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そりゃーでかい奴を相手に長時間戦ってられないって


 モンモが作成した氷の戦士たちは、合体して巨大な氷の戦士になった。圧倒的なパワーでベーキウとジャオウを追い詰めたが、シアンたちが援護に入った。前に出て戦うソクーリは氷の剣を作り、氷の戦士に一閃を与えた。


 ソクーリが攻撃を決めた光景を見ていたモンモは、目をつぶってこう思っていた。


 やっぱりソクーリは強い。たとえ私が強くて大きな氷の戦士を作っても、難なく対処する。


 幼い頃からソクーリは、強くなるために鍛錬をしていた。成長した今でも鍛錬を続けており、その結果が今のようなとんでもない強さになった。だが、攻撃を終えたソクーリは地面に降り、大きく息を吐いた。


「参ったな、結構魔力を込めて攻撃したけど、倒れない」


 そう呟き、上空にいるシアンを見た。シアンはソクーリがこの一撃で氷の戦士を倒せ斬れなかったことを察し、魔力を開放して巨大な光の刃を作った。


「さっき言ったように、私が追い打ちを仕掛けるわ!」


 シアンは叫んだ後、勢いを付けて巨大な光の刃を氷の戦士に向かって振り下ろした。光の刃は削る音を発しながら、氷の戦士の体を削るように斬っていた。しばらくして、攻撃を終えて床の上に着地したシアンは魔力を抑え、光の刃を消した。それと同時に、真っ二つになった氷の戦士の巨体は左右に倒れた。


「うおっしゃー! 何とかあのデカブツを倒したわー!」


 戦いの様子を見ていたレリルは、左手を勢いよく上に上げて喜んだ。だが、クーアとキトリは浮かない顔をしていた。


「どうしたのよ、そんな顔しちゃって。デカブツを倒したんだから、喜びなさいよ」


「あれを見ろ」


 クーアはモンモの方を指差し、レリルにその方向を見るように促した。モンモの前には、無数の氷の戦士が新たに作り出されていたのだ。


「うっげェェェェェ! 苦労してデカブツを倒したのに!」


「ここは引いた方がいいです。今の僕たちじゃ、あの量の敵を倒すことはできません!」


 アルムの言葉を聞いたクーアは、反論しようとした。だが、キトリが素早く頷いた。


「キトリ! 雑魚がわらわら湧いて出たって、今のわらわたちなら秒殺じゃろうが!」


「先走らないでよおばさん。モンモ王女の魔力は強い。いくら私たちが氷の戦士を倒しても、向こうの魔力が尽きるまで氷の戦士は出てくるし、モンモ王女も攻撃を仕掛けてくるかもしれない」


「じゃが! わらわたちに間はまだ魔力があるじゃろうが!」


「相手は無尽蔵に近いレベルの魔力。こっちの魔力も強いとはいえ、限りがある。ベーキウとジャオウの回復でかなり魔力を使ったし、シアンとソクーリもデカブツを倒すために結構な魔力を使ったわ。これ以上戦ったら、全滅する」


「その子の言う通りだ。下がった方がいい」


 呆れた表情のリオマが、キトリの案に賛成した。その直後、シアンを背負ったソクーリが近付いた。


「これ以上戦うのは止めた方がいい。勇者シアンの魔力が尽きたようだ」


「ごめーん……張り切りすぎた」


 ソクーリに背負われているシアンは、申し訳なさそうに小声でこう言った。クーアは危機的状況であると認識し、戻る提案を受け入れた。


「ここは撤退するしかないの。とりあえず、これでも喰らっとけ!」


 と言って、クーアは火の魔力を氷の戦士の群れに向かって放った。前にいた氷の戦士が飛んできた火の魔力を斬ろうとしたが、斬る寸前に火の魔力は破裂し、周囲に煙を発した。


「砂煙……どさくさに紛れて逃げるのね」


 周囲に舞う煙を払いながら、モンモは呟いた。煙が晴れると、そこにはベーキウたちの姿がなかった。




 撤退したベーキウたちは、宿に戻って作戦会議を行っていた。


「また撤退することになるとは。あいてはかなりの強敵じゃ」


「あの戦いのように、氷の戦士が合体して襲ってきたら大変ですね」


「でかくなったら攻撃力が上がるなんて、本当にずるいわよ」


「ニンニクサキュバスと同意見じゃ」


 そう言って、クーアとレリルは同時に温かい紅茶をすすった。アルムはモンモをどう対処するか考えたが、アイデアはなかなか浮かばなかった。


「うーん。あの子自身は戦闘力がないけれど、無尽蔵の魔力を使って戦士を生み出すのが一番厄介だな……」


「そうね。どれだけ戦士を倒しても、また生み出される。雑魚だとしても、無限に出てくるってなると話が変わるわ」


 キトリはベッドの上で横になっているシアンを見ながらこう言った。宿に戻った後、体力が尽きたシアンはベッドで休むことになったのだ。ヒマワリとティンクルがシアンに近付き、声をかけた。


「シアンさん、体調はどうですか?」


「疲れで体がまだだるいけど、食欲はあるわ。何か食べ物を……」


 シアンは震える手を前に出しながら、ヒマワリに食事を懇願した。ヒマワリはシアンの腹から絶え間なく鳴り響く腹の音を聞き、すぐに食事の用意を始めた。そんな中、ティンクルが周囲を見回した。


「あれ? そう言えばあのお兄さんたちがいないベボ」


「外でトレーニング中だよ」


 と、暖炉の前でマシュマロを焼いているソクーリが答えた。ティンクルが外を見ると、雪が降っているというのに半裸で筋トレを行っているベーキウとジャオウの姿があった。


「あれじゃあ風邪になるベボ。無茶をしても、強くならないのに……」


「そのくらい無茶をしないと、勝てない相手だからな」


 リオマは背伸びをしながらそう言うと、部屋から出て行った。


「リオマー。どこ行くのー?」


「俺んちに戻るんだよ。今からお先に夜のお楽しみだ」


 ティンクルにそう答え、リオマは去って行った。返事を聞いたソクーリは、ため息を吐いて呟いた。


「兄さん、こんな時に部屋に閉じこもってお楽しみをするのか……こんな時にスケベなことをしなくてもいいのに……」


「え? あの坊主もスケベなのか?」


 と、クーアが鬼のような目をしながらこう言った。その目を見たソクーリは若干引いたが、咳払いをして答えた。


「ま……まぁそうだ。兄さんは子供のころからスケベで、よく女子着替え室を覗いたり、女湯を覗こうとスケベ仲間と一緒にバカをしてきたんだ」


「そうか……もし、あいつがバカなことをしたらぶっ殺してもいいか?」


「それは勘弁」


 ソクーリは額から流れる冷や汗を拭った後、焼いたマシュマロをクーアたちに渡した。その中で、ソクーリは小声でキトリにこう聞いた。


「何かあったのか?」


「この前、とんでもないスケベジジイと一緒に行動してたの。そいつのせいで、スケベな目にあったから、怒りでそのことを思い出したのね。私も被害を喰らったから、ちょっとイラっとしてるわ」


 と、闇のオーラを発しながらキトリが答えた。この光景を見ていたアルムとレリルは小声で会話を始めた。


「今は話しかけないほうがいいですね」


「あの勇者パーティーにエッチなことをする奴がこの世にいたなんてね……バカな命知らずがいるものね」


 そんな中、ヒマワリがアツアツのグラタンを持って部屋に戻ってきた。


「はーい。勇者さん、お食事の用意ができましたよー」


「グラタンか。寒い日にはうってつけの料理ね」


「では、お熱いうちに召し上がれ」


「はーい!」


 返事をしながら突如現れたティンクルが、ヒマワリが作ったグラタンを吸い込んでしまった。シアンは大声で叫び、ティンクルに近付いた。


「ちょっとォォォォォォォォォォ! それ、私のグラタンなんだけどォォォォォォォォォォ!」


「ゴメンベボ! おいしそうだったからつい……」


 謝るティンクルだったが、言葉の途中でティンクルの顔が赤くなった。シアンは何かあったかと思い、ティンクルの顔を見た。その直後。


「あっぢゃァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 あまりの熱さで、ティンクルは口にしていたグラタンをシアンの顔面に吹き出してしまった。多少食べられたとしても、グラタンはまだまだ熱を持っていた。


「アヂャヂャヂャァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 アツアツのグラタンが顔面に命中したシアンは、あまりの熱さでその場で悶絶した。その様子を見ていたクーアたちは、今後のことが不安になった。


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