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諸悪の元凶は逃げた


 レイダーズを去勢するため、そしてファントムブレードを作るために剣士の聖域へ向かったベーキウたち。職人に素材を渡してレイダーズの元へ向かったのだが、迷走していると思われた部屋にはレイダーズの姿がなかった。


「いない……いない! あのエロジジイ、どこに行ったのよ!」


 レイダーズの見張りをしていた女性は、慌てながら部屋中を見回した。そんな中、声に反応したオウムが騒ぎ始めた。


「そうか。分かったよ。そうか。分かったよ」


 同じ言葉を連呼するオウムを見て、シアンはため息を吐いた。


「あのエロジジイ、自分の声真似をオウムに覚えさせたのね」


「それで、反応したら声を出すように教育したのね。手が込んでる」


 シアンとキトリはオウムを撫でながらこう言った。そんな中、オウムがまた騒いだ。


「止めてください! 私には夫と幼い子供がいるんです! げえっへっへっ……奥さんはそう言って拒絶しているようですが、体は正直ですねぇ。どれ、下の口はどうでしょうかな?」


「何よ今のセリフ! エロ動画で流れそうなセリフだったんだけど!」


「こいつの仕業じゃな」


 テレビ台の下を見ていたクーアは、棚の中にあった一本のDVDをベーキウたちに見せた。そのDVDには、白昼間寝取られ地獄~鬼畜管理人の手に堕ちる若妻たち~と、書かれていた。ベーキウとジャオウとアルムはすぐにそのDVDをクーアから取り、床の上に叩きつけて踏み潰した。


「あのジジイ、なんつーもん見てんだ!」


「さっきのセリフはこのDVDの仕業だな!」


「なんて言葉を覚えさせているんですかねぇ本当!」


 ジャオウとアルムはレイダーズがどれだけスケベで救いようのないしょうもないクソジジイだと判断した。そんな中、レリルが中央にあったちゃぶ台を動かした。


「何をしているんだ?」


「下から風を感じるのよ。やっぱり。ちょっとごめんねー」


 レリルはちゃぶ台を動かした後、下の床を持ち上げた。床は動き、そこには大きな穴があった。


「うーわ。落とし穴があったとは」


「これ、落とし穴じゃないわ。脱出用の穴よ」


 キトリは穴の横に梯子があることをベーキウたちに伝えた。ベーキウは女性から懐中電灯を借り、穴を照らした。


「照らしても下の方まで見えないな……」


「どれだけ掘ったのよ?」


「結構高い山だったからな。それ相当深く掘ったんだろう」


「面倒なことを……」


 ベーキウたちは互いの顔を見合わせた後、穴を見た。少し間を置いた後、ベーキウは頷いた。


「よし。降りよう」




 ベーキウたちは梯子を使ってレイダーズが勝手に作った穴を下っていた。


「ベーキウー。わらわが落ちたら受け止めてほしいのじゃー」


 ベーキウの上にいるクーアがこう言ったが、シアンが叫んだ。


「バカ! 両手がふさがった状態なのよ! それで落ちたら受け止めようがないじゃない!」


「それにあんた、魔力があるんだからどうにかなるじゃない」


 シアンとレリルの言葉を聞き、クーアは舌打ちをした。


「もう、今はバカなことをやっている場合じゃないのに」


 話を聞いていたアルムは呆れてこう言って、ジャオウはため息を吐いていた。


 降り始めてから数分後、ベーキウたちは下に到着したのだが、目の前を懐中電灯で照らしてすぐにベーキウたちは嫌な声を上げた。


「うわぁ……別れ道がいっぱい」


 アルムは無数に作られたトンネルを見て、思わず声を出した。


「あのジジイ、逃げたのがばれても邪魔をするため、わざと大量にトンネルを作ったわね」


「ふざけたことをするジジイじゃ。とりあえずどうする? 個別行動は時間がかかるし、三チームに分けて動くか?」


「クーアさんの言う通りですね。三チームに分かれた方がいいと思います」


「俺もだ」


 ジャオウとアルムがクーアの案に賛成し、ベーキウとキトリもレリルも賛成した。その後、くじでチームが決められた。




 シアンとクーアとレリルは嫌そうな顔をしていた。この三バカ、自分がベーキウ、あるいはジャオウと一緒のチームになろうとくじに小細工をしていたのだが、結局失敗してしまったのだ。


「私はベーキウと一緒がよかったー」


「わらわもじゃー」


「私もよー。できればベーキウとジャオウがいてほしかったー」


 三バカはやる気のない声を上げ、だらだらと歩いていた。そんな中、クーアは奥を見て声を上げた。


「何かあるぞ」


「宝……じゃあなさそうね」


 レリルは先に向かってクーアが見つけた何かを確認した。その直後、レリルの悲鳴が聞こえた。


「何だったの?」


「うっげェェェェェ! 汚ねェェェェェ! 使用済みのラ〇ドールが捨てられてるわ!」


 レリルの声を聞き、シアンとクーアは前を見た。そこには、使って捨てられたラ〇ドールが大量に捨てられていた。それを見たクーアはすぐに火の魔力を発し、燃やした。


「汚物は消毒じゃ」


「あのエロジジイもあとで消毒しないとね」


「消毒って……チ〇コ斬った後で燃やすってわけ?」


「そうね。そのくらいやらない時が済まないわ」


 シアンの殺意がこもった声を聞き、レリルは冷や汗をかいた。




 ベーキウとアルムは懐中電灯で前を照らしながら歩いていた。


「この通路、どこまで続くんですかねぇ?」


「ああ。途中で別れ道もいくつかあるし。こんなことに無駄な時間をかけてほしくないな」


 ベーキウはため息を吐いてこう言った。アルムはこれまでのベーキウたちの態度を見て、レイダーズがどんな人物であるか察知していた。


「レイダーズって人、罠を仕掛けているってことはないですよね?」


「うーん……今のとこは順調に進んでいるけど……もしかしたら仕掛けているかもしれないな」


 その時だった。突如ベーキウの上からスライムのような液体が降ってきたのだ。それを見たアルムはベーキウを突き倒し、身代わりになった。


「アルム!」


 心配したベーキウは急いで立ち上がり、アルムに付着しているスライムを水で流した。


「あのジジイ、こんな罠を仕掛けていたなんて」


「はぁ、酷い目にあいました」


「大丈夫か?」


 ベーキウはアルムの姿を見て、驚いて口を開けた。さっきのスライムには衣服だけを溶かす溶解液があり、そのせいでアルムの衣装が六割溶けていた。


「うわァァァァァァァァァァ! あのスライム、服を溶かすんですかァァァァァ!」


「あのジジイが考えそうな罠だ。俺の着替えがあるから、それを使えば……」


 その直後、ベーキウの上からスライムが降ってきた。その結果、ベーキウは上半身だけ裸になった。


「この姿を見たら……」


「シアンとクーア辺りが勘違いしそうだな」


 ベーキウとアルムはこう言って、深いため息を吐いた。




 一方その頃、キトリも同じように大きなため息を吐いていた。


「あれ? ここはさっき通った道だ」


「ええそうよ。これまで何十回以上も同じ道を通っているわ」


 ジャオウの方向音痴が発動し、同じ道を何度もぐるぐると回っていたのだ。


「アルムから言われてたけど……これほどまで方向音痴だなんて……」


「俺は方向音痴ではない。次こそ、本当に次こそ出口を見つけてみせる。だが、このままでは時間を使うだけだ」


 と言って、ジャオウは大剣を構えた。ジャオウが何をするか理解したキトリは、急いでジャオウを止めた。


「ちょっと! こんなところで魔力を開放したら、山が崩れるわ!」


「加減はする。大丈夫だ!」


「いや、大丈夫じゃ……」


 キトリの制止を聞かず、ジャオウは魔力を開放した。ジャオウの大剣から発した闇の刃は勢い良く伸び、新たな出口を作ることになった。


「ふぅ。最初からこうしていればよかったな。出口を作れば、わざわざ三手に分かれて行動することもなかった」


 ジャオウはどや顔でこう言ったが、その時地響きが発した。


「何だこの音?」


「一気に下から山を削ったから、バランスを失った上の部分が崩れるに決まってるじゃない! 早く逃げるわよ!」


「俺……やっちまったか?」


「ええ。やっちまったのよ」


 その後、キトリはジャオウを引っ張り、急いで脱出した。




 ジャオウのポカで、少しだけ山が崩れた。大した被害はなかったのが救いだったが、中にいたベーキウたちが酷い目にあっていた。


「ジャオウ……無茶しすぎだよ」


「し……死ぬかと思った」


 半裸に近い状態のベーキウとアルムが、息切れをして倒れていた。シアンとクーアとレリルも息切れをしていたが、倒れているベーキウに近付いて同時に倒れた。


「ぐっは!」


「おいババアとニンニクサキュバス! あんたらも同時に倒れんじゃないわよ!」


「わらわだって疲れたんじゃ!」


「それに、ベーキウがセクシーな姿で横になってんのよ? 私も横にならんといけないじゃない!」


「うるせェェェェェ!」


「やんのかコラ?」


「上等だボケェェェェェ!」


 その後、三バカはバカバカしい理由で喧嘩を始めた。その一方で、ジャオウは申し訳ないと思い、土下座をしていた。ベーキウはため息を吐き、こう言った。


「とりあえず、父さんが抜け道を作って脱出してたってのは分かったな」


「でも、どこに行ったか分からないわよ」


「確かにな。でも、教えてくれる人はいる。あれは人と言っていいか分からないけど」


 キトリはこの言葉を聞き、何のことか分からなかった。だが、しばらくしてこの言葉の意味を理解した。


「まさか、ヘルグリームのヒルヴィル王妃の不思議な鏡……」


「ああ。あの鏡なら、教えてくれるかもしれないって思ってさ」


 ベーキウはこう言った。キトリはまたヘルグリームに向かうことを知り、スノウのことを思い出していた。また、厄介なことになると、キトリは思った。


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