このままハッピーエンドで終わると思っていたお前らの顔はお笑いだったぜ
リオマの告白により、モンモの心は晴れた。このおかげで、凍えるような寒さだったシュマルームも、暖かさを取り戻した。
「とりあえず、問題は解決したってことね」
シアンは久々の太陽を浴びる街の住人を見て、安堵の息を吐いた。町の人々は半裸になってはしゃぎまわり、中には全裸に近い恰好で踊り狂う人もいた。
「変な人もいる。警察に捕まると思うけど……」
「いや、あれを見るんだ」
ジャオウはアルムにある光景を見せた。それは、サングラスをかけた大勢の警察官が一台のパトカーに乗り、暴走走行をしていた。そのパトカーはバランスを崩して転倒したが、警察官たちはゴキブリのような動きでパトカーから抜け出し、変な踊りを始めた。
「久々の太陽のせいで、テンションが異常に上がっておかしくなってんのよ。あれはオーバーな気がするけど」
レリルは呆れてため息を吐いた。そんな中、アロハシャツを着た二人組の男性が近付いてきた。
「へーい、そこの美人さーん! 俺たちとフルーツジュースでも飲まないか?」
「一杯おごるぜ。何なら、お代わりも自由だ」
レリルは自分が久々にナンパされていると思い、二人組の男性に近付いた。
「あんたら目がいいわねー! こんな美人を選ぶなんて!」
「いや、俺らがナンパしたのはあんたじゃないんだけど」
「俺たちの狙いはこっち」
と言って、二人組の男性はアルムに近付いた。レリルが勘違いした光景を見たシアンとクーアは爆笑し、ベーキウとキトリは呆れてため息を吐いた。
「あーっひゃっひゃ! ド派手に勘違いしてやんのー!」
「自分の体系と年齢を考えるのじゃ! よーく見ろ、お前の腹にはそれなりのぜい肉があるんじゃ!」
「うっさいわロリババア! 見てなさい、あいつらに現実を見せつけてやるわ!」
ブチ切れたレリルはアルムの背後に近付き、無理矢理ズボンを引き下ろした。アルムのご立派なものを見た二人組の男性は、悲鳴を上げた。
「いやァァァァァァァァァァ! 俺たち、男をナンパしてたァァァァァァァァァァ!」
「あーん! 女の子っぽい見た目の子に、あれの大きさで負けたー!」
泣きながら去って行く二人組の男性を見て、レリルは大声で笑った。
「あーはっはっは! ざまー見なさい! テメーらの腐った目ん玉洗浄して、どっちが美人かもう一度確認せいやボケェ!」
「僕のズボンを下ろさないでくれってもう何度も言ったじゃないですか! 本当にもうやらないでください! 露出で前科を付けたくないですよ!」
アルムはズボンをはき直した後、レリルに向かって叫んだ。ジャオウは呆れて言葉を言えなかった。そんな中、ティンクルがやってきた。
「皆ー。モンモがお礼を渡したいから、お城で待ってるって言ってたベボー」
この言葉を聞き、レリルの目は黄金に輝いた。
「嘘! お礼って何? 金銀財宝? もしかしてこの国の国宝?」
「だとしても、俺は遠慮するがな。とにかく、招待されたから向かおう」
と言って、ジャオウはアルムとともにモンモたちがいる城に向かった。ベーキウたちも顔を見合わせ頷き、城へ向かった。
モンモとヒマワリが住んでいる城。そこにはすでに無数の兵士たちが整列しており、右手に槍を手にしていた。その光景を見たレリルは一気に緊張感を覚え、体が震えた。
「何これ? すごく緊張してきた」
「一応お城ですからね。何かあった時、すぐに動けるようにしているんです。レリルさん、変なことしないでくださいね」
アルムの言葉を聞き、レリルは少し動揺した。
「ちょっと、私がいつも異常行動をしているようなことを言わないでよ。周りが誤解するじゃない」
「さっきだって僕のズボンを下ろしたくせに」
「あのことをまだ根に持ってるの?」
「あんなことされたら誰だって根に持ちますよ!」
「と……とりあえず落ち着いたら」
キトリが声を荒げるアルムの肩を叩き、何とかなだめた。しばらくして、ベーキウたちはモンモとヒマワリが座る玉座の前に向かった。玉座の横には、リオマとソクーリが立っていた。
「皆様。疲れたところ、急にお呼びして申し訳ありません」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
「バトル回もあの氷の戦士だけじゃったし」
シアンとクーアは笑いながらこう言った。キトリはシアンとクーアに頭を下げるように促したが、ヒマワリは右手にある扇子を仰ぎながら笑い始めた。
「いいのよ、そんなに緊張しなくて。もう事件は解決したんだし。気を楽にしてよ」
「ヒマワリ、君は気を楽にしすぎだ」
ソクーリは呆れながらこう言った。ヒマワリは右足を大きく上に上げているため、右足の太ももが丸見えだった。スカートの下が気になったリオマはこっそり見ようとしたのだが、モンモやシアン、クーアとキトリとレリルの殺意が込められた眼差しを浴び、すぐに態勢を戻した。そのことに気付いていないヒマワリは後ろを振り向いた。
「おーい! あれ持ってきてー」
「分かりました」
後ろにいた兵士はそう言って、透明なケースに入った勾玉を二つ持ってきた。それを見たシアンは目を丸くした。
「これってもしかして、空色の勾玉!」
「ええそうよ。あなたたちがこれを目当てにこの国にきたってこと、把握してたのよ。空色の勾玉はいろんなところにあるから、私たちこの国の住人としてはありがたみはあまりないけど、こんなもんでよかったら貰ってってよ」
「ありがとうございます!」
「僕たちの分もあるのか……本当にありがとうございます」
シアンとアルムは頭を下げ、空色の勾玉を受け取った。これを見たクーアは、ガッツポーズをした。
「うおっしゃァァァァァァァァァァ! これでファントムブレードの素材が集まったのじゃ!」
「で、次はどこに行くの?」
「次は……」
シアンがキトリの問いに答えようとした時、ジャオウが口を開いた。
「この場で申し訳ないが、勇者パーティーに話がある」
ジャオウの言葉を聞き、ベーキウはあることを察して前に出た。
「次の言葉が予想できる。素材を賭けて、決闘しろって言いたいのか?」
「その通りだ」
この言葉を聞き、周りにはどよめきが走った。レリルは少し考えた後、はっとした表情になった。
「今思えば、あいつらが素材を集めたら、横取りすればよかったんじゃね?」
「そんなこと思わないでください。でもジャオウ、いつもなら正々堂々と集めるって言いそうだけど……」
「本当はそうしたい。だけど、俺はある目的のためにファントムブレードの素材を集めていたんだ。今、ファントムブレードを手にするチャンスなんだ。何が何でも、手にしたい」
「だけど、俺たちもお前らを止めるために必要なんだ」
ベーキウとジャオウの言葉が終わった後、ヒマワリは咳払いをした。
「ここで暴れるのは止めて頂戴。ボロボロになった後の掃除が大変だから」
「そっちのことを心配するんですね」
アルムは冷や汗をかきながらこう言ったが、ヒマワリは続けて口を開いた。
「この城には闘技場があります。たまーに武道会を開くんです。決闘場所は、そこを使ってください」
「使っていいんですか?」
「ええ、ご自由に」
ヒマワリの答えを聞いた後、ジャオウはベーキウの方を向いた。
「まだ冒険の疲れが残っている。二日後、完全に疲れが癒えた時に決闘を行いたい」
「ああ。もちろんだ。いつかお前との決着を付けたいとずっと思っていたからな。いい機会だ」
と、ベーキウは笑みを浮かべてこう答えた。その笑みに自信があふれていることを察したジャオウは、小さく笑った。
「では、二日後にまた会おう」
そう言って、アルムとレリルと一緒に去って行った。
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