説得がいつもうまくいくと思うな
強すぎる魔力を抑えきれないせいで、他人との接触を拒絶するモンモを助けるためにベーキウたちは氷の城へ向かったが、モンモはベーキウたちを追い払うために氷の兵士を創った。だが、あっという間に倒された。ベーキウたちはモンモと遭遇したが、モンモは強い魔力を使ってベーキウたちに襲い掛かった。モンモの作った氷の剣の一撃を受けたベーキウとジャオウが倒れ、シアンとアルムが急いで治癒を行った。
「チッ、役に立たねぇ! 俺が何とかする!」
ベーキウとジャオウがやられたことを知ったリオマは舌打ちをし、自分がモンモをどうにかすると思い、モンモに近付こうとした。だが、突如大きな風が発生した。
「うわァァァァァ! 何じゃこの風は! 何故か知らんが、吸い込まれる!」
「あの子が操っているのよ! 強い魔力をうまく使って、風を発したのよ!」
クーアとレリルは叫び声を上げながら、周囲を見回した。風の発生源はモンモが創った大砲のようなモニュメントだった。リオマも大砲の存在を察し、吸い込まれることを知って急いでモンモに近付こうとした。
「モンモ! こんなところにいても問題は解決しねーよ!」
「ごめん……リオマ。私の力は私自身でどうにかしないといけないの。そうでもしないと、他の人を傷付けるから……」
と言って、モンモは伸ばされたリオマの手を払った。その後、リオマの体は宙に浮き、大砲の中に吸い込まれていった。ベーキウたちが大砲の中に入ったことを確認したモンモは、大砲を町の方に向かせた。
「ごめんなさい。こうでもしないと、一人になれないから。これで……私が恐ろしいって分かったよね? これ以上私に関わると、傷付くって分かってよね? だから……もう二度と関わらないで」
モンモはベーキウたちにそう言うと、大砲を発射した。ベーキウたちは悲鳴を上げながら町に向かって吹っ飛んだ。
ベーキウたちは町外れに落下し、そのまま雪坂を転がり落ち、全員雪だるまになって町に帰ってきた。宿の主人に助けられたベーキウたちは宿の中に入り、暖炉の前で座っていた。
「うーん。あれほど強い魔力を持っているとは、わらわも予想しなかったのー。ブアーックショイ!」
クーアはくしゃみをしたはずみで、手にしていたコップをシアンに向かってぶちまけた。あっつあつのスープが体中にかかったシアンは、悲鳴を上げながら転げまわった。
「何すんのよおばさん!」
「しゃーないじゃろうが! くしゃみなんていつ、どのタイミングでするか分からんじゃろーが!」
「抑えることぐらいしなさいよバカチン!」
「わざとじゃないっつーのに、そこまで言うか?」
その後、シアンとクーアはいつものように喧嘩を始めてしまった。ベーキウとジャオウの治療をしていたアルムはその手を止め、呆れて口を開いた。
「喧嘩は止めてください。今しなくてはいけないのは、どうやってモンモ王女を説得するかです」
「勇者の力でも、モンモを止めることができなかったか……これは難しい」
そう言って、ソクーリはスープを飲んだ。ティンクルはスープが入った大きな鍋を両手でつかみ、上に持ち上げてスープを流し込むように飲み始めた。
「ぷはー。おいしいベボ! でもさ、何か方法はないの? 今のモンモに何を言っても聞いてくれないと思うベボ」
「わらわにいい案がある」
シアンと取っ組み合いの喧嘩をしているクーアが、笑みを浮かべてこう言った。ベーキウとキトリはしょうもない作戦だろうと思い、心の中でため息を吐いた。
氷の城の中。再び一人ぼっちになったモンモは、自分の魔力を抑えようとしていたのだが、強すぎる魔力を抑え、コントロールすることができなかった。
また、失敗した。
心の中でそう呟き、荒ぶる魔力で出来上がった汚い氷の塊を粉砕した。ため息を吐く中、再びベーキウたちが氷の城の中に入ったことを察した。
「また……」
モンモは小さく呟き、城の中に入ってきたベーキウたちを睨んだ。攻撃しようとしたモンモだったが、シアンが笑いながらこう言った。
「まぁまぁ落ち着いてください。とにかく落ち着いて」
人懐っこい笑みを浮かべ、シアンはモンモに近付いた。シアンの顔を見たモンモは驚いて立ち尽くした。
「あんたは凄いよ。自分で自分の魔力をどうにかしようって考えているなんてな」
と、ベーキウは作り慣れない笑顔でこう言った。キトリはその言葉に合わせ、何度も頷いていた。
「トレーニングをするのは素晴らしいことだ。ああ。本当に素晴らしいことだ」
と、ジャオウが固い笑顔をし、固い口調でこう言った。仮面のせいで笑顔は分からないが。慣れない演技をするベーキウとジャオウを見て、アルムはクーアの思いついた作戦のことを思い出していた。
クーアが思いついた対モンモ用の作戦。それは褒めまくり大作戦である。人は褒められたら嬉しくなるし、いい気になる。たとえネガティブなモンモでも、褒められ続ければいい気になるだろうとクーアは考えたのだ。だが、こんな安易な作戦が上手くいくかどうかアルムは不安だったのだ。
「あなたは素晴らしい。あなたは素晴らしい!」
と、キトリはただ素晴らしいの言葉を連呼していた。こんな褒め慣れていない面子で褒めると言っても、この作戦が通用しないとアルムは思い、ため息を吐いた。そんな中、クーアが笑いながらモンモに近付いた。
「あなたは凄いのじゃ! ええ。強い魔力を抑えるためにずーっと一人で努力してきたんですからねぇ! アッヒャッヒャッヒャ!」
笑いつつ、クーアはモンモの肩を何度も叩いた。レリルもモンモに近付き、体を見回した。
「へぇ、あんた結構いい体つきしてるじゃない。エロい服を着たらほとんどの野郎があそこをビンビンになっちゃうわ。男にモテたかったら、私のアドバイスを聞いた方がいいわ!」
「ほう! その点はわらわも同じ考えじゃ! こんな寒いところで過ごしても、ぼっちではなーんにも解決せんぞ! 町に戻って、エロ野郎たちを相手にすれば、話を聞いてくれるぞ!」
「そうそう! あー、でも気を付けて。中には話を聞くふりして、あんたの豊満なおっぱいをガン見する変態土スケベ野郎もいるから」
「わらわたちも付いておるぞ。エロ野郎がいたら、八つ裂きにしてやるからのー!」
好き勝手にそう言って、クーアとレリルは笑い始めた。この光景を見て、アルムは察した。作戦は大失敗だと。
「変なことを言わないで! 何を言っているかちんぷんかんぷん! とにかく、私から離れてェェェェェェェェェェ!」
モンモは叫び声を上げながら、強い風を周囲に発した。風で吹き飛ばされたクーアとレリルは氷の壁に激突し、めり込んだ。
「ぶっはぁ! どうして褒めて褒めて褒めまくったのに、あんなことをするのじゃ?」
「あの言葉のどこに褒める要素があったんですか?」
「いやー、エロい体つきって言って喜ぶかと思ったんだけどねー」
「そんなこと言われて喜ぶ人はいませんよ! あーもう、モンモ王女が臨戦態勢になっちゃったじゃないですか!」
アルムはクーアとレリルを氷の壁から引っ張り出し、文句を言った。ベーキウとジャオウはため息を吐きつつ、武器を構えた。
「作戦は失敗だな。で、次はどうする?」
「もう一度、実力でどうにかするしかない」
「だな。ちょっと心苦しいが、無理矢理にでもモンモ王女を町に連れ戻すぞ!」
ベーキウの言葉を聞いた後、シアンは笑みを浮かべて剣を構えた。
「やっぱりこれが一番! 実力でどうにかするってのが、性に合っているわ!」
その後、ベーキウたちはモンモに向かって走り出した。ソクーリは呆れてため息を吐きつつ、ベーキウたちの後を走って追いかけた。
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