剣士の聖域へ
次の目的が決まった。それは、レイダーズを無理矢理去勢させること。ジャオウを倒すために使おうと思っていたファントムブレードを、レイダーズのチ〇コを斬るために使うという話なのだ。その後、ベーキウたちはモンモたちに別れを告げ、次の大陸へ向かった。
シアンが予約した客船に乗っているレリルは、ビキニ姿で日光浴をしていた。
「ふぃー。バカンスっていいわねー」
そう言って、近くの小さなテーブルの上に乗っているクリームソーダが入ったグラスを手にし、ゆっくりと飲み始めた。クーアは流れるプールに入り、楽しんでいた。そんな中、ベーキウとシアンとジャオウとアルムは室内でファントムブレードの素材を見ていた。
「改めて見るんですが……これでどうやってファントムブレードを作るんですかね?」
「そう言われるとそうだな。もしかして、これらを熱で溶かして刃にするのだろうか?」
アルムとジャオウが話をする中、シアンが咳払いをした。
「ファントムブレードを作る人が、次に向かう大陸にいるのよ」
「え? そんな人がいるのか?」
「そうよベーキウ」
と言って、シアンは持っているタブレットを机の上に置き、ベーキウたちに見せた。
「次に向かうのは、剣士の聖域と言われる島よ」
「剣士の聖域か。噂には聞いたことがある。強くなりたい、名をはせたい剣士たちはそこの島へ向かって修行をし、強くなると」
「そんな島があるのか」
ジャオウは少し目を輝かせながらこう言った。だが、ベーキウは首を横に振った。
「俺が耳にしたのはそんな夢のある話じゃない」
「そうか。やはり、修業がきついから逃げたり、修行の最中に命を落とす者もいるというのか」
「ああ。そんな話を聞いたことがある。だけど、その島についてはあまり情報がないんだ」
「かなり真面目な人がいそうな島ですね。もしかしたら、レイダーズって人もそこに……」
「いる可能性はあるわね。剣聖はあそこの島に住むのがルールって聞いたことがあるから」
シアンはまたレイダーズと遭遇し、セクハラを受けるかもしれないと思い、ため息を吐いた。
「もし今度セクハラされたら、去勢する前に切り刻んでやる」
「そんなことを言うのは止めなさい」
そう言いながら、ジュースを買いに行っていたキトリが戻ってきた。キトリはベッドの上に座り、ベーキウに話しかけた。
「船の中を見回した? 剣を持った人がたくさんいるわ」
「皆、剣士の聖域に向かうんだな」
「剣士の聖域?」
「剣士の修行場みたいなものだ。そこに、ファントムブレードを作る職人がいると言っていた」
ベーキウとジャオウの話を聞き、キトリは納得した。そんな中、げんなりとした表情のクーアとレリルが戻ってきた。
「あーあ、だーれもナンパしてこない」
「プールがあるっつーのに、誰も入りはしない。皆木刀を持って振り回しておる」
「剣士として名を上げたい人がたくさんいるんですね」
「その人たちが剣聖のことを知ったら……結構なショックだろうな」
ジャオウの言葉を聞き、ベーキウたちは頷いた。
数日後、ベーキウたちは剣聖の聖域に到着した。島に降り、ジャオウは周囲を見回した。
「やはり、剣士たちがたくさんいるな」
ジャオウの言う通り、島の入り口である港には、剣を持った人がたくさんいた。だが、アルムは女性の団体を見つけた。その団体は、島の関係者らしき人に向かって大声を放っていた。
「とっととレイダーズって名乗ったクソジジイを出しなさい!」
「私たち、あのクソジジイにいろいろされたんです!」
「最初はジジイだけど抱かれていいかなーって思っていたのに、一晩寝たらすぐに捨てられたわ!」
「私のお腹には、あのジジイの子供がいるのよ! どう責任取ってくれるのよ!」
この言葉を聞き、アルムは剣士以外の人もいるのだと察した。その時、島の人がシアンの顔を見て、すぐに走ってやってきた。
「これはこれは勇者シアン様! どうしてここへ?」
「ファントムブレードの素材が集まったの。それと……」
シアンはベーキウとジャオウの方を向いた。シアンが次に何を言おうと察したベーキウはジャオウの方を向いた。ジャオウも察しており、頷いて答えた。
「剣聖、レイダーズに会いたい」
「あの人にはいろいろと言いたいことがある。山ほどある」
「分かりました。ファントムブレードを作る職人は近くの村にいます。そして、剣聖レイダーズは山の山頂にある、小屋にいます。瞑想中ですから、いると思います」
「ありがとうございます。皆、行きましょう」
シアンがこう言った後、ベーキウたちは歩き始めた。
ベーキウたちは最初に近くの村に立ち寄った。ファントムブレードを作る職人の家を訪ね、話をした。職人はシアンからファントムブレードの素材を受け取り、笑みを浮かべていた。
「へっへっへ。ファントムブレードを作るなんて何十年ぶりだろうな。腕が鳴るねぇ……超鳴るねェェェェェェェェェェ!」
よぼよぼだった職人だったが、ファントムブレードの素材を見て筋肉を膨張させた。
「勇者ちゃんたち! ファントムブレードを作るにはそれなりに時間がかかる! 作り終えたら連絡するから、それまで待っててくれよな!」
「は……はい」
気迫に負けたシアンは、引き気味に答えた。そして、ベーキウたちはいよいよレイダーズに会うため、山を登った。
山頂。疲れ果てた表情のクーアとレリルは、山頂に着いたと同時にその場に座り込んだ。
「はぁ……はぁ……年寄りにこの山はきつい」
「なんて高さなの? しかも……道中マジできつかったし。岩が多すぎ」
「少し鍛えたら、この程度はなんてことないぞ」
ジャオウは魔力を使ってクーアとレリルの疲れを癒した。少し休憩した後、シアンは目の前の小屋を見た。
「あそこにあのエロジジイがいるのね」
「少し前に会ったばかりだから、感動も何もないな」
シアンとベーキウはこう言った後、小屋の前にいる女性に話しかけた。女性はかけている眼鏡を上に上げ、ベーキウたちを見た。
「あなたたちは勇者パーティーですね。エロジジ……剣聖レイダーズに用があるのですか?」
「はい」
シアンの返事を聞いた後、女性は扉を開いてベーキウたちを小屋の中に案内した。小屋の奥に扉があり、そこにはレイダーズの影があった。
「影だけ見ても……殺意がわいてくるわね」
キトリの言葉を聞いたアルムは驚き、落ち着くように告げた。ベーキウは軽く扉を叩き、こう言った。
「父さん。俺だよ、ベーキウだよ。いろいろと用がある」
「そうか。分かったよ」
と、レイダーズの返事が聞こえた。扉を開けようとしたのだが、女性がベーキウの手を止めた。
「一応、あのスケベ……いや、剣聖レイダーズは瞑想中です。無暗に扉を開けるなと言われております」
「けど、返事がありました」
「とはいえ、ちゃんと言葉を貰わないといけません」
女性はベーキウにこう言った後、扉を叩いた。
「剣聖レイダーズ。扉を開けてもよろしいでしょうか?」
「そうか。分かったよ」
「それはどういった意味ですか? 開けてもいいんですか?」
「そうか。分かったよ」
「あの、ちゃんと返事をしてください。瞑想中でも、返事をすることはできると思いますが」
「そうか。分かったよ」
「答えになってねェェェェェんだよクソエロジジイがァァァァァァァァァァ! そうか。分かったよ。だけじゃ扉を開けていいのか悪いのか、こっちにちゃんと伝わんねぇだろうがァァァァァァァァァァ!」
女性はブチ切れながら扉を蹴った。突然暴走した女性を見たベーキウたちは動揺したが、部屋の中を見てさらに動揺した。
「えええええ! 中に誰もいない!」
部屋の中を見たキトリは叫んだ。中にあったのは、影っぽく見えるレイダーズの形をした厚紙と、かわいいオウム。それと家具だけだった。
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