップルパイを食べながらこう言った。
「すごい話ですね。それ、本当に児童向けの小説ですか?」
「はい。まぁ、ちょっとエッチなシーンがたくさんありましたけど」
「それどこの出版社だい? 子供が読む小説にそんなシーン入れるなって苦情入れてくるよ」
と言って、携帯電話を取り出したヒルヴィルに対し、鏡がこう言った。
「ヒルヴィルさん落ち着いて。大人がほっておいても、子供はいろいろと知ることになるんですから」
「かと言っても、まだ十二歳の子供に大人なシーンはまだ早いよ!」
鏡に向かって大声を出したヒルヴィルは、急いで携帯電話を持って去って行った。あわただしい空気の中、鏡はスノウにこう言った。
「愛されてますねぇ」
翌日、ベーキウたちはヘルグリームの城下町にいた。
「うわ……俺、こんなに大きな町にくるのは初めてだ」
ベーキウは目を輝かせながらこう言った。その横では、クーアがあくびをしながらこう言った。
「あー、歩き疲れた。最初にどこかの喫茶店で休もう」
「何言ってんのよ。今から買い物なのよ! 早くお店に行くわよ、おばさん!」
シアンはそう言って、無理矢理クーアの手を引っ張って近くの店に向かった。その様子を見たカンベイは、笑いながらこう言った。
「シアンさん、テンションが高いですね」
「この旅で初めて大きな町に到着したからな、それなりにテンションが高くなってるんだろう」
ベーキウがそう言うと、キトリがベーキウの服の裾を引っ張った。
「私たちも近くの道具屋に行きましょう」
「そうだな。カンベイさん、これからどうします?」
ベーキウの質問を聞いたカンベイは、少し考えてこう答えた。
「僕は馴染みの店に行きます。昼前に城下町の出入り口で集合ってことでいいですか?」
「そうですね。シアンとクーアには、俺が携帯で伝えておきます」
「了解。それじゃ、また」
と言って、カンベイは馴染みの店に向かった。ベーキウとキトリは、周囲を見回しながら歩き始めた。
「いろんなお店があるわね」
「ああ。何があるのか少しワクワクするな」
ベーキウがそう言いながら歩いていると、ベーキウを呼び止める声が聞こえた。
「ねぇお兄さん。私のお店にいらっしゃいよ」
店員の女性は誘惑するような声と目つきで、ベーキウに近付いたが、むっとした表情のキトリが女性を睨んだ。
「あら、妹さんがいたのね。お兄さんを大事にするのよー」
この言葉を聞き、キトリはショックを受けた。
「妹……彼女扱いされてない……」
「年齢差があるせいかな……」
ショックを受けるキトリを見て、ベーキウはこう言った。
そんな中、城では変装したスノウが場内を歩いていた。
私も城下町に出て、私好みの超イケメンと出会って、素敵な恋をしてみますわ!
そう思いながら、スノウは誰にもばれないように城から出た。それからすぐ、スノウは人混みの中に入った。
あの本もそうだった。人混みの中を歩いていたら、騎士と出会ったんだ! 私も同じことをすればきっと!
本の内容を思い出しながら、スノウは歩いていた。すると、何かにぶつかってスノウは転倒した。イケメンとぶつかったかなと思って顔を上げたが。そこにいたのは太くてあまりカッコよくない男だった。
「んあぁ? 何だぁ? 誰が俺様にぶつかったんだぁ?」
男は不服そうにこう言いながら、スノウの方を見た。
「お前か? 痛いだろうが、金払えよ!」
男の言葉を聞き、スノウは恐怖のせいで涙が流れた。何も言わないスノウを見て、男は苛立った。
「何も言わないのかよ。詫びの言葉とかあるだろうが! このクソガキが!」
苛立った男は、スノウを殴ろうと構えた。だが、何者かが男の腕を止めた。
「あんた、子供相手にむきになるなよ」
男の腕を止めたのはベーキウだった。その時のベーキウの顔を見たスノウは、あまりのカッコよさに見とれてしまった。
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