ジャオウとの遭遇!
ラフトの町の近く、いかにも怪しそうなフードを羽織った二人組が、キトリが作った魔界への門があった場所の付近にいた。
「ここだよ、強い魔力を感じたのは」
と、小柄のフードの人物がこう言った。相方である仮面を付けた人物は、足元を見て答えた。
「そのようだな。魔界への門を通ってここへ帰ってくると、元の場所に戻ると言われている」
「じゃあ、魔界に行った人が戻ってくると……」
「ここに姿を現す」
仮面を付けた人物はそう言うと、背負っていた大剣を手にした。
「そいつらがいつ戻ってくるか分からない。もしかしたら、勇者と噂されている一行かもしれない。戦いになってもいいように構えておけよ、アルム」
「そうだね……ジャオウの邪魔をするなら、ここで片付けないと!」
その後、ジャオウとアルムはいつ、どのタイミングでも戦えるように、構えをとった。
一方魔界。城の外に出たベーキウたちは、キトリが門を作るのを待っていた。
「さて、すぐに戻ろう」
「ああ。あいつらの目的を調べないと」
「それと、ファントムブレードのこともね」
いつになく真面目なことを話すシアンたちだったが、シリアスな雰囲気の中、クーアが大きなあくびをした。その様子を知ったシアンは、呆れたようにこう言った。
「おばさん、マジな空気の中でそんなに大きなあくびをする? 空気読みなさいよ」
「空気は察しているわ。肩の力を入れすぎなんじゃよ。考えてみろ、わらわたちが元の世界に戻った直後、すぐにあいつらに襲われるって可能性もあるじゃろー?」
「そんなことあるわけないじゃん」
シアンはクーアをバカにするようにこう言ったが、キトリは少し真面目な顔になった。
「魔界への門を作る場合、かなり強い魔力を消費するの。ジャオウたちがそれを察して、門を作った場所にいるって可能性もあるわ」
キトリの言葉を聞き、シアンはそうだなと思った。そんな中、元の世界へ戻る門が現れた。
「急ごう、皆。あいつらがいるかもしれない」
「いたらいたで、戦うしかないな」
ベーキウは覚悟を決め、門の中に入ろうとした。だが、まだ扉は開いてなかったため、ベーキウは再び激しく扉に激突してしまった。
「またやった」
「ベーキウ、おっちょこちょいだなー。それか、慌てているのかー?」
シアンとクーアが心配する中、ベーキウは痛めた鼻を抑えていた。
ジャオウとアルムは、どのタイミングでベーキウたちが現れてもいいように、現れるまでずーっと同じ構えをとっていた。
「ねぇママー。あの不審者たち、何やってるのー?」
「分からないわ。あれを見たらバカになるから、見てはいけません」
と、通りすがりの親子がジャオウとアルムを見て、こう会話をしていた。構えをとって一時間経過しているが、門が現れる気配はない。
「ねぇ……いつまでこのポーズをとっていればいいのかな?」
「門を作った者が現れるまで……と、言いたいが……今日は戻ってこないのか?」
「だとしたら、今までの時間無駄だったね」
「そうだな。通りすがりの人に変な目で見られていたし……あぁ……恥ずかしい」
今日は現れないだろうと考えたジャオウとアルムは、構えを解いた。その瞬間、足元から魔界につながる門が現れ、その中からベーキウたちが現れた。
「んなっ!」
「このタイミングで!」
門が急に出てきて、ベーキウたちが戻ってきたことを察したジャオウとアルムは、急いで後ろを振り返った。ベーキウとシアンとクーアはジャオウを見て、誰だろうと思っていたが、キトリが闇で作られた刀を握ってこう言った。
「皆! こいつがジャオウとアルムよ!」
「まさか、本当に戻ってすぐに会えるとは思っていなかったな!」
ベーキウは素早く背中のクレイモアを手にし、ジャオウに斬りかかった。動揺していたジャオウだったが、すぐに我に戻って背中の大剣を手にし、ベーキウの攻撃を防いだ。
「グッ!」
「いい動きをする!」
攻撃を防がれたと判断したベーキウは、無理に追撃をしたら反撃されると思い、後ろに下がった。
「ジャオウ! 僕がサポートするよ!」
アルムは魔力を開放し、小さな闇の弾を発してベーキウに攻撃を仕掛けた。
「させない!」
キトリが前に出て、闇でできたバリアを張り、アルムが張った闇の弾を防御した。そのタイミングに合わせ、剣を持ったシアンがジャオウに斬りかかった。
「くっ! なかなかやる!」
ジャオウは大剣を振り、シアンの剣を吹き飛ばした。シアンは飛ばされた剣の方向を見ていたが、その隙にジャオウがシアンに攻撃を仕掛けた。
「バカ勇者! 狙われているぞ!」
シアンが狙われていることを把握したクーアは、右手に発した魔力を強く地面にぶつけた。その瞬間、足元の雑草が急に伸び、ジャオウの足元に絡まった。
「魔力を使って、雑草を操ったか!」
「エルフを見下すなよ若造! 魔力で植物を無理矢理伸ばし、相手の邪魔をすることも可能なのじゃー!」
と、クーアはどや顔でこう言った。その時、アルムが持っていたナイフで足元の雑草を刈った。自由になったジャオウは、横に移動したアルムの方を見てこう言った。
「すまん、また助かった」
「いいってことだよ。それよりも……あの人たちをどうにかすることを考えよう。かなり強い」
「あれが噂の勇者かもしれないな。魔王の娘もいるようだし」
この言葉を聞いたキトリは、ジャオウとアルムを睨んだ。
「私のことを知っているのね」
「お前は魔界では、かなりの有名人だからな」
「それじゃあ、俺のことは知らないってことだな」
と言って、ベーキウはジャオウに接近し、下からクレイモアを振り上げた。ベーキウの奇襲を察することができなかったジャオウは、ベーキウの一撃を受け、後ろに吹き飛んだ。
「ジャオウ!」
「お前の相手はこのわらわじゃ!」
クーアは魔力を開放し、巨大な火を伸ばしてアルムを掴んだ。
「うわぁ!」
「残念じゃが、お前らの旅はここでおしまいじゃ! さっさと魔界へ帰ってママのおっぱいでも飲んでいるがいい!」
「それ、悪役のセリフ」
声高々に笑いながら恐ろしいことを言ったクーアに対し、キトリは呆れながらこう言った。
ベーキウの攻撃を受けたジャオウは、地面に激突する寸前に着地し、すぐに立ち上がった。目の前には、剣を手に戻したシアンがいた。
「このままあんたを倒してやるわ、覚悟しなさい!」
「そうはいかない。俺は……目的を果たす!」
ジャオウは魔力を開放し、近くにいたシアンを吹き飛ばした。ジャオウの魔力が強いせいで、周りの木々や、雑草が吹き飛ばされ、宙に舞っていた。
「強い魔力ね、どれだけ鍛錬したの?」
「いろいろあってな」
「そのいろいろを教えてよ」
「そんな時間はない。勇者、俺の邪魔をするな。邪魔をしなければ、お前を斬らずに済む」
ジャオウはこう言ったが、シアンはジャオウを睨み、言葉を返した。
「なーに気取りながらかっこいいことを言ってんのよ? あんた、見た目は大人だけど脳内は中二で止まってるの? もしかしてあんた、中二病? いい歳の大人がまーだ中二病だなんて、恥ずかしいからとっとと直した方がいいわよー」
シアンの言葉を聞き、ジャオウは呆れてため息を吐いた。
「何を言っているのか理解できん。だが、早くお前を倒した方がよさそうだ!」
と言って、ジャオウはシアンに接近し、素早く大剣を振るった。耐えられないほどの重い斬撃がシアンを襲った。耐えられないと察したシアンは、魔力を開放してジャオウを吹き飛ばそうとした。だが、その前にジャオウが振るった大剣がシアンの目の前にあった。
「終わりだ、勇者。お前の冒険はここで終わりだ」
ジャオウがそう言った瞬間、ベーキウが上から現れ、ジャオウに一撃を与えた。
「ベーキウ! 助かったよォォォォォォォォォォ!」
助けにきたベーキウを見て、シアンは涙を流しながらベーキウに抱き着いた。
「ちょっと待てシアン。今の一撃はまぐれで当たったんだ」
「まぐれでもいいんだよォォォォォォォォォォ! 死ぬかと思った!」
シアンは泣き叫びながらこう言った。そんな中、ベーキウはジャオウがゆっくりと立ち上がる光景を見ていた。
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