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焔のルビーを求めて


 ベーキウが生まれ育った大陸から焔のルビーがあると言われる大陸まで、船で二日かかった。ベーキウは船から降りると、すぐに大きく背伸びをした。


「二日間、ずっと揺れてたな……」


 慣れない船の上の生活は、ベーキウに負担がかかっていた。背伸びをした瞬間、骨の鳴る音が響いた。キトリはベーキウの横に立ち、ため息を吐いていた。


「ようやく潮風から解放される時がきた……」


「そうだな。キトリの髪のセット大変そうだったしな」


 船を使っての移動中、ベーキウは髪をセットするために悪戦苦闘するキトリの姿を思い出しながらこう言った。そんな中、シアンが苦しそうな声を上げた。


「おーい! このおばさんをどうにかしてー!」


 シアンはそう言いながら、顔面を青く染めたクーアを引きずっていた。


「シアン……もうちょっと優しく……胃の中のもの、リバースしそう……」


「あー! ちょっと待ってよ! ここでリバースしないでよ! 迷惑になるから!」


 船酔いをしたクーアを見て、ベーキウとキトリは慌ててクーアの治療を始めた。その後、ベーキウたちは港町の宿へ向かい、部屋を借りた。


「ふぃ……気分がよくなった……」


 ベッドの上で横になっているクーアは、安堵の息を吐いてこう呟いた。シアンはベーキウとキトリの方を見て、口を開いた。


「さて、少し休んだら情報を探しに行くわよ。焔のルビーのことを知ってる人がいるかもしれないわ」


「ああ。魔力を感じたところ、ジャオウたちはまだいないし、探すなら今のうちだな」


「すぐに見つかればいいけど」


「キトリの言う通りね。それじゃあ早速、手分けして探すわよ!」


 シアンの声の後、ベーキウとキトリは返事をした。




 船酔いしてダウンしたクーア以外は、焔のルビーに関する情報を集めた。その数時間後、部屋に戻ったシアンたちは集めた情報を伝え始めた。


「まず私が知った情報だと、この町から出て南にある宝石の洞窟って名前の洞窟に焔のルビーがあるらしいわ」


 シアンがこう言うと、キトリははっとした表情でこう言った。


「私も同じ情報を手にしたわ。だとしたら、その洞窟にある確率が高いわね」


「その通りね。で、ベーキウは何か情報を……」


 シアンはベーキウの格好を見て、冷や汗をかいた。ベーキウの服は乱れていて、髪もくちゃくちゃだった。


「しつこいナンパをする女がいたのね」


「ああ……どさくさに紛れて男もいたよ……」


 ベーキウは情報を集めようとしたのだが、ベーキウの顔を見て惚れてしまった女や男がベーキウに集まり、情報を集めるどころではなかったのだ。そのことを知ったキトリはため息を吐き、こう言った。


「私が付いていればこんなことには……」


「そこは私でしょ?」


 シアンはキトリを睨みながらこう言った。




 翌日、ベーキウたちは焔のルビーがあると言われる宝石の洞窟へ向かった。出かける前、宝石の洞窟について情報を得たのだが、そこの洞窟は恐ろしいモンスターがたくさん生息しているため、強い戦士ではないと入れない洞窟と聞いた。


「恐ろしいモンスターのう。ま、どんなモンスターが襲ってきても、わらわの魔力で倒してやるわ」


「船酔いした人が言えるセリフ?」


 大きな声で笑うクーアに対し、キトリは呆れてこう言った。そんな中、ベーキウは前にある洞窟を見て声を上げた。


「まさか、あれが宝石の洞窟か?」


 ベーキウの言葉を聞いたシアンは周囲を調べ、近くの看板を見つけた。


「えーと……そうね。ベーキウの予想通り、ここが宝石の洞窟ね」


「ここか」


 クーアは宝石の洞窟の入り口に立ち、中を見ようとした。入り口の両端にはカンテラがぶら下がっているため、それなりに周囲を照らしてくれた。奥を見ると、適度な距離を開け、カンテラが壁にぶら下がっていた。


「一応灯りはあるようじゃな。ま、これなら魔力で灯りを灯さなくても大丈夫じゃろう」


 と言って、クーアは宝石の洞窟の中に入った。その後を追うように、ベーキウたちも宝石の洞窟へ入った。


「うわ……結構明るいな」


 周囲を見ながら、ベーキウはこう言った。カンテラもあるのだが、それ以上に壁に埋もれている宝石の輝きが、周囲を照らしていたのだ。


「一つくらい取っても罰は当たらないよね」


「止めとけ。宝石を取り出したら壁が崩れるかもしれんぞ」


 宝石を見ながら目を輝かすシアンを見て、クーアが呆れてこう言った。そんな中、キトリが何かを察して魔力を開放した。


「何かいる」


「早速お出ましか」


 ベーキウはクレイモアを手にし、周囲を見回した。すると、大きなこうもりがベーキウに向かって飛んできた。


「狙いは俺か!」


 ベーキウはクレイモアを構え、飛んでくる大きなこうもりに向かってクレイモアを振るった。大きなこうもりは攻撃をかわし、鋭い牙を出してベーキウに襲い掛かった。


「たかがこうもりが、ベーキウに攻撃を仕掛けるな!」


 魔力を開放したクーアが、大きなこうもりに向かって巨大な火の弾を発した。巨大な火の弾は大きなこうもりに命中したが、それと同時に大きな爆発を起こした。周囲の壁は崩れ、天井は落ちた。


「ああもう、何やってるのよおばさん!」


 呆れたシアンはそう言いながら、砂煙を払った。だが、そこには崩れた壁があるだけで、ベーキウとクーアの姿はなかった。


「嘘。離れ離れになっちゃった?」


「こんな洞窟の中で? 面倒なことになったわね……」


 シアンとキトリは崩れた壁を触りながら、呆れてため息を吐いた。




 ベーキウは崩れた壁を見て、大きなため息を吐いた。


「大変なことになったな……」


「すまん。魔力の扱いを失敗した」


 クーアは申し訳なさそうにこう言うと、崩れた壁を触ってうなり声をあげた。


「ここをぶっ飛ばしてすぐに合流……は、無理そうじゃの」


「そうだな。とにかく二人とすぐに合流するように祈りながら歩こう」


 その後、ベーキウとクーアはシアンとキトリと合流するため、歩き始めた。そんな中、クーアは女の子らしい悲鳴を上げた。その声を聞いたベーキウはすぐにクーアの方を振り返った。


「どうした?」


「いったーい。くじいちゃったー」


 そう言いながら、クーアはわざと転倒し、わざと服を乱れさせた。クーアの少しエッチな姿を見たベーキウは目を開けて驚いていた。


 そう。これは全てクーアの計画通りだったのだ! わざと洞窟の壁を崩してシアンとキトリ、自分とベーキウ分断させ、その隙にベーキウとの仲を一気に深めようと考えたのだ!


 ぐひひひひひ。わらわの乱れたエッチな姿を見たら、ベーキウもムラムラするじゃろうなぁ。そしたらにゃんにゃんしてぐひひひひひ。


 と、クーアはバカなことを考えていた。ベーキウは顔を抑えながら、クーアにこう言った。


「おい、肌が見えているぞ。恥ずかしいから……どうにかしてくれ……」


 ベーキウの言葉を聞いたクーアは、頬を膨らませながらベーキウに近付き、胸を押し付けた。


「いやーん。そんなこと言っちゃダメー。だったらー、ベーキウが服を元に戻して」


 と、クーアはかわいらしくこう言った。それでもベーキウは顔を手で押さえ、クーアの姿を見ないようにしていた。


 どこまでも紳士な男じゃのう。だが、そこがいい!


 紳士的に対応するベーキウを見て、クーアはもっと色仕掛けをしようと考え、わざと下着が見えるように服を乱した。


「あーん。不思議な力でもっとエッチになっちゃったー。どうにかしてー」


「分かったわ。どうにかしてやるから歯を食いしばりなさいクソババア!」


 そう言いながら、シアンはありったけの魔力をクーアにぶつけた。クーアは情けない悲鳴を上げながら、天井にめり込んだ。しばらくして、地面に落ちたクーアは、起き上がってすぐにシアンに近付いた。


「このクソガキがァァァァァァァァァァ! せっかくいい雰囲気だったのに邪魔をしおって!」


「ババアの色仕掛けなんて誰が喜ぶのよ! そんなもんで喜ぶのは一部の異常性癖者だけよ!」


「なーにを言っとるか! わらわの色仕掛けなら、ベーキウもイチコロじゃ!」


「確かにイチコロよ。気持ち悪くて倒れるからね!」


 シアンとクーアが口喧嘩をする中、キトリは何かが近づいてくる音を聞き、ベーキウの服の裾を引っ張った。


「ベーキウ、何かいる」


「え? マジかよ」


 ベーキウは周囲を見回しながら、背中のクレイモアを構えた。


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