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ネットの情報はうんぬんかんぬんいうけど、最近はメディアの方の情報も胡散臭い


 残るファントムブレードの素材はあと一つ、空色の勾玉だけとなった。次の旅の舞台、シェマルームへ向かう船の中、シアンはベーキウとベーキウを口説こうとバカをするクーア、そしてバカを落ち着かせようとするキトリを見て、ため息を吐いた。クーアはため息を吐くシアンの顔を見て、キトリの方を向いた。


「最近、シアンの様子がおかしいのー。便秘か?」


「そんなわけないでしょ。私たちより倍以上の歳を取っているくせに分からないの?」


「うげぇ、久しぶりにお前から罵倒を受けると、結構心に響くの」


 腹を抑えながらうめき声をあげるクーアを無視し、キトリはベーキウの方を見た。


「ベーキウ、あと少しでこの旅も終わるわ」


「ああ……だからシアンは元気がないのか」


 ベーキウは察した。バカみたいに騒がしい旅だが、終わるとなると寂しくなると。そう思ったのだが、シアンはため息を吐いてこう言った。


「あーあ、旅の終わりにベーキウに告白しようかなー。だけど、この関係も結構いいのよねー」


「くだらない」


 そう言って、キトリはベーキウの膝の上に座った。いきなり膝の上に座られたため、ベーキウは顔を赤くしたのだが、それに構わずキトリはベーキウに抱き着いた。


「もうしばらく、甘えさせて」


「させるかボケナスがァァァァァァァァァァ!」


 クーアが魔力を開放し、キトリに襲い掛かった。だが、モリモリマッチョマンな船乗りがクーアのうなじを殴り、気絶させた。


「お客様、この人をどうしますか?」


「海に投げておいてー」


「イエッサー!」


 その後、モリモリマッチョマンな船乗りは、シアンの言われた通り気を失ったクーアを海へ投げ捨てた。騒がしいと思いつつ、シアンはベーキウに近付き、膝の上に座っているキトリをどかして自分がベーキウの膝の上に座った。キトリはシアンの顔を掴み、闇の炎を発した。


「たまにはあなたにも攻撃してもいいわよね?」


「ごめん。顔を焼かれるのはちょっとあれだわ、あれ」


 と言って、シアンはベーキウの膝から降りた。そんな中、悲鳴を上げながらクーアが部屋に入ってきた。


「ぶえっくしょい! ぶェェェェェっくしょい!」


「風邪ひいた? バカとアホは風邪ひかないって迷信だったのかしらー?」


「これだけ寒いと、バカでもアホでもあんぽんたんでも風邪をひくわ!」


「寒い?」


 話を聞いたシアンは、不審に思った。シェマルームは温暖で、冬でも雪が降らない地域なのだ。


「おかしいわね。今の季節だと、寒くはな……」


 外に飛び出たシアンは、景色を見て絶句した。今の季節はそれなりに温かいのだ。だが、空からは雪が降っている。


「何これ? 何がどうなってるのよ?」


 降るはずもない雪を見て、シアンは思わず呟いた。




 船から降りたベーキウたちだったが、急いで服屋に向かった。


「すみません、防寒具をください!」


 歯を鳴らしながらベーキウはこう言ったが、店員は申し訳なさそうに頭を下げた。


「申し訳ございません。防寒具類は売り切れになっております」


「やっぱり、考えることは皆同じなのね」


 キトリは防寒具を買えず、肩を落としている人々を見てこう言った。クーアはショックを受けた顔をし、シアンにこう言った。


「おい、どうするのじゃ? こんな寒いと、年寄りのわらわは変な病気になってしまう!」


「ババア扱いするなって言っているくせに、こういう時だけババアになるんだから」


「仕方ないじゃろー? いくら魔力が強くても、寒さにはかなわなん」


「はいはい」


 シアンはクーアの叫びを聞き流し、店員に近付いた。


「私、勇者のシアンだけど、この島で何が起きているか教えてほしいわ」


 シアンの質問を聞いた店員は、目をつぶって語り始めた。


「少し前のこと、本当に少し前です。いつもほどほど暑いこの地域でしたが、なんのフラグもなくいきなり雪が降ってきました。いきなりです。最初、子供たちは見たこともない雪を見て浮かれていました。私たちは異常気象と言って騒いでいましたが」


「フラグもなく雪が降るか……絶対にありえないわ。何か、きっかけとなる事件があるはずよ。ねぇ、大きな事件ってあった?」


「実は……」


 会話中、来客を知らせるベルが鳴り響いた。誰だろうと思いつつ、ベーキウたちは扉の方を見た。そこには、防寒具を着た二人組がいた。


「あー! 防寒具! 羨ましい、ちょっと貸してください!」


 シアンは二人組のうちの背が高い方に近付き、防寒具を無理矢理脱がそうとした。ベーキウとキトリは止めさせるようにシアンを止めたが、寒さの我慢に耐えられなかったシアンは暴走を続けた。そして、防寒具である頭巾を奪い取った。


「ちょっと! 頭巾を返しなさいよ! 寒さのせいでお肌が荒れるじゃないの!」


 聞いたことのある声を聞き、ベーキウたちは一瞬動きを止めた。声の主もベーキウたちの顔を見て動きを止めた。その声の主は、レリルだったからだ。


「げェェェェェ! ニンニクサキュバス! あんたが使っていた頭巾なんて臭そうだからいらないわ! 返す!」


「臭そうって、女の子に向かって臭そうって言葉は言っちゃダメなのよ! あんたも一応女の子だから、その辺理解していると思うけど!」


「お前、自分が女の子って言われる年齢だと思っておるのかー? お前みたいな二十歳超えた女が女の子って言うもんじゃないぞー!」


 クーアはレリルに向かって指を刺し、爆笑しながらこう言ったが、この発言は大きなブーメランだと、ベーキウとキトリは心の中で呟いた。そんな中、アルムが防寒具の頭巾を外しながらベーキウとキトリに近付いた。


「あなたたち、どうしてここに?」


「空色の勾玉を手にするためだ。それより、ジャオウはどうしたんだ? 姿が見えないけど」


 ベーキウの質問を聞いたアルムは、うつむいた。何かあったと察したキトリは、アルムに近付いた。


「もしかして、仲間割れ?」


「違うわよ。あいつ、迷子になったのよ」


 と、ため息を吐きながらレリルがこう言った。その言葉を聞いたシアンは胡散臭そうな顔をし、アルムはため息を吐いた。


「レリルさん、ジャオウは周りに方向音痴なこと、あまり知られたくないんですよ」


「そういうことは教えた方がいいって。ジャオウは嫌がるけど、私は言うわよ」


「ジャオウが迷子? え? どこかに行っちゃったってわけ?」


 キトリの質問を聞き、アルムは仕方ないと思いつつ、答えた。


「実はジャオウが迷子になったんです。僕たちは先に空色の勾玉を手にするためにこの大陸に向かいました」


「ここは温暖がいいから、楽に旅を進められるだろうと思ったんだけど……」


 レリルはそう言って、外を見た。この予想外の雪で、ジャオウたちは素材集めがとん挫したとベーキウは思った。


「この雪で断念したんだな」


「そうです。ですが、ジャオウは何が何でも空色の勾玉を見つけるため、一人でどこかに向かいました」


「どこかに向かった? 情報を手にしているの?」


「手にしてないわ」


 レリルの言葉の後、間が空いた。ベーキウは、ジャオウが勘で動いている。そのせいでアルムとレリルに多大な迷惑をかけたのだろうと思った。


「とりあえず……どうする? 探しに行くか?」


 ベーキウはシアンにこう尋ねた。シアンは少し考え、ため息を吐いてこう言った。


「探しましょう。宿命のライバルが迷子で遭難して最期を迎えるなんて展開、王道のバトル小説であっちゃいけない展開よ」


「そうじゃのう。まぁ、あいつにはいろいろと借りがあるから、助けねば」


「そうね。と言うか、方向音痴で勝手に進むって……」


 シアンたちの声を聞き、アルムは安堵した表情になった。


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