ムカデは前進できるけど後退できないって聞いたけどほんとなの?
ベーキウとキトリは何かが近づいていると察し、すぐに戦えるように身構えていた。口喧嘩をしていたシアンとクーアも何かの存在に気付き、構えた。
「話で聞いていた危険なモンスターがこっちにくるみたいね」
「何がきても、わらわの魔力なら一発で消し去ってやるわ」
「大きなこうもりと戦った時に、どさくさに紛れてベーキウと一緒になって、色仕掛けしないでね」
「その手は使えん。同じ手を使ったらすぐにばれるからの」
「バカなことを話している場合じゃないわよ! 襲ってくるわ!」
キトリの声の後、ベーキウたちの足元から巨大なムカデが現れた。
「うっげェェェェェ! 気持ち悪い! あんなでかいムカデ、初めて見たぞ!」
クーアは嫌そうな顔をし、巨大なムカデを見た。シアンは魔力を開放し、巨大なムカデに攻撃を仕掛けながらこう言った。
「こいつは巨大なムカデのモンスター、ヒャクアーシ! ムカデのように強力な毒を持っているわ! 刺されたら、どうなるか分からないから気をつけて!」
シアンの声を聞き、ベーキウは返事をしてクレイモアを振るった。ベーキウが振るったクレイモアの刃はヒャクアーシの足に命中したが、それでもヒャクアーシの動きは鈍らなかった。
「グッ! まだ動くのかよ!」
「あいつの足は百本あるの。一つ斬っても、それだけじゃあ動きを鈍らせることはできないわ!」
キトリは闇の剣を作り、ヒャクアーシに攻撃を仕掛けながらこう言った。攻撃を受け続けたヒャクアーシは、鳴き声を上げながら高く飛び上がり、天井に張り付いた。
「上から攻撃するつもりね。上等! 私の光でハチの巣にしてやるわ!」
シアンは周囲に光の矢を作り、天井に張り付いているヒャクアーシに向かって放った。ヒャクアーシは天井を這うように動き、飛んでくる光の矢をかわした。
「うっそ! あのムカデ、私の攻撃をかわしてる!」
「そんな攻撃じゃあ避けられるに決まっておる! 攻撃するなら、相手が避けられないように派手にやるのじゃ!」
と言って、クーアは無数の風の刃を放ち、攻撃を仕掛けようとしたが、キトリがクーアを止めた。
「止めて。クーアの攻撃が天井に命中したら、落盤するわ!」
「あ、そうか」
「とりあえず、一度引くぞ! あいつが地面に落ちたら、攻撃を再開しよう!」
その後、ベーキウたちは奥の通路へ向かって走り出した。走る中、ベーキウは後ろを振り向いたが、ヒャクアーシが追いかけてくる様子はなかった。
「あいつ、追いかけてこないな」
「私たちが逃げたから、やる気を失ったんじゃない?」
シアンがこう言うと、下から何かを削るような音が響いた。
「皆、避けて!」
キトリの叫び声の直後、再び下からヒャクアーシが現れた。
「同じ手が二度通じると思っているのか、あのムカデは。わらわも同じ手でベーキウと二人っきりになるのは止めようと思っているのに!」
クーアはそう言いながら、火の矢を作ってヒャクアーシに向かって放った。火の矢はヒャクアーシに命中し、火が体に付着した。
「よっしゃ! 命中!」
「モンスターと言っても、所詮は虫。火が付着すれば、その火は全身に広がるわね」
この一撃で終わっただろうと、シアンとクーアは思った。全身に火が広がったヒャクアーシは、奇声を上げながら地面に潜った。
「あら、逃げちゃった」
「どうする? 奴が空けた穴に水を流すか?」
クーアは魔力を開放し、水を発しながらこう言った。シアンは少し考えた後、こう言った。
「そうね。やり方は残酷だけど、あのおっかないモンスターを倒すなら、それしか方法はないわ」
「俺もシアンの案に賛成だ。下手したら、あいつの毒で俺たちが死ぬかもしれないからな」
ベーキウの言葉の後、クーアはヒャクアーシが作った穴の中に水を流した。それから数分後、何も動きはなかった。
「水はちゃんと流れたの?」
「流れているはずじゃ。だがま、奴も窒息死しているかもしれんからな」
クーアは穴からあふれる水を見て、シアンにこう答えた。その直後、ベーキウは後ろの壁から何かが聞こえることを察した。
「壁からくる!」
「え? マジで!」
シアンが驚いた声を上げた直後、ヒャクアーシが壁を壊しながら現れた。クーアが発した水も流れたため、地面から壁へ移動したとベーキウは推理した。
「グッ! やるしかない!」
ベーキウはクレイモアを手にし、ヒャクアーシの牙に向かってクレイモアを振り下ろした。だが、ヒャクアーシは素早い動きでベーキウの足元に移動し、攻撃をかわしつつ、ベーキウの腰を嚙んだ。
「グァァァァァ!」
「ベーキウ!」
攻撃を受けたベーキウは、悲鳴を上げてその場に倒れた。苛立ったシアンとクーアはヒャクアーシに向かって飛びかかったが、ヒャクアーシは長い体を利用してシアンとクーアの体に絡みつき、動きを封じた。
「しまった!」
キトリはシアンとクーアを助けようとしたのだが、その前にヒャクアーシはシアンとクーアの体を噛んでしまった。
「よくも……」
次々とベーキウたちが倒されたため、怒りをあらわにしたキトリは魔力を開放し、巨大な闇の刃を作った。ヒャクアーシはキトリに近付き、噛もうとした。
「よくも皆を! 絶対に許せない!」
キトリは叫びながら、闇の刃をヒャクアーシに向かって放った。ヒャクアーシは闇の刃をかわそうとし、体をUターンさせて後ろに下がろうとした。だが、その前に闇の刃はヒャクアーシの体を斬った。その後、キトリは魔力を開放し、巨大な闇を使ってヒャクアーシの体を飲み込み、そのまま消滅させた。
ヒャクアーシとの戦いが終わった後、キトリは急いで倒れたベーキウたちの元へ向かった。
「待ってて、今すぐ治療するから!」
キトリは慌てながらこう言ったが、ベーキウは返事を返さなかった。ベーキウは苦しそうに呼吸をしているだけだった。
「ちょっとごめん、噛まれた場所を見るからね」
と言って、キトリはベーキウの服を脱がし、噛まれた場所を見た。ベーキウの腰の部分には、ヒャクアーシの歯形があり、深く嚙みつかれたせいで、歯形から血が流れていた。そして、歯形の周囲の皮膚は紫色に変色していた。
「毒が体に回っている……」
このままだとベーキウたちの命が危険だと察したキトリは、倒れているシアンとクーアをベーキウの横に移動させ、三人の治療を始めた。だが、ヒャクアーシの毒はキトリの予想よりも強かった。
まずい……このままだと三人が助からない!
自分の実力不足で、仲間たちが命を失ってしまう。そう思ったキトリは、全身の魔力を使って治療を続けた。だが、キトリの思いに反するように、ヒャクアーシの毒はベーキウたちの体を蝕んでいた。
「キ……キトリ……」
と、シアンが苦しそうな声を上げた。キトリは驚いたが、すぐに治療を続けた。
「無茶……しないで……このままだと……あいつの仲間にやられるわよ」
シアンの言葉を聞いたキトリは、急いで後ろを見た。そこには、いつの間にか現れたヒャクアーシの群れがいた。
「嘘……いつの間に……」
治療している隙に、ヒャクアーシの群れが現れたとキトリは考えた。だが、何かが飛ぶ音が聞こえ、それがヒャクアーシの体に命中した。
「そこのお嬢さん! そこでじっとしててください!」
と、男の声が聞こえた。その直後、大きな斧を持ったドワーフが現れ、持っていた斧でヒャクアーシに攻撃を仕掛けた。キトリが呆然とする中、刀を持ったドワーフがキトリの横に近付いた。
「ここはカンベイに任せるでござる。拙者たちは、このお三方の治療を急ごう」
刀を持ったドワーフは魔力を開放しながら、ベーキウたちの治療を行った。最初、キトリは茫然としていたが、突如現れたドワーフは敵ではないと察し、治療を続けた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




