次々と明らかになる真実
シアンとデレラの約束の戦いが終わった後、シアンはベーキウたちの治療を受けていた。
「にしても、まさかヤイバとアユとも再会できるなんて思ってもいなかったわ。いてて」
包帯を巻かれているシアンは、痛そうな表情をした。キトリは魔力を使ってシアンの痛みを和らげ、アルムは急いで包帯を巻いた。
「あなたたちも勇者シアンたちの知り合いなんですね。男の人は強そうです。治療が終わったら戦ってもらいませんか?」
「いや、俺は遠慮しとくよ。勝てる自信がない」
デレラはヤイバを見てこう言った。そんな中、アユは何かに気付いた表情をした。
「デレラ王女、あなたって格闘技より剣技の方が向いているんじゃない?」
「ユージロコお母様にも言われました。あなたは剣の方が強いって。でも、私は拳で戦った方が楽しいです」
「そう。何か分からないけど、ヤイバと同じ気配を感じたから」
アユの言葉を聞いたジャオウは、あることを察してデレラとヤイバに近付いた。
「もしかしてだが……あなたたちの尻に剣と盾のあざがある……なんてことは……」
「ありますが」
「俺もある。あら、王女もあるのか」
この言葉を聞いたジャオウの動きは固まり、シアンの治療をしていたベーキウの手が固まった。
「え……ちょっと……これって……」
シアンは体中に冷や汗をかき、クーアは目が点となり、キトリの顔色が一気に悪くなった。アルムは動揺してあたふたしているが、レリルとスノウは笑っていた。
「まさか、あの二人がジャオウとベーキウのきょうだいなんてねー!」
「レイダーズってエロジジイ、どれだけ種をまいているのやら」
レリルとスノウは声を発して笑っていたが、ベーキウたちは悲鳴を上げていた。
と言うわけで、デレラとヤイバもベーキウとジャオウの腹違いのきょうだい。もといレイダーズの被害者であることが判明した。そのことを知ったシアンは首を回し、こう言った。
「とりあえず、あのエロジジイは確実にしょっ引かないといけないわね」
「そうじゃの。あいつのことじゃから、この時もどこかで種をばらまいているはずじゃ」
クーアはため息を吐き、空を見上げた。そんな中、ヘルグリームのジェット機を操作していたパイロットが顔を出した。
「すみませーん。燃料がないってのと、機体の整備を行いたいので少し時間がかかります。あと、鏡さんがレイダーズはゴルマネー国って国にいるって言ってました」
「分かりましたー」
シアンは返事をした後、ベーキウたちを見た。
「時間がかかりそうね。どうする?」
「ゴルマネーって、ラープン大陸の国だろ? 俺の船で送ってやるよ」
と、ヤイバがこう言った。その言葉を聞いたレリルは目を輝かせた。
「いいの?」
「ああ。俺も剣聖に一目会って、ぶん殴りたいって思ってたところだ。協力するぜ!」
「ありがとう!」
「すまない、申し訳ない」
シアンは礼を言い、ジャオウは深々と頭を下げた。ヤイバは頭を下げるジャオウを見て、笑ってこう言った。
「お前だって剣聖をぶっ飛ばしたい気持ちはあるだろ? 俺も同じ気持ちだから、気にするなよ!」
「分かった」
と言うわけで、ヤイバの船でゴルマネー国に向かうことになった。
数日後、ベーキウたちはヤイバの船でゴルマネー国に到着した。酔ったジャオウは近くのトイレでリバースし、ベーキウたちは周囲を見回していた。ちなみに、ヤイバとアユは船の整備で港に待機することになった。
「あれから変わってないけど……」
「どこにエロジジイがいるのやら」
ベーキウとシアンはそう言って、レイダーズを探すために周囲を見回した。
「とりあえず、ノレパンたちがいる城下町に向かいましょう」
「あいつ、確か今はツエル王女の元で諜報員をやっているって聞いたわ。何か知っているかもしれないわね」
「確かに。ツエルたちにも会いたいし、行ってみましょう」
その後、リバースしていたジャオウと合流し、ツエルがいる城下町に向かった。門番と話をして町の中に入り、周囲を見回した。
「あいつら、まだ自転車こいでるわ」
レリルは町の中央で、自家発電の自転車をこいでいる元独裁王、カネズキとその仲間たちと、SM嬢の格好をしているお兄さんを見てこう言った。ベーキウは目を合わせないように周囲を見回していると、誰かに肩を叩かれた。
「よっ、お久」
「あ! ノレパン!」
その正体は義賊団モンパ一味で、今はツエルの元で諜報員を行っているノレパンだった。
「ノレパンさん、お久しぶりです」
「よく私たちがきたってことが分かったわねー」
「にしし、常に情報が入るようにいろいろとやってあるのよ。それとまぁ、今回はかわいい嬢ちゃんもいるじゃないの」
ノレパンはベーキウの後ろに隠れるスノウを見てこう言った。
「私、ロリコン野郎にはちょっとしたトラウマがあるんです」
「分かっていますよスノウ王女。ペデラタンのせいで酷い目にあったってことも理解しています。それより、ツエル王女たちに会いにここにきたってわけじゃなさそうだな」
「ええ。実は……」
「長話になりそうだから、城に戻ろう。今なら皆いるぜ」
ノレパンはそう言った後、ベーキウたちがきたことをツエルたちに教えた。
城に到着してすぐに、ツエルはベーキウたちに近付いた。
「皆さん! お久しぶりです! 活躍は耳にしています!」
「あなたも元気そうね」
「お。髪を伸ばしているのか」
クーアは少しだけ髪を伸ばしたツエルを見てこう言った。ツエルは髪を触り、少し笑った。
「えへへ。やっぱりずーっと長髪だったから、こっちの方が動きやすくてね」
「とりあえずまぁ、いろいろと話がありそうだから、始めようぜ」
ノレパンは紅茶を持ってきてこう言った。その後、シアンはこれまであったことをツエルたちに聞かせた。
「ベーキウとジャオウが腹違いのきょうだいだって分かったのは驚いたけど、スノウ王女やガラス王国のデレラ王女、ヤイバって剣士もベーキウの腹違いのきょうだいだって分かった時はめっちゃ驚いたわよ」
「そ……そんなおっさんがいるのか」
「剣聖がかなりスケベであることは噂で聞いたことがあるが、予想以上だ」
イジゲンとカネガタは話を聞き、レイダーズのことを知って少し呆れていた。ミーネは自分も気を付けなくちゃと呟き、体を見回した。そんな中、ゴエゲートが紅茶をすすってこう聞いた。
「一つ聞くが、どうやってきょうだいだと分かったのだ?」
「お尻に剣と盾のあざがあるのよ。剣聖の一族にしか、そのあざはできないって」
「剣と盾? え? 剣と盾のあざ?」
この話を聞いたゴエゲートは、動揺して体を震わせた。その様子を見たベーキウたちはもしやと思った。その時、ツエルが笑みを浮かべた。
「あら。ゴエゲートのお尻にも同じようなあざがあるの」
「えええええ! と言うか、どうしてそのことを知っているんですか?」
「ツエル、まさかあなた……」
「大丈夫よシアン。一線は超えてないわ。私がゴエゲートのお風呂に乱入しただけ」
「いや、それでもすごいことをしていますよ」
アルムは冷や汗を流しながらこう言った。だが、ベーキウたちはこの時知った。ゴエゲートもきょうだいであると。
その後、ベーキウたちはうなり声をあげていた。
「どうする? 早くあのエロジジイを去勢しないとまたきょうだいと言う名の被害者が増えるぞ」
「それは知っているわよ。でもどうしよう。ヒルヴィル王妃の鏡で探しても、若干のラグがあるし……」
シアンが悩む中、レリルは何かを思い出した。
「ルーシィよ。ルーシィの力を借りればいいのよ! あの子、まだ確かグレトールの力が残ってるって言ってたわ!」
「願いの力か……」
レリルの話を聞いたシアンは決断した。デザトスミスにいるルーシィの力を借りることにしたのだ。
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