エロジジイハンターズ
レイダーズは命からがら逃げることに成功した。しかし、それで諦めるベーキウたちではない。ベーキウたちは可能な限り、知っている範囲の人々に連絡し、レイダーズを探してくれと依頼した。それと、SNSでも頻繁にレイダーズのことをシアンが記事にしているのだが、レイダーズが逃げてからはシアンの他にもクーアやベルリア、アユたちも行うことになった。そして、アユは魚たちのコネクトを使い、デレラやシアンなどの王族関係の人々は立場を利用し、全世界にレイダーズの悪行を広め、捕まえてほしいと改めて伝えた。
数日後、逃走に成功したレイダーズは身を隠しながら歩いていた。フードや厚手の服で変装して移動するには暑い季節。そのため、レイダーズは帽子を深くかぶり、なるべく地味な格好で街を歩いていた。周囲を見回すと、ニュース番組に出演しているシアンとスノウが、レイダーズの悪行について熱く語っていた。
まずい。ありとあらゆることをしてでも、ワシを捕まえるつもりじゃ!
心の中で、レイダーズはこう思った。ホテルを使う際は、いざと言う時に作った偽名の免許証を使っているのだが、それもいつかはばれる。剣聖の里に戻って事情を説明しようとしても、生真面目な関係者はレイダーズを絶対に許さず、確実にシアンたちに身柄を引き渡すだろうとレイダーズは考えた。
逃げるしかない。ひたすら、逃げるしか道はないのか。
そう思い、レイダーズは深くため息を吐いた。そんな中、突如上空からサイレンのような音が鳴り響いた。
「うわ! どうしたんだ!」
「何があったのー?」
「事件か? お祭りか?」
警報を聞いた人々は、動揺して周囲を見回した。嫌な予感がしたレイダーズはすぐにその場から離れようとしたのだが、目の前にドローンが現れた。
「そこのご老人、深くかぶっている帽子を外してください」
「嫌じゃ。ワシの髪の毛は一本もない。ツルツルな頭を見られて笑いものにされたくない」
「嘘を言わないでください、剣聖レイダーズ! あなたの身長的特徴が一致しているんですよ!」
ドローンの言葉を聞き、周囲の人々の目が変わった。
「あれ、剣聖レイダーズか?」
「話題になっている性犯罪者もどきよね?」
「あいつを倒して捕まえて、勇者シアンの元に届ければ……俺は金持ちになれる!」
「へっへっへ……獲物がここにいたとはねぇ!」
武器を手にした人々は、一斉にレイダーズに襲い掛かった。レイダーズは動揺しつつも、人々の攻撃をかわしていた。そのうち、帽子が攻撃に命中して上空に吹き飛んだ。このせいで、レイダーズの素顔があらわになった。
「あああああ! やっぱり剣聖レイダーズだ!」
「捕まえろ!」
「うおおおおお! そこを逃げるんじゃないぞォォォォォォォォォォ!」
人々はレイダーズを見て、一斉に行動を始めた。伸びてくる手をかわしながらレイダーズは逃げていたのだが、目の前に巨大な男が現れた。
「お前を捕まえて、大金持ちになる!」
「楽して金を得ることはできんぞ! お前みたいなデカブツに、捕まるワシじゃない!」
レイダーズはそう言って、高くジャンプして高い建物の上に飛び移った。何とかなったと思ったレイダーズだが、目の前には無数のドローンがいた。
「剣聖レイダーズ発見!」
「発砲許可は得ています!」
「各機、一斉に機関砲を発射せよ!」
その後、ドローンに装着されているバルカン砲がうなりを上げた。迫るバルカンを見たレイダーズは、悲鳴を上げながら下に逃げた。
「下に逃げました!」
「人々がいます。発砲中止!」
ドローンは発砲を止め、下に向かった。
下に逃げたレイダーズを待ち受けていたのは、人々の群れだった。
「あの野郎、降りてきたぞ!」
「捕まえろ! だけど、金は俺のものだ!」
「何だと? 折半に決まってんだろうが!」
人々は叫び声をあげ、降りてくるレイダーズに向かって手を伸ばした。だが、レイダーズはその手を踏み台にし、勢いを付けて逃げて行った。
「未熟者に捕まるワシではなーい!」
と言って、レイダーズは尻を振りながら逃げて行った。
「あのジジイ、逃げるぞ!」
「俺は追いかけるぞ!」
「俺もだ! こんなとこで金持ちになるチャンスを逃してたまるか!」
逃げるレイダーズを見た人々は、一斉に追いかけた。
シアンたちは一度ガラス王国に戻り、レイダーズがどこにいるのか情報を集めていた。シアンたちがSNSで情報を広めたおかげで、レイダーズの情報は山のように集まっていた。
「結構情報が集まるわね」
「ああ。シアンが報酬金を出すと言ったせいじゃろう」
キトリとクーアは次々と入る情報を見ながら話をした。ジャオウは何か手伝おうと考え、シアンに近付いた。
「何か手伝おう」
「オッケー。それじゃあこの写真が写された場所を特定して」
と言って、シアンは情報の写真をジャオウに渡そうとした。しかし、アルムが急いで近付いた。
「待ってください! ジャオウは機械音痴なんです!」
「えー? 方向音痴で機械音痴?」
「俺は大丈夫だ。機械の一つや二つ、扱ってみせる」
「そう言っているけど、学校でパソコンを使う授業の時、誤操作起こしまくって学校中のパソコンが壊れたり、ウイルスだらけになって大変になったことを覚えてる?」
「が……うう……」
「あんた、意外と弱点が多いわね……」
シアンはそう言って、項垂れるジャオウを見た。そんな中、ベーキウの叫び声が聞こえた。
「助けてくれ! トイレで用をしていた時に、レリルとスノウが乱入してきた!」
「そんなこと言わないでよ! 私はただ、ベーキウの姿を見て乱入しただけよ!」
「私もそうです! それに、ここは私のお城です! だから私の好きなように……」
「少しは他人に気を使ってくれよ!」
ベーキウは慌てながら走ってシアンたちがいる部屋に到着した。その後を追うように、レリルとスノウが姿を見せた。
「レリル、スノウ王女。バカなことをやってないで情報整理を手伝ってよ」
「あのエロジジイ、世界中を飛び回って逃げているから、場所を特定してもすぐにどこか行ってしまうんじゃよ」
「ああそう」
と言って、レリルは間抜けな顔をしながらあくびをした。そのやる気と真剣さのない顔を見たシアンはむっとし、レリルに近付いた。
「あんた、今の状況分かってんの?」
「大丈夫よ。理解しているわ。だけど、これだけ言わせてほしいわ」
「何よ?」
「情報が集まっても、エロジジイはすぐにどこかに行く。それなら、あのエロジジイがガラス王国に近付いた時に動けばいいんじゃない?」
レリルの言葉を聞いたシアンたちは、作業の手を止めた。
「考えてみなさいよ。猛スピードで逃げる相手を追いかけるのは無理な話。それなら、こっちに近付いた時に動けば楽じゃないの」
「そうね」
「言われてみれば。こっちから追いかけようとするから、話は難しくなるのじゃ」
レリルの言葉を理解したシアンとクーアは、納得したように声を上げた。レリルは資料を見て、こう言った。
「あのジジイ、ここから離れた国にいるのね。一般人じゃああのジジイを捕まえるのは不可能に近いから、ジジイがここに逃げるまで待つしかないわね」
「ええ。だけど、一応情報は集めるわ」
「了解。それまでは、私はゆっくり過ごすからー」
そう言って、レリルはベーキウを抱きしめようとしたのだが、スノウが間に入った。
「いいこと言って、すべてがチャラになるとは限りませんよ?」
「いいアイデアを言ったんだから、一晩寝るとかご褒美があってもいいと思うんだけど」
「ありません!」
「そこのバカ二人。ベーキウは私の彼氏だから、調子に乗らないように」
と、シアンは額に青筋を浮かばせてこう言った。その後、この発言を聞いたクーアが部ちぎれ、シアンに飛び蹴りを仕掛けた。そこから、いつものように女たちの醜い争いが始まった。
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