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約束を果たすとき


 シアンは十分に休んだ後、レンズ王国の城の中央にあるリングの上に上がった。


「武道会のことを思い出すわねー」


「クローンの騒動で結果があやふやになってしまいましたが」


 リングの上に上がったシアンとデレラは、軽くストレッチをしていた。審判役のアルムが中央に立ち、シアンとデレラを見た。


「では僕の合図で戦いを始めます。両者、用意はいいですか?」


「オッケーよ」


「いつでも戦えます!」


 シアンは軽くジャンプしながら返事をし、デレラは気合を入れるために両手の拳をぶつけて返事をした。


「それでは……レディ……ファイト!」


 アルムは合図をしてすぐに後ろに下がった。その直後、デレラの拳がシアンを襲った。


 早い! 武道会よりも早くなってる!


 デレラの成長を察したシアンは、防御が間に合わないことを感じ、急いでデレラの攻撃をかわした。攻撃をかわすことができたが、デレラの拳が少しだけシアンの頬をかすった。そのせいで、シアンの頬には切り傷ができた。


「嘘……」


「シアン、油断しないで! 足元を見て!」


 リングの外にいるキトリが大声で叫んだ。デレラが放った一撃の勢いが強すぎたため、衝撃波が発しており、その衝撃波がリングを削っていたのだ。


「まだまだ行きますわよ! 戦いは始まったばかり!」


 と言って、デレラは素早くシアンの元に接近し、パンチとキックを放った。


「ちょ! ま! タンマ! 早!」


 デレラの驚異的な攻撃速度を見て、シアンは動揺しながらも攻撃をかわした。だが、衝撃波によって徐々にシアンの体に傷ができていた。


「どうしましたの? 反撃の一つくらいしてくださいな」


 と言って、デレラは余裕の表情でシアンにこう言った。




 その頃、外を歩いていたベーキウとジャオウとレリルは港にいた。


「あのジジイ、ここにいるかな?」


「鏡はこの国いるって言ってたけど……」


「すでに他国に渡った可能性もあるな」


 そんな話をしていると、ベーキウを呼ぶ声がした。


「あれ……この声は」


 ベーキウは声がした方を振り返ると、そこにはヤイバとアユがいた。


「ヤイバ! アユ!」


「久しぶりだなー。まさか、この国で再会するなんて思ってなかったよ」


「私もよ。あら、後ろの二人は知り合い?」


「ああ」


 ジャオウとレリルはベーキウからヤイバとアユのこと、そしてハンガー海賊団との戦いを聞いた。


「ジャオウがカナヅチ克服している間、そんなことがあったのね」


「あ、ジャオウたちもあの国にいたのか」


「ずっと泳ぎの練習をしていたのだ。おかげで、泳げるようになったぞ」


「と言うか、泳げなかったのか……」


 ベーキウたちが会話をする中、アユが周囲を見回した。


「あれ? シアンたちは?」


「ガラス王国の城。シアンはそこでデレラと組手してる」


「デレラ王女と? 嘘だろ、あの王女は世界で一番強いかもしれないって評判だぜ」


 ヤイバは驚きの表情をしてこう言ったが、すでにデレラの人外的な戦闘能力と戦闘意欲をベーキウたちは知っているため、驚きはしなかった。


「俺、先にこの国でデレラと知り合ってんだ。だから、どれだけ強いか……」


「これ見て」


 アユは手元のタブレットをベーキウたちに見せた。そこには、デレラが映っていたのだが、その周りを囲むように無数の格闘家たちがいた。


「これは?」


「デレラ王女の特訓映像だって」


「この格闘家たち、全員名のある連中だ」


 ヤイバの説明を聞いた後、ベーキウたちはじっとタブレットの映像を見た。格闘家の一人が声を上げた直後、一斉にデレラに襲い掛かった。だが、一瞬のうちにデレラの姿が消え、そのあとすぐに格闘家たちが悲鳴を上げながら宙に舞った。


「な……あの時より強くなっていないか?」


「ああ。シアン、勝てるかな」


 戦いの様子を見たベーキウは、小さく呟いた。




 シアンは魔力を開放し、迫るデレラを見た。


「ほら、行きますわよォォォォォ!」


 デレラは叫び声をあげ、回し蹴りを放った。勢いのある蹴りはまるで鞭のように動き、シアンを襲った。シアンは左腕で蹴りを防御した。だが、威力が高すぎるせいで防御してもダメージを感じた。


「グハッ!」


 防御したものの、シアンは吹き飛んだ。


「シアン!」


「うわ、すごい音!」


 キトリとアルムは吹き飛んだシアンを見て心配したが、戦いを見ていたクーアとスノウは笑みを浮かべていた。


 このままシアンがくたばれば、ベーキウを争う枠が一つ減る。


 あの人、勇者より強いわ。このまま勇者シアンが倒れれば、ベーキウ様に一歩近づける。


 そんなことを想っているが、表情が黒かった。そのことを察したキトリは呆れてため息を吐いた。


 シアンは何とか態勢を整え、迫るデレラを見た。


「やはり勇者! この程度では倒れませんね!」


「当然! 本気出してもいいわよね?」


「そうでなくては面白くありませんわ! 今のあなたの力を見せてくださいな!」


「それじゃあ!」


 シアンは魔力を開放し、激しい衝撃波を発した。衝撃波を受けたデレラは驚いた表情をしたが、その表情は次第に笑みに変わった。


「これが今のあなたの力なのね。武道会で戦った時より強く感じるわ!」


 デレラはゆっくりと呼吸を整え、シアンに向かって突っ込んだ。


「それなりに痛いと思うから、覚悟を決めなさい!」


 と言って、シアンは接近してきたデレラに向かって右の拳のストレートを放った。防御できる状況なのだが、デレラは今のシアンの力を確かめるべく、わざと攻撃を受けた。


「えええええ! わざと攻撃を受けた!」


「何を考えておるんじゃ!」


 その様子を見たクーアとスノウは驚いた。攻撃を受けて吹き飛んだデレラは、態勢を整えてシアンを見た。


「すごい攻撃ですわね。鍛えていなかったら、あばら骨がほとんど折れていました!」


「本気で殴ったのに、まだ余裕ね」


 シアンは右手をぶらぶらと動かしながらこう言った。デレラはステップを踏むように動き、再びシアンに接近した。


「では、次は私の番ですわねェェェェェ!」


「そうはさせないわよ」


 シアンはデレラの蹴りを左腕で受け止め、右手のアッパーで上空にいるデレラに反撃をした。右手のアッパーを受けたデレラは小さい悲鳴を上げながら吹き飛び、リングの上に倒れた。


「私がダウンするなんて思ってもいなかった」


 と言って、デレラはすぐに起き上がった。


「いい戦いですわ。これほど興奮したのは、武道会以来です」


「あんたを熱くさせちゃったみたいね」


 シアンは背伸びをし、デレラを見た。


「まだやる?」


「もちろん。楽しい時間ですもの。もっともっと楽しみましょう!」


 会話をした後、シアンとデレラは同時に走り出し、接近して攻撃を始めた。


激しい戦いが続く中、外に出ていたベーキウたちが戻ってきた。


「戻ったぞー」


「ベーキウ。あのエロジジイはいた?」


「いや、いなかった。でも、ヤイバとアユがいた」


 ベーキウは後ろにいるヤイバとアユをキトリに見せた。久しぶりにヤイバとアユの顔を見たキトリは声を上げ、二人に近付いた。


「久しぶり! どうしてこの国に?」


「ちょっとした旅行さ。で、シアンは何やってんだ?」


「この国のお姫様と決闘中。約束してたの」


「お姫様と決闘……」


 ヤイバとアユは驚きの表情でリングの上で派手に戦っているシアンとデレラを見た。それから数時間後、シアンとデレラはボロボロになったリングの上で倒れていた。二人の衣装はボロボロで、体中あざだらけ、衝撃で待った砂利や石が体に当たったため、多数の切り傷ができていた。


「や……やりますわね……」


「あ……あなた……も……」


 シアンとデレラは短い会話を交わした後、気を失うかのように眠った。


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