腹が減ったら戦も行動も何もできない
衝撃の事実が判明した。ジャオウの目的は実父である史上最低のクソエロジジイ、レイダーズをぶっ飛ばすこと。そして、ベーキウとジャオウが腹違いの兄弟であったこと。いろいろと大きな衝撃を受けたベーキウたちだったが、時間が経つにつれて我に戻った。
「はぁ……まさかこんな展開になるなんてな」
「ああ。思ってもいなかった……と言うか、こんなこと誰も考えていないぞ」
ベーキウとジャオウは頷きながらこう言った。二人が我に戻ったことを察したシアンは、町の中にある時計を見た。
「とりあえずお昼ご飯でも食べましょう。丁度近くにファミレスもあるし」
「さんせーい。私お腹ペコペコなんだよねー」
レリルは笑顔でファミレスに向かおうとしたが、アルムがレリルの羽を引っ張った。
「待ってください。財布がピンチです」
「大丈夫よ。あんたらの分もおごるから」
シアンのおごるという言葉を聞き、レリルはすぐにシアンの元に移動し、ありがとうと何度も言って土下座した。アルムは申し訳なさそうにシアンに近付いた。
「いいんですか? レリルさん、値段のことを気にせず高いステーキを頼む可能性がありますよ」
「私たちにはこれがある」
と言って、シアンは黒いカードを見せた。右下には、剣と盾の紋章が描かれていた。
「これは?」
「これは勇者カード! 私たち一族が使える超特別なクレジットカード! これがあれば、船も飛行機も乗り放題! そして、ファミレスでも頼み放題! ぶっちゃけ、お金の面は私たちの一族と知り合いの王族がどうにかしてくれるから問題ない!」
「い……いいのかな?」
「勇者シアンが大丈夫と言っているんだ。ここは言葉に甘えよう」
ジャオウは立ち上がり、ベーキウたちと一緒にファミレスへ向かった。
ファミレス内。ベーキウたちは席に座り、各々の注文を始めた。注文を終えた後、ジャオウが口を開いた。
「頼みがある。レイダーズについて知っている範囲で教えてくれないか?」
その言葉を聞いたシアンは水を飲む手を止め。コップを机の上に置いた。
「いいけど、あのこの世で一番生きていてはいけない存在のエロジジイのことを知らなかったの?」
「ああ。俺が物心ついた時にはもういなかったし、母も名前と剣聖であること以外は教えてくれなかったが……にしても、酷い言いようだな」
「話を聞けば、生きてはいけないと言われても仕方ないと思う」
クーアはため息を吐き、天井を見上げた。その後、シアンたちはレイダーズのことをジャオウたちに伝えた。話を聞くうち、レイダーズの性格とやらかしたことと異常さを理解し、ジャオウたちは嫌そうな顔になった。
「そんで、あのエロジジイは未成年とはいえ、エロい体つきのリプラ王女を……」
「いやいい。これ以上は語らないでくれ」
「こんなに酷い人がいるなんて、思ってもいませんでした」
「私もあのジジイと会う時、誘惑されないように気を付けないと」
と言って、レリルはオレンジジュースを飲んだ。この言葉を聞いた誰もが、心の中でお前は絶対に口臭のせいで口説かれないと思っていた。そんな中、注文したメニューが届いた。
「どもー。えーっと、バターコーンの炒め物は……」
「俺です」
小さな鉄板に盛られたバターコーンを見たジャオウは、手を上げて受け取った。店員は後ろにあるお盆を見て、少し息を吸って口を開いた。
「では一気に行きます。ほうれん草とソーセージの塩ゆで、ごろごろミニトマトのミニサラダ、野菜たっぷりのコンソメスープ、スモールサイズのマルゲリータピザ、ミニサイズのチキンステーキ、スモールサイズの梅茶漬けのお客様は?」
「ああ、全部俺だ」
ジャオウの返事を聞き、店員はジャオウの前に注文されたメニューを置いた。その後、店員は息切れしつつも、笑顔で失礼しますと言って去って行った。
「すまん。先に頂く」
「それはいいけど……少量とはいえこんなに食べれるの?」
不安そうにキトリが質問したが、ジャオウはバターコーンの炒め物をスプーンですくいながら答えた。
「大丈夫だ。少し腹が減っているから、いつも以上に食べられる気がする」
「ジャオウってこう見えて、結構食べるんだよね」
アルムはため息を吐きながらこう言った。
その後、ベーキウたちは食事をしながら今後のことについて話をしていた。そんな中、チャラい二人組が近付いてきた。
「へいへいへーい。お姉さん」
「そんな奴らよりも、俺っちと遊ばなーい?」
ナンパされている。そう思ったシアンは追い返そうとしたが、クーアとレリルは自分が誘惑されていると思い、笑みを作った。
「すみませーん。私たち、今お食事中なんですー」
「状況が状況なのです。お断りしまーす」
「違う違う。君たちじゃない」
チャラ男の一人はクーアとレリルを無視し、アルムの方に熱い視線を送った。
「君みたいなかわいい子は、もっと遊ばないとダメだよ」
「俺たちが相手になるぜ?」
女である自分たちよりも、男であるアルムの方が女っぽいと思われたクーアとレリルはイラっとし、無理矢理アルムを立たせた。
「おい! このダサグラサンちゃらんぽらん!」
「テメーらはどこに目ん玉付けてんだ! 〇玉のところに目玉が付いてんのか!」
「そんなテメーらに現実ってもんを教えてやるのじゃ!」
「いざ、御開帳!」
レリルの言葉に合わせ、クーアとレリルは同時にアルムのズボンとパンツを引き下ろした。アルムのご立派なものを見た二人組のチャラ男は、悲鳴を上げて逃げて行った。
「バーカバーカ! ちゃんと女を見る目を鍛えろやボーケ!」
「次会った時、体中の精気全て吸い込んでミイラにさせてやるからなー!」
「ちょっと! こんな場所でズボンとパンツを下ろさないでくださいよもう!」
アルムは顔を赤くし、周りに頭を下げながらズボンを戻した。キトリは顔を赤くして俯き、ジャオウは呆れてため息を吐き、ベーキウは涙を流すアルムに大変だなと声をかけていた。そんな中、シアンは何かを閃いていた。
「そうか……その手があったかも」
「何かあったの?」
キトリがこう聞くと、シアンは手を叩いてこう言った。
「今思ってたのよ! 確かにあのエロジジイはこの世に存在してはいけないわ! また被害者が出る!」
「確かにそうだが……」
突如立ち上がったシアンを見て、ジャオウは動揺していた。シアンはジャオウの方を見て、言葉を続けた。
「確かにあのジジイを殺してやりたい気分は分かる! だけど、あんたは良い奴! あんなジジイを殺して牢屋にぶち込まれるなんてばかばかしいわ!」
「シアンさん、とりあえず落ち着いてください。ここ、ファミレスですよ」
「アルムの言う通りだ。ちょっと落ち着け」
ベーキウとアルムがシアンを落ち着かせようとしたのだが、シアンは語るのを止めなかった。
「死と同等の恐怖をあのジジイに与える方法を、思いついたわ!」
「何それ?」
レリルが聞くと、シアンは自慢げに鼻を鳴らした。
「その方法は! 去勢よ! あのジジイのチ〇コを斬ればいいのよ! そうすれば、ファントムブレードも使うことになるし!」
シアンの言葉を聞き、クーアとレリルはなるほどと叫んだ。だが、ベーキウたちはあまりにもバカバカしいと思い、大きくため息を吐いた。
「確かに効果はありそうだが……」
「そんな方法でいいのか?」
「まだ問題はあるのに……」
「大声であんな言葉を言わないでほしいな……恥ずかしいです」
ベーキウたちが顔を真っ赤にする中、騒動を聞いた店長が近付いてこう言った。
「お客様。店内でチン……そのような言葉を大声で叫ばないでください」
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