激しい戦いの行方
シアンとジャオウの戦いの中、シアンの危機を察したベーキウが戦いに乱入し、渾身の一撃をジャオウに命中させた。だが、攻撃を受けたジャオウは立ち上がった。
嘘だろ、それなりに力を込めてはなった一撃なのに!
立ち上がったジャオウを見て、ベーキウは動揺していた。そんな中、シアンがベーキウの肩を叩いたことで、ベーキウは我に戻った。
「やるようだな。少し……本気を出させてもらうぞ」
ジャオウはそう言うと、魔力を開放した。その瞬間、周囲の草木が激しく揺れ始めた。
「かなり強い魔力ね……私がバリアを張るから、ベーキウは下がって!」
シアンは魔力を開放し、巨大なバリアを作った。ベーキウはクレイモアを構え、シアンにこう言った。
「攻撃が終わったら、俺が攻め込む! 大技の後なら、隙があるはずだ!」
「相手はそのことを予測して動くってことも考えて! それに、今からあいつが放つ技は、私でも耐えられるかどうか分からない!」
シアンの言葉を聞いたベーキウは納得し、後ろに下がった。だがそれに合わせるような形で、ジャオウはベーキウとシアンに向かって巨大な闇の波動を放った。
アルムと戦っているクーアとキトリは、荒く呼吸をしていた。
「つ……強い! こいつ、女のくせしてかなりやりおる!」
「二対一の状況なのに……こっちが追い込まれるなんて……」
アルムは魔力でナイフを宙に浮かしながら、クーアとキトリの方を見た。
「僕に勝てないって察したら、おとなしく引いてください。引いてくれれば、こちらは何もしませんから」
「はん! そんな言葉信じられるかァァァァァ!」
クーアは魔力を開放し、アルムに向かって飛びかかった。いきなり飛んできたクーアを見て、アルムは悲鳴を上げた。
「うわァァァァァ!」
「ギャーッハッハ! いくら強者でも、いきなり奇襲されたら動揺するようじゃな! わらわがここまでやられたんじゃ! わらわの魔力でテメーの服をずたずたに引き裂いて、スッポンポンにしてくれるわァァァァァ!」
クーアはそう言いながら、外道のような笑い声を発した。
「これじゃあこっちが悪人じゃないの……」
呆れたキトリは、バカなことを始めたクーアに近付いてこう言った。
「おばさん。これ以上、非道な行いは止めなさい。止まらないと、私がおばさんを始末する側に回るわよ」
と、キトリは言ったのだが、クーアはある場所を見つめて動きを止めていた。話しかけても突っついても反応しないため、キトリはため息を吐いて再び口を開いた。
「もう、どうして何も返事もしないの? 早くベーキウたちの援護に行かないといけないのに……」
キトリはクーアが見つめる場所を見て、同じように動きを止めた。今、アルムはクーアのせいによって服の一部がズタズタになっていた。アルムの見た目からして、キトリはアルムの年齢が二十代ぐらいだろうと予測していたが、今、目にする光景を見て、年齢とかそんな問題じゃないとキトリは把握した。何故なら、アルムの股間には男にしかないあれがあったからだ。
「あ……あああ!」
あそこを見られていると察したアルムは、顔を赤くしながらあそこを手で隠した。アルムの声を聞いて我に戻ったキトリは、顔を赤くして頭を下げた。
「ごめんなさい! 見てはいけないものを見てしまったようで!」
「いっ……いえ、こちらこそ、ごめんなさい。見たくないものを見ちゃったようで……」
「あなたは悪くないわ。一番悪いのはこのおばさんだから」
そう言いながら、キトリはクーアの頭を叩いた。そんな中、キトリたちは強い魔力を感じた。
「まさか……この魔力はジャオウ!」
ジャオウの魔力を察したアルムは、急いでジャオウの元へ向かおうとしたのだが、キトリが悲鳴を上げながらこう言った。
「ちょっと待って! フル〇ンで行くつもり? 下は隠したほうがいいわよ!」
ジャオウは荒く呼吸をしながら、離れた場所で倒れているシアンを見ていた。シアンはジャオウが放つ闇の波動を防御していたのだが、バリアを破壊され、そのまま闇の波動を受けてしまったのだ。
「勇者は……倒した……のか?」
倒れたシアンを見て、ジャオウは疑問に思った。シアンがやられたふりをしている可能性があると思っているからだ。確実に倒したかどうか調べるため、ジャオウはゆっくりと倒れているシアンに近付こうとした。だがその時、上空からクレイモアを構えたベーキウが現れ、ジャオウに攻撃を仕掛けた。
「斬ってやるぞォォォォォ!」
「ぐうっ!」
ベーキウは叫び声を上げながら、渾身の一撃を放っていた。ジャオウは大剣を使ってこの攻撃を防いだのだが、闇の波動を使った際に魔力を消費しており、攻撃を受け止めるだけで精一杯だった。
「グッ! この!」
このままだとやられると判断したジャオウは、残っていた魔力を使ってベーキウを吹き飛ばした。飛ばされたベーキウは激しく地面に激突したが、すぐに立ち上がってジャオウに向かって走り出した。
「まだ立つか!」
ジャオウはベーキウがまだ立ち上がり、戦意を見せたことに驚いた。ベーキウはジャオウに接近し、再びクレイモアを振るって攻撃を始めた。だが、この時のベーキウの攻撃は最初の攻撃よりも、スピードが落ちていた。そのことを察したジャオウは、確実にベーキウはダメージを受けていると判断した。
「これ以上攻撃すると、体を痛めるぞ」
「それがどうした! ここでお前を倒さないと、大きな問題が起こるかもしれないからな!」
と言って、ベーキウは叫び声を上げながらクレイモアを振り下ろした。ジャオウは攻撃をかわし、大剣を構えなおして、ベーキウに向かって突き刺した。命中したのは、ベーキウの腹。
「グバッ!」
ベーキウは痛みのあまり、短い悲鳴を上げてその場で倒れた。倒れたベーキウを見て、ジャオウはこう言った。
「安心しろ、死なないように手加減はしてある。だが、少しばかり痛いかもな」
ベーキウを倒したと判断したジャオウは、大剣を背負おうとした。その時だった。ベーキウは再び立ち上がり、鬼のような目でジャオウを睨んだ。
「逃がさねーよ。まだ戦いは終わってない」
「何! まだ立ち上がるのか!」
「言っただろうが。お前を倒すって」
ベーキウは動揺して隙だらけのジャオウに接近し、渾身の力を込めてクレイモアを振り下ろした。この一撃を受けたジャオウは、悲鳴を上げながら後ろへ吹き飛んだ。
グッ! ダメージが大きい!
大きな痛手を負ったジャオウは、何とか立ち上がろうとしたのだが、攻撃を受けた場所が強く痛み、そのせいで体を動かすことはできなかった。一方、ベーキウは全身に痛みを感じていた。だが、ここで戦いを終わらすことを最優先し、ゆっくりとジャオウの元へ向かった。
「ここで……俺は負けるのか……」
近づいてくるベーキウを見て、ジャオウは敗北と死を覚悟した。そんな中、ベーキウとジャオウの間に入るような形で、アルムが現れた。
「そこまでだ! ジャオウを倒させはしない!」
アルムを見たベーキウは、アルムの手を見て動きを止めた。アルムは魔力を開放していて、その攻撃の矛先は倒れているシアンだったのだ。
「シアンに何かしたら、ぶっ飛ばすぞ」
「僕も同じ気持ちです。これ以上ジャオウを攻撃したら許せない。それに、あなたもあと一回攻撃したら、痛い目に合うと思います」
「うるさ……」
ベーキウはアルムに攻撃を仕掛けようとしたのだが、そこで体力が限界となり、その場に倒れた。
「限界だったんですね……」
倒れたベーキウを見て、アルムは小さく呟いた。その後、傷を負ったジャオウを背負い、魔力を開放してどこかへ飛び去った。それからしばらくして、クーアとキトリは倒れているベーキウとシアンを見て、悲鳴を上げた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




