モンモとの再戦
クーアはモンモを褒めていい気にさせて、何とかする作戦を思いつき、それを実行したがあっさり失敗した。で、結局戦う流れになってしまった。
「急所は避ける。止まってくれ!」
ベーキウはそう言いながら、モンモに接近してクレイモアを振り下ろした。だが、モンモの周囲で発している風が強すぎて、振り下ろしたクレイモアは途中で止まってしまった。
「風が強すぎる!」
「ごめんなさい、私から離れて!」
モンモは叫び、魔力を操ってベーキウを吹き飛ばした。シアンは吹き飛ばされたベーキウを受け止め、前にいるジャオウに向かって叫んだ。
「ごめん、あんたに任せるわ!」
「ああ、任された!」
ジャオウは大剣を横に振るって攻撃を仕掛けた。攻撃の際、ジャオウは魔力を使っていたため、ジャオウの大剣は風を切り裂きながらモンモに迫っていた。
「攻撃が……」
迫るジャオウの大剣の刃を見て、モンモは反射的に魔力を開放し、目の前に氷の壁を下から伸ばした。伸びた時に、氷の壁はジャオウの大剣に命中し、めり込んでしまった。
「しまった!」
ジャオウは大剣から手を放そうとしたのだが、その前に氷の壁は勢いよく上に伸びて行った。
「ぐ……すまん!」
「謝らなくてもいいわ。あとは何とかする!」
シアンは盾を前に出し、モンモが放つ魔力を防御しながらモンモに接近した。モンモはシアンを見て、苦しそうに声を上げた。
「近付かないでよ! あなたが勇者でも、私の苦しみを止めることはできないのよ!」
「だからと言って、苦しんでいる人を見捨てることはしないわ! だって私は勇者だから!」
シアンは言葉を返した後、無理矢理モンモに接近した。モンモは嫌そうな顔をし、鋭い氷柱をシアンに向かって放った。
「近付かないでェェェェェェェェェェ!」
迫る氷柱を見て、シアンは盾を使って防御しようとした。だが、その前に上から炎の槍が放たれ、シアンの目の前に刺さった。
「炎の槍の後ろにいてください。鋭い氷柱ですが、この槍の炎で勢いは落ちるはずです」
そう言いながら、ソクーリがシアンに近付いた。その姿を見たシアンは驚いた。
「あんたも戦うつもり?」
「もともとそのつもりだ。無駄話はこれで終わりにしましょう。僕があの二人に代わって前に出ます。光の魔力でも何でもいいので、モンモの動きを止めてください」
「おっと、俺たちをのけ者にするなよ」
「俺たちはまだ戦える」
そう言いながら、ベーキウとジャオウが近付いた。ソクーリはベーキウとジャオウを見て、ため息を吐いた。
「あなたたちは無茶をするのが多すぎる。僕一人では、カバーしきれませんよ?」
「自分のことは自分でどうにかする」
「心配しないでくれ」
「そうですか。では、行きましょう」
その後、ベーキウとジャオウとソクーリはモンモに向かって走って行った。
クーアとレリルはキトリとアルムに叱られていた。
「もう勘弁しとくれー。年下から説教を受けるのは嫌なんじゃー」
「黙りなさい。あなたの作戦が失敗したから、こんな大変なことになってんでしょうが」
キトリは鬼のような表情でクーアを睨んだ。その時の迫力が恐ろしかったため、クーアは悲鳴を上げてレリルを盾にした。
「ちょっと、私を盾にしないでよ!」
「レリルさんもレリルさんです。あんなことを言われても嬉しいって思う人はいませんよ!」
アルムはレリルを見ながらこう言った。説教を見ているヒマワリたちは、ひたすら呆れた表情をしていた。
「そろそろ戦ったら?」
「ソクーリが戦っているんだ。俺も行くぞ」
「勇者パーティーでも、上下関係はあるベボね」
と、ヒマワリたちはこう言った。そんな中、突如周囲に巨大な氷が現れ、鎧の戦士の形になった。
「最初の時に戦った奴らよりも、でっけーな」
「私たちを確実に追い出すため、本気を出したのよ」
キトリはリオマにこう言った後、説教を止めて闇の魔力で鎌を作った。
「行くわよ」
と言って、キトリは闇の鎌を手にして巨大な氷の戦士に向かって飛びあがった。
「あー! わらわも行くぞ!」
キトリに出遅れた形で、クーアも魔力を開放して巨大な氷の戦士と戦いを始めた。アルムはヒマワリとティンクルを見つけ、すぐに接近した。
「ここにいると戦いに巻き込まれます。僕と一緒に後ろに行きましょう!」
「ええ。でも、私たちは逃げていいの?」
「逃げてください。僕たちに力はありますが、それを守るために使えるかどうかは状況が判断するので」
アルムの言葉を聞き、ヒマワリはティンクルを抱いてアルムと一緒に後ろに下がった。だが、リオマだけはその場で立っていた。
「ちょっと! あんたも下がるわよ! 巻き込まれるって!」
レリルはリオマに近付いてこう言ったが、リオマは魔力を開放した。
「俺も戦う! モンモを救うのは俺だ!」
そう言って、リオマはモンモに向かって走り出した。レリルは呆れた後、急いでアルムたちの元へ向かった。
シアンはモンモが巨大な氷の戦士を出して戦いを始めたことを察し、周囲を見回した。すでに十体以上の巨大な氷の戦士が生まれており、シアンたちに向かって移動していたのだ。
「デカブツが大量に出てきたわね」
「俺がどうにかする。シアンはあの子をどうにかしてくれ」
モンモの攻撃を受け止めているベーキウはそう言って、近くにいる巨大な氷の戦士に向かってジャンプした。シアンは苦しそうに魔力を開放するモンモを見て、剣を手にした。
「女の子の相手は女の子がした方がいいわよね」
「俺の援護はいるか?」
そう言いながら、ジャオウが近付いた。シアンは巨大な氷の戦士と戦い始めたベーキウ、そしてモンモに接近しようとするリオマを見た。
「ジャオウはベーキウの援護をお願い。あの子のことは、リドマーオブラザーズと私でどうにかするわ」
「そうか。ライバルに向かって言うのはあれだが、無茶をするなよ」
「そっちもね」
シアンの言葉を聞いた後、ジャオウはベーキウが戦う別の巨大な氷の戦士に向かってジャンプした。シアンは走ってきたリオマの方を向き、モンモの攻撃を対処するソクーリを指差した。
「あんたの弟が頑張ってるわ。私たちも踏ん張るわよ」
「テメーに言われなくてもそうするつもりだっつーの!」
と言って、リオマはモンモに向かって再び走り出した。リオマの態度を見たシアンは呆れてため息を吐いた。
「かわいい女の子に向かってあんな態度はないじゃない。ま、いいか。今はモンモ王女をどうにかしないとね」
そう呟き、シアンはモンモの元へ向かった。
ベーキウは巨大な氷の戦士の首元に着地し、首元に向かってクレイモアを突き刺した。クレイモアの刃は巨大な氷の戦士の首元に深くめり込み、突き刺さった箇所からひび割れが発生した。
「これで倒れてくれ」
動きが鈍くなった巨大な氷の戦士を見ながら、ベーキウは小さく呟いた。その後、ベーキウは力を込めて巨大な氷の戦士の首元からクレイモアを引き抜くと、ひび割れが深くなり、そこから巨大な氷の戦士の体は砕け散った。完全に砕け散る前にベーキウは別の巨大な氷の戦士の首元に向かって高くジャンプし、飛び移っていた。この様子を見ていたジャオウは笑みを浮かべた。
「うまく戦えば、あの巨大な戦士を一撃で倒せるのか」
そう呟き、ジャオウはベーキウと同じ方法で巨大な氷の戦士の首元に攻撃を仕掛けた。ベーキウとジャオウの活躍を見たシアンは、この二人ならたとえ巨大な氷の戦士でも、苦戦することなく戦いに勝利するだろうと思い、安堵の息を吐いた。逆にモンモは、ベーキウとジャオウの本気の力を目の当たりにし、恐怖を感じた。
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