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卑劣な奴にはマジの攻撃でお仕置きよ


 モンモが作ったかなり強い氷の戦士は最後の一人となった。その最後の一人、フロストはベーキウたちとの戦いで敗北した仲間の破片を吸収し、パワーアップしてしまった。そんな中、この状況を察して戻ってきたソクーリが合流した。


 ソクーリの顔を見たフロストは、モンモに作られた時の記憶を思い出していた。ベーキウたちがそれなりに強い戦士であること。そして、ソクーリは本気を出せばかなり強い戦士であることを。


「あなたはモンモ様の幼なじみの一人、ソクーリさんではありませんか」


「僕の名前を知っているんだな。お前みたいなやつに名前を覚えられるとは、有名になった証拠かな」


「いーや、どっちかっつったら、わらわたちの方が有名ではないのか?」


 クーアが話をはさむようにこう言ったが、キトリが邪魔をするなとジェスチャーした。ソクーリはクーアの存在を無視し、フロストに殴りかかった。ソクーリの右手の拳は、フロストの左頬に命中していた。


「あらら、痛いですねぇ。いきなり殴るのは卑怯ではありませんか?」


「ごちゃごちゃとうるさい奴だ。とにかくお前は敵だ。敵は倒す」


「へぇ、冷静沈着に見えますが、私と同じように情けはかけないようですねぇ。気に入りましたよ」


「気持ち悪いことを言うなよ」


 と言って、ソクーリは素早くしゃがんでフロストに足払いを放った。フロストはジャンプして足払いをかわしたのだが、ソクーリはフロストが地面に着地する瞬間を狙い、もう一周体を回して足払いを放った。


「んなっ!」


「この程度の攻撃をかわせないのか? それが、仲間の破片を吸い取ってパワーアップしたお前の力か?」


 地面に倒れたフロストを見下しながら、ソクーリはフロストの頭を踏みつけた。強く踏みつけられたため、フロストの頭にひびが入った。


「がぐあっ! こ……この野郎……」


「お。少しだけ本性を現したな」


 ソクーリは何かを察し、後ろに下がった。次の瞬間、フロストの周囲から激しい魔力が発した。その魔力を感じたジャオウは、体を震わせた。


「強い冷機だ。水の魔力を凍らせ、周囲にはなっているんだ」


「私たちが倒した奴らを吸収してこの力なのね。あいつ一人で倒せる?」


 レリルは心配そうにソクーリを見た。ベーキウはクレイモアを手にして駆け付けようとしたのだが、ソクーリは左手を前に出した。


「援護はいりません。この程度の外道、僕とティンクルでどうにかなります」


「どうにかって……」


「僕に任せるベボ!」


 と言って、ティンクルは前に出て口を大きく開け、フロストが放つ魔力を吸い込んだ。


「なっ! 私の魔力が!」


「ティンクルは何でも吸い込む食いしん坊。魔力も吸い取ることができる。たとえ、お前がどれだけ強い魔力を放っても、ティンクルが吸い込むぞ」


 これ以上魔力を放っても、空になるまでティンクルに吸い込まれる。そう察したフロストは魔力を抑え、ソクーリを睨んだ。


「実力行使はあまり好きではないんですが……この場合、仕方ありませんねェェェェェ!」


「発情期の猫のように叫んでないで、さっさとかかってこいよ」


 ソクーリは挑発するような仕草をし、フロストを睨んだ。フロストは叫びながらソクーリに接近し、素早くパンチとキックの攻撃を繰り返した。その動きを見たレリルは、驚きの声を上げた。


「あいつ、頭脳戦に特化しているような態度をしてたけど、格闘技もできるの? ちょっとやばくない?」


「いや、やばくないわ」


 シアンの声を聞き、レリルは目が点となった。シアンはため息を吐き、レリルに説明を始めた。


「戦いの経験があれば、あいつの動きがいかに素人なのか分かるわ。あいつの場合は、早く手足を動かし、敵に反撃の隙を与えないようにしているだけ。魔力も使っているだろうけど、体全体に魔力を流しているから、攻撃の主になる拳や足にあまり魔力が流れていない。そのせいで、攻撃が当たってもダメージが少ないの」


 説明を聞いたレリルは、なんとなく納得した。その時、フロストの左の拳がソクーリの右頬に命中した。


「ちょっと! あいつの攻撃が当たったんだけど!」


「よく見ろ、ソクーリにダメージはない」


 ジャオウの言葉を聞き、レリルは心配しながらソクーリの顔を見た。ソクーリは表情を変えず、ずっとフロストを睨んでいたのだ。


「ぐ……殴られたのに表情一つ変えないのか……」


「そんな拳で僕にダメージが入ったとでも思っているのか? だとしたらお前はバカだ。こんなやわな攻撃で、僕は倒れない」


 ソクーリはフロストの左腕を掴み、力を込めて握った。次の瞬間、フロストの左腕は粉々に砕けた。


「イイイイイイイイイイギャァァァァァ!」


 フロストは痛そうに左腕を抱え、その場に倒れて転げまわった。ティンクルはその場に落ちたフロストの左腕を手にし、ソクーリにこう聞いた。


「ねぇ、この左腕って氷だから、かき氷にして食べてもいい?」


「一度地面に落ちたから、洗って汚れを落とせよ」


「りょうかーい」


 フロストは口の中からかき氷機を取り出し、クーアに頼んで水の魔力を出し、それでフロストの左腕を洗った。


「お前、マジでそれを食べる気なのか?」


「うん。クーアさんもどう?」


「こんな寒い中でかき氷を食べる気にはならん」


「そう。じゃあ僕がぜーんぶ貰おっと」


 と言って、ティンクルは鼻歌を歌いながらかき氷を作り出した。フロストは左腕を抱えながら立ち上がり、ソクーリを睨んだ。


「ぐっ……この野郎……」


「下手な演技は止めろ。それじゃあ演技の賞は取れないな。氷が素材なら、魔力があるうちに再生できるんだろ?」


 この言葉を聞いたフロストは驚き、目を開けた。フロストは片腕を失ったチャンスを狙い、ソクーリが攻撃を仕掛けるものだろうと思った。その時に左腕を再生させてソクーリの隙を突き、反撃しようと考えたのだ。


「なぜ私の考えが……」


「なんとなく予想できた」


 ソクーリは魔力を開放し、右手に炎、左手に雷を発した。そしてその二つを一つに合わせ、巨大な渦を発生させた。それを見たフロストは悲鳴を上げながら後ろに下がり、走って逃げ始めた。


「逃げても無駄だ。僕の攻撃から逃れられる方法はない」


 逃げるフロストを見て、ソクーリはこう言った。その直後、渦から雷を纏った炎の竜が現れ、フロストに向かって飛んで行った。


「僕の必殺技、ライジングファイアードラゴン。子供のころに考えた名前だからちょっとダサいけど……威力はとんでもないぞ」


 ライジングファイアードラゴンは逃げるフロストを追いかけ、大きな口を開けてフロストを飲み込んだ。


「た……助けてくれェェェェェ!」


 飲み込まれたフロストは叫び声をあげた。それからライジングファイアードラゴンの中でフロストの悲鳴が聞こえたが、徐々に悲鳴は小さくなり、消えた。


「終わったな」


 ソクーリはそう言うと、ライジングファイアードラゴンを消した。飲み込まれたフロストの姿は、完全に消滅していた。




 氷の城。フロストたちが倒されたことを察したモンモは、頭を抱えた。


「強い戦士を作ってもダメだった……どうしよう。一人じゃどうしようもできないのに、誰かが助けても無駄なのに!」


「無駄じゃねーよ。一人で抱え込むなって、何度も言ったような気がするけど」


 扉の方から、リオマの声が聞こえた。モンモははっとした表情で扉の方を見ると、そこにはリオマが立っていた。


「安心しろ。他の連中はいない。俺一人だけだ」


「リオマ……近付かないで」


 モンモはこう言ったが、リオマはその言葉を無視し、モンモに向かって歩いて行った。


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