ファントムブレードの素材
翌朝、ベーキウたちはファントムブレードの情報を得るため、大きな図書館があると言われるホンと言う名前の町へ向かった。リフトの町から電車を使い、三時間弱でホンの町に到着した。
「ふぃー、ずーっと座っているのも楽じゃないわねー」
そう言いながら、クーアは電車から降りた直後に大きく背伸びをした。すると、クーアの体内から骨が鳴る音が聞こえた。
「おばさんだから、あまり無茶しないほうがいいわよ」
シアンがそう言うと、クーアはシアンを睨みながら言葉を返した。
「なめんな若造! わらわの年齢は年寄りじゃが、身体年齢は女子高生と同じじゃ! 見ろ、この軽やかな動きを!」
そう言いながら、クーアは踊り始めた。その直後、クーアは腰に強い痛みを感じた。
「アアアアア! ぎっくりやっちまったァァァァァァァァァァ!」
「年だから、無茶しないで大人しくしてよ……」
呆れたキトリは、クーアに近付いて魔力による治療を行った。ヒロインたちが騒いでいる中、ベーキウは駅員から図書館の場所を聞いていた。
「あの図書館に行きたいのね。なら、町の中央に行くといいよ」
「中央ですか」
「うん。ホンの町の図書館は、町のシンボルとしても扱われているんだ。町に入ってすぐに場所が分かると思うよ。結構目立つから」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ、それではよい旅を」
駅員は帽子を取り、ベーキウに頭を下げた。話を聞いたベーキウはシアンたちと合流し、図書館の場所を伝えた。その後、ベーキウたちは駅を出て、ホンの町へ向かった。外を歩く中、町がある方向を見ていたクーアは、驚いた声を上げた。
「あらまぁ。離れた場所でも図書館が分かるぞ」
「あれがそうなのか」
ベーキウは町の方を見てこう言った。ベーキウの目には、ビルのように大きな建物が映っており、本のような形になっていた。シアンはその建物を見て、うなり声をあげていた。
「あれが図書館なのね。確かにでかくて立派な建物だけど、ファントムブレードの本があるって決まったわけじゃないわ。とにかく行って探しましょう」
シアンはそう言って歩き始めた。その後を追うように、ベーキウたちも急いで歩き始めた。
数分後、ホンの町に入ったベーキウたちは門番に話をし、図書館へ向かった。図書館へ到着すると、ベーキウたちは図書館の圧倒的な大きさを目の当たりにし、驚きのあまり口を開けていた。
「私の城より大きい……」
キトリは魔界にある実家を思い出しながらこう言った。この言葉を聞いたベーキウは、確かにそうだなと心の中で思った。
図書館の中に入ったベーキウたちは、中にある本の量を見て再び驚いた。
「うーわ。どれだけ本があるのよ」
「一日で全部調べるのはきついのう」
シアンとクーアはそう言いながら、周囲を見回していた。ベーキウは役員に近付き、こう聞いた。
「すみません。実はファントムブレードと言う武器を探しているんです。伝説みたいな武器なので、過去に書かれた武器に関する本があればいいんですが……」
「昔の武器の本ですか。それなら、三十階にある武器のコーナーを調べてみてください。新しい武器の本や、昔の武器に関する本もあると思います」
「そうですか、ありがとうございます」
ベーキウはそう言いながら役員の顔を見た。ベーキウの顔を見た役員の顔は赤くなり、急いで何かをメモに書き、それをベーキウに渡した。
「今夜、空いているんです。よかったら一緒に……」
「あんたは用がなくてもこっちには用があるのよ! 残念でした!」
ベーキウがナンパされていると察したシアンとクーアが急いでベーキウに近付き、役員が渡したメモを火の魔力で消し去った。その様子を見た役員は、小さく舌打ちをしていた。
その後、ベーキウたちはエレベーターで三十階に移動していた。エレベーターで移動中、シアンたちはベーキウを取り囲むように立ち、ナンパされないように周囲を睨んでいた。こんなことしなくていいのにと、ベーキウは心の中で思っていた。
三十階に到着し、ベーキウはシアンたちを見てこう言った。
「やっぱり広い部屋だな。ここは手分けして探そう」
言葉を聞いたシアンは頷き、クーアとキトリにこう言った。
「ベーキウの言う通り、ここは三手に分かれましょう。私とベーキウ。あと二人。それじゃ、頑張ってねー」
と言って、シアンは無理矢理ベーキウを連れてどこかに行こうとした。だが、キトリが闇の魔力で作った手を使い、シアンの服の襟を引っ張った。
「抜け駆け禁止。イチャイチャしようと考えないで」
「チッ。わーったわよ。個別に散らばって探せばいいんでしょ」
「勇者だから、しっかりやってよね……」
キトリはため息を吐き、本を探すシアンを見た。
本を探し始めて数分後、ベーキウたちはテーブルの周りに集まった。
「とりあえず昔の武器に関する本はこれだけ集めた」
ベーキウはかごの中に入っている本を机の上に置き、シアンたちに配った。
「結構あるわね。昔の本はもちろん、最近出版された本もあるわ」
「武器マニアが喜びそうね」
シアンとキトリはベーキウが持ってきた本を手にし、読み始めた。そんな中、ベーキウはキトリがいないことを察知した。
「あれ? クーアがいないぞ」
「あのおばさん、どこに行ったのかしら? おばさんのくせして迷子になりましたーって話は止めてほしいわ」
シアンはため息を吐きながらこう言った。その時、クーアが大量の本を持ってやってきた。
「バカたれ。わらわが迷子になるわけないじゃろうが」
「戻ってきた」
キトリはクーアが持ってきた本を見ると、変な違和感を覚えた。
「何かやたらと薄いわね。同人誌みたい」
「え? それはその……あははははは」
いきなり焦り出したクーアを見て、キトリは怪しいと思った。クーアはベーキウのように本を見せないのだ。
「その本を見せて」
「え? それはその……これはちょっと借りた本じゃから、あまり他の人に渡したくないのー」
「どうして? ファントムブレードに関する本なんでしょ? 私とシアンはそれらしい本を見つけることはできなかったけど、どうしてクーアは見つけることができたの? 早く見せてよ」
キトリがクーアを睨む中、シアンはこっそりとクーアが借りた本を手にした。その表紙には、男同士で(アッー!)しているイラストが描かれていた。
「うっげェェェェェェェェェェ! これ、BL系のエロ同人じゃないの!」
「しまった!」
クーアはシアンからBLエロ同人を奪うように取ったのだが、その衝撃でかごに入っていた本が散らばった。その本も、BL系の本だった。
「あんたねぇ、真面目にやんなさいよ! 私とキトリは真面目にやって本を見つけることはできなかったけどさー」
「仕方ないじゃろう! 今は手に入らないレアな本がたくさんあったんじゃ! これらは中古で十万以上の値がある本もあるんじゃ! わらわ、どーしてもこれらを一度目にしたかったんじゃ! 堪忍してくれ!」
そう言いながら、クーアは涙を流して土下座を始めた。何度も頭を床にぶつけるような土下座をしていたため、シアンは慌ててクーアを止めた。
「分かったから。とにかくまぁ、あんたがしたいことは夜にやればいいわ。誰もいない静かなところでお願いね」
「今回ばかりは感謝する!」
と言って、クーアは泣き始めた。ベーキウは周囲を見て、周りの人たちが変な動物を見るような目で自分たちを見つめていたため、少し恥ずかしくなった。
しばらくして、ベーキウたちはファントムブレードに関する本がないか調べ始めた。だが、何十冊もある本を読んでも、ファントムブレードに関する文章はなかった。
「うーん……これだけ本があれば、一つでもファントムブレードのことが書かれてる本があってもおかしくないんだけど……」
シアンは無駄足だったのかと思ったが、ベーキウが驚くような声を上げた。シアンたちは急いでベーキウの周りに集まると、ベーキウが手にしている本にはファントムブレードの素材と書かれた文章があった。
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