エロジジイを追い込むため
レイダーズが逃げて三日が経過した。ガラス王国に戻ったシアンたちは血眼になってレイダーズの行方を調べていたのだが、レイダーズの情報を得ることができなかった。
「世界中にあのジジイの悪評をばらまいたのに、どうして情報の一つも入らないのかしら?」
「あのジジイもいろいろと考えているのよ。それと、ジジイは結構金を持っているみたいだから、風俗業界では金の生る木として大切にされているかもしれないわ。金を得るために、ジジイをかくまっている可能性があるわ」
シアンとレリルはパソコンをいじりながら話をしていた。ジャオウは何か手伝おうと考え、空いているパソコンの前に座った。
「俺も手伝おう。とりあえず、ここを押せばいいんだな」
と言って、ジャオウはパソコンのボタンを押した。すると、パソコンの画面にはエラー発生とメッセージが現れた。
「エラー発生? どういうことだ?」
「ん? ああちょっと! 変なとこ触ったでしょ!」
「ボタンを押しただけだ」
「もう! 何も分からないパソコン初心者がパソコンを触らないでよ! ウイルスに感染したら大変よ!」
「いやーすまん。それじゃあここのボタンを押せば元に戻るのか?」
「ちょっと黙ってろ機械音痴!」
レリルはジャオウにあれこれ言いながら、パソコンのエラーを直していた。その様子を見ていたベーキウは、横でお茶を飲んでいるアルムにこう言った。
「ジャオウって、本当に機械を操ることができないんだな」
「うん。簡単な携帯電話しか触れない。あの調子じゃあ、運転もできないって前から思ってるよ」
アルムは毎度のことだと思い、お茶を飲んでいた。そんな中、クーアとキトリが部屋に入ってきた。
「皆! 情報を手に入れたわよ!」
「あのジジイ、隣の国の風俗街で遊びまくっているようじゃ!」
言葉を聞いたシアンは掛け声を出し、立ち上がった。
「近くにいるのね? 丁度いい! ここをあのジジイの死に場所にしてやるわ!」
「物騒なことを言わないでください」
アルムがこう言うと、シアンの携帯が鳴り響いた。シアンは携帯を手にし、声を上げた。
「ファントムブレードを作るように頼んだ鍛冶屋さんからのメールだ」
「あー。ファントムブレードか。忘れてたのー」
クーアはファントムブレードのことを思い出しながら呟いた。シアンはメールを読み、ベーキウたちを見た。
「ファントムブレードが完成したみたい。スノウ王女に頼んで、剣聖の里に向かってくるわ」
「じゃあ、レイダーズのことは僕たちが何とかします」
「俺たちで、あの男を封じておく」
「分かったわ。お願いね」
シアンはそう言って、スノウの元に向かった。
ファントムブレードが完成した。だが、レイダーズは確実に逃げる。その足を封じなければレイダーズを斬ることはできないのだ。普通に戦ってもレイダーズを止めることはできない。さて、どうしようとベーキウたちは思った。そんな中、クーアが邪悪な笑みを浮かべた。
「いい案を思いついたのじゃ」
「ほう」
ジャオウの表情は明るくなり、クーアの方を向いた。
「あいつの足を封じる素晴らしいアイデアなのじゃ。あいつは今、風俗街にいる。風俗街にいるっつーことは女に飢えているってことじゃ」
「女が言うセリフじゃないわよ」
呆れたレリルがこう言ったが、それに構わずクーアは話を続けた。
「今のジジイは、美人な女を見つければ発情した犬のように喜んでそいつの尻を追いかける! それを利用するのじゃ!」
「利用って?」
アルムが聞いたが、クーアはアルムの方を見て邪悪な笑みを浮かべていた。その笑みを見たアルムは、冷や汗をかいた。
ガラス王国の隣の国、その国のある風俗街でレイダーズは遊んでいた。隣の国にベーキウたちがいることを知らずに。
うっひょーい! やはり風俗遊びは楽しいんじゃーい!
そんなことを想いながら、レイダーズはスキップしながら移動していた。すると、レイダーズは目の前を歩く美女を見て思わず発情した。
「うっひょひょーい! そこのちゃんねー! ワシと遊ばなーい? お酒が飲みたいのならおごるのじゃ!」
すぐにレイダーズはナンパを始めた。その美女は照れているのか、両頬を赤く染めていた。
「で……では、一杯だけなら……」
「うわーい! それじゃああそこのお店にレッツラゴー!」
レイダーズは美女の手を握り、近くの酒場に向かった。レイダーズは一杯だけだと言いながら、大量に酒を飲んでいた。美女はちょっとだけ酒を飲み、レイダーズのくだらない話を聞いていた。
飲み終えた後、レイダーズは美人の顔を見ながらこう言った。
「姉ちゃん、もっといいことをしないかい?」
「いいこと?」
「気持ちよくなることだよ? へっへっへ、姉ちゃんの年代なら、気持ちよくなることってどんなことか分かっているはずだぜぇ?」
「はぁ……分かりました。お酒もおごってくれたので」
「へいへいへーい! 話の分かるちゃんねーでよかった! ホテル代はワシが出すから安心してチョーだい!」
話を終え、レイダーズは美人の手を握って近くのホテルに向かった。
こんな罠に簡単に引っかかるなんて……。
と、美女に扮したアルムは心の中で思った。クーアの作戦とは、黙っていれば美女に見えるほどの美青年であるアルムを女装させ、抱こうとしたときに正体を明かしてレイダーズに大きなショックを与えることである。
クーアさんの作戦通りにことが動くのかなー? 不安だ。
ホテルに入ったアルムは、自分のことを美人だと思っているレイダーズを見て不安になった。
レイダーズは受付から渡された鍵で部屋の扉を開け、急いでベッドの上にアルムを寝かせた。
「あの、シャワーとか浴びないんですか?」
「そんなことをしていたら、お楽しみの時間が減ってしまう! シャワールームでやるのもいいが、やっぱり雰囲気がある部屋の中でやるのが一番じゃ!」
と言って、レイダーズはあっという間にパンツ一丁の姿になった。脱ぐのが速いと思ったアルムだが、レイダーズはアルムに近付いた。
「恥ずかしいのかい? それとも君は初めてなのかい?」
「い……いえ、その……」
「ワシが衣服を脱がせてあげよう。大丈夫じゃ、こういう時のワシは紳士的じゃ」
カッコよくレイダーズはこう言った。アルムは意を決したかのようにのどを鳴らし、両腕を上げた。
「それじゃあ……お願いします」
「今のワシは下から脱がしたいんじゃ。下から行くぞ」
と言って、レイダーズはアルムのスカートをパンツごと脱がした。そして、アルムのあれを目にしてしまった。その瞬間、レイダーズの口からホテル全体が揺れるほどの大音量の悲鳴が放たれた。
アルムの連絡を貰ったベーキウたちは、レイダーズがいるホテルに到着した。
「うわー、白目向いてるわ」
レリルは白目を向いて倒れているレイダーズの頭を叩きながらこう言った。軽く叩いているとはいえ、レイダーズは起きなかった。
「それだけアルムのあれを見て、ショックを受けたのね」
「僕、そこまで美人に見えるんですか?」
女装されているアルムは、キトリにこう聞いた。キトリはすぐに頷いた。
「今まで父さんとマジで戦ってきたけど、こんな手で動きを封じるなんて……」
「うーむ。剣士としてはあまり納得いかない結果だが……まぁ、これで悪を断ち切ることができるからいいか」
ベーキウとジャオウが話をしていると、シアンとスノウが部屋に入ってきた。
「皆! ファントムブレードを持ってきたわよ!」
「まぁ! あのエロジジイを倒したのね!」
「シアン、スノウ」
ベーキウは部屋に入ってきたシアンとスノウに今までの情報を伝えた。話を聞いたシアンは笑みを浮かべ、ベーキウたちにこう言った。
「これで全部が終わるわ! とりあえず、近くの病院にこのジジイを連れ込みましょう!」
「すでに話は私の方から伝えてあります! 今すぐ悪の種を断ち切りましょう!」
シアンとスノウがこう言うと、ベーキウたちは頷いた。
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