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レイダーズ被害者の会


 今まで冒険してきた国をもう一度巡った結果、今まで関係してきた人たちが全員腹違いのきょうだいでした。という、あっていいのか分からない展開を経験したシアンは、今後どうするか話し合いをするため、レイダーズによって生み出された被害者たちを集めた。


 ベーキウは不安だった。冒険で知り合った人たちは一癖も二癖も、とにかく癖のある人物が多いのだ。そんな人たちが集まった以上、まともな話ができるわけがないと思っていたのだ。


 話はシュマルームの会議室で行われているのだが、会議前に室内に集まったスノウたちが騒いだり、雑談をしたりしていた。その光景を見たベーキウは、話がまとまるかどうかさらに不安になった。


「ベーキウよ、不安か?」


 横の席に座るジャオウがこう聞いた。ベーキウは頷いて答えた。


「かなり不安だ。まともな話ができるかどうか分からない」


「俺もだ。いろんな人たちを知り合ったが、話が平行線どころかあちらこちらに行って、結局交わらないような気がする」


「俺は話以前に、騒動が起きそうな気がする」


 ベーキウがこう言った直後、シアンはマイクを握って口を開いた。


「はーい静かにしてー。これより第一回、どうやってレイダーズのクソジジイを見つけてしばくかどうかの話し合いを始めたいと思います!」


「え? 第一回? 二回目もやるつもりか?」


 ベーキウのツッコミを聞き流し、シアンは話を続けた。


「話は聞いているように、あなたたちは剣聖レイダーズの子供です。あの、責任感を持たないくせに女を抱くことしか考えておらず、世界中を巡っては種をばらまく世界一救いようのない大バカ野郎はワンナイトラブを楽しみ、孕ませた責任から逃れるために何も言わずに逃走しています!」


「改めて聞くと、酷いジジイですわね。見つけたら頭蓋骨を粉砕してあげましょう!」


 と言って、デレラは拳を振り回した。ヤイバは横に座るツバキの方を向き、小さな声で呟いた。


「なぁ、一度レイダーズと一緒に戦ったって聞いたけど、どのくらい強かった?」


「本当に強いです。僕たちが束になって戦っても、勝てるかどうか分かりません」


「ま、戦う前にあのじーさんを見つけるってのが今回の話だろ?」


 アルジームはシアンに向かってこう言った。シアンは頷き、モンモから借りた映写機を動かした。


「今からあのエロジジイの写真を映写機で映します。皆さん。この救いようのないクソエロジジイの顔を、よーく脳裏に焼き付けてください」


 シアンがこう言った直後、壁にレイダーズの写真が映し出された。


「はぁ。こいつがレイダーズってじーさんね」


「確かにスケベそうな笑みをしているわねー」


 と、せんべいを食べながらヒマワリとパンジーがこう言った。ツエルの横にいるノレパンは、声を上げていた。


「俺からも情報を提供しよう。剣聖レイダーズは剣聖の仕事と言う名目で、世界各地を巡っている。困った人を助けるためにな。その辺はツバキ君がよく知っているはずだ」


「は……はい」


 ノレパンから名前を言われ、思わずツバキは立ち上がった。ノレパンは座ってもいいとツバキに伝えた後、話を続けた。


「勇者シアンと再会した後、俺やカネガタのとっつあんもレイダーズの居場所を探しているんだけど、こいつがどーも掴めない」


「元大泥棒もお手上げと言うわけか」


 クーアの言葉を聞き、ノレパンは小さく笑った。


「そんなこと言わないでよ。でもま、まだ見つけるための選択肢はたくさんある。ネットを使うのもありだが、ここは世界中の皆の手も借りないといけない」


「どういうこと?」


 キトリの問いに対し、ノレパンは笑みを浮かべた。


「動画を使うのさ。勇者シアン。あんたがレイダーズの悪行を動画サイトで世界中の皆に伝えるんだ。それで、皆で協力して捕まえてほしいって言うんだ」


「なるほど! 動画サイトを使えば、皆が見るから一気に情報が回るわね!」


 ツエルは喜んでこう言ったが、アルムは首を振った。


「いい考えですが、剣聖の里の皆さんに迷惑がかかると思います。剣聖を捕まえたってなれば、世間での評判が……」


「そこはいい。見てみるのじゃ」


 クーアは携帯の画面をアルムに見せた。画面にはニュース番組のインタビューの一部が流れていた。


「剣聖の里の人たちは、剣聖レイダーズの愚行をどうにかしてほしいです!」


「あのクソジジイのせいで、俺の彼女が妊娠した!」


「あいつの脳みそどうなってるの? エッチなことしか考えていないじゃないあのエロジジイは!」


 その後、アルムは深いため息を吐いた。


「あの人の愚行、結構知られていますね」


「わらわたちはあまりテレビ見ないからの。まさか、あのエロジジイの悪名が世界中に広がっていたとは……」


「そいじゃ、俺の作戦を実行するっていい?」


 と、ノレパンは笑顔でこう言った。




 その後、シアンは動画撮影のためにすぐに作られた簡易的なスタジオの中にいた。撮影が終わるまで、ベーキウとジャオウはお茶を飲んでいた。


「これでレイダーズが捕まればいいな」


「だな。本当にそうなればいいんだけど」


 ベーキウはそう言った後、女子たちの方を見た。デレラたち女子は自分の彼氏、旦那の自慢をしていた。それを聞いていた野郎たちは、少し照れていた。


「皆のろけているな」


「ま、たまにはこんな機会もあっていいだろう」


「確かにな」


 そんな話をしていると、むすっとした表情のスノウがベーキウに近付き、両ひざの上に座った。


「どうしたんだよスノウ?」


「皆さん、全員彼氏や旦那の話をしています。唯一、私だけ相手がいません」


 その言葉を聞いたクーアとレリルは、爆笑しながら近づいた。


「残念だったわね! ま、あんたは若いというか若すぎるから、彼ピッピを作るにはリアルであと十年かかるってわけよ!」


「言っとくが、ベーキウはやらんぞー。ベーキウはわらわの彼ピッピじゃからなー!」


「その前に、ファーストキスをしたのは私だーって忘れないでねー!」


 バカ二人の言葉を聞いた後、スノウは無理矢理ベーキウの唇を奪おうとした。


「なあああああ! おいちょっと、止めろ! 後ろに倒れるって!」


「ここで私もベーキウ様……いや、ベーキウお兄様とチューしたら恋人への関係へ一歩近づきます!」


「その前に人生の破綻への道に一歩近づく!」


 ベーキウは無理矢理顔を近付けるスノウの顔を押していたが、何故かスノウの力が強く、後ろに転倒してしまった。


「ベーキウ、大丈夫か?」


「あ……ああ」


 ベーキウは後ろに倒れる際、スノウを守るため自身の胸板にスノウの顔を押し当てていた。鍛えていたベーキウの体がクッションとなり、スノウに傷はなかった。


「大丈夫かスノウ? 変なことはするなよ、怪我したら大変だ」


「ベーキウお兄様が守ってくれるから大丈夫です」


 そう答え、スノウはベーキウの胸板の顔を押し当てていた。その光景を見たクーアとレリルは少しイラっとし、スノウに近付いた。


「いい加減離れるのじゃ!」


「そういう光景を見ると、なんだかイラっとするのよ!」


「やーめーてー! 私からベーキウお兄様を引っぺがせないでー!」


 スノウは離れないように、ベーキウの筋肉の隙間に指を突っ込み、離れないように耐えた。


「あだだだだだ! 俺の筋肉を掴むな! 鍛えているけど、皮膚ってことには変わりないから!」


「落ち着いてくれ。このままだとベーキウの筋肉がもげる」


 ジャオウは慌ててクーアたちを落ち着かせようとした。そんな中、呆れた表情のキトリとアルムがやってきた。


「またおばさんたちがバカをやっているの?」


「そんな感じですね……」


 キトリとアルムの言葉を聞き、ベーキウたちは大人しくなった。


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