この若きカップルに祝福を
ベーキウたちがリプラを助け、ツバキの想いでリプラの呪いが解けた。そんでもって、ツバキとリプラが婚約した。嬉しいことが一気に続いたため、国王のテンションはアゲアゲに上がっていた。
「ういっひィィィィィ! 今日はパーリーじゃ! 明日も明後日も一か月後もパーリーじゃ! 皆の物! しばらくはドンドコドンドコ踊り続けろーい!」
「オッケー! マスター!」
王の間では、国王が部屋の中央にあるディスコ台の上に立ち、ゲーミングカラーの線不を振り回しながら踊っていた。部下は鳴り響くディスコの音楽に合わせて適当に踊り、踊り狂う彼らを天井にぶら下がっているミラーボールが照らしていた。
そんな中、ベーキウたちは別室で寝ていた。
「まだ踊ってるよ」
「こっちは戦いの疲れがまだ完全に癒えてないってのに……」
ベーキウは上半身を起こし、その横で眠っていたシアンはあくびをしながらベーキウに抱き着いた。ベーキウは横のシアンを見て、口を開いた。
「おい、いつの間に俺のベッドの中に?」
この問いに対し、シアンはすぐに返事をすることができなかった。それもそのはず。ベーキウが寝息を立てて眠っている中、シアンはこっそりとベッドの中に潜り込んだのだから。
「き……企業秘密です」
「企業秘密じゃない。ベッドが用意されているから、そっちで寝てくれ」
「いーやーだー! たまにはベーキウと一緒に寝たいー! リプラは助けた後からツバキと一緒のベッドで眠ってるって聞いたのよ! 時折変な音が聞こえるみたいだけど」
「最後の情報はいらん。とにかく早く自分のベッドに移動してくれよ。この状況をクーアかキトリが見たら厄介なことになる」
「もうなっとるのじゃ!」
天井からクーアの声が聞こえた。その直後、天井にいたクーアがベーキウのベッドに向かって落下し、ベーキウの布団の中に潜り込んだ。
「ふぃー、これでやーっと眠れるわい。レイダーズのクソジジイがいつセクハラしてくるか分からないから、ずーっと起きてたのじゃ」
「そんなに眠りたいなら、永遠に眠らせてやろうかァァァァァ!」
シアンはクーアの背後に忍び寄り、キャラメルクラッチを仕掛けた。大技を受けたクーアは悲鳴を上げているが、ベーキウは呆れてバカバカしい光景を見ていた。そんな中、キトリが部屋に入ってきた。
「うるさい。静かにして、眠れないから」
この言葉を聞いたクーアは、寝ぼけまなこのキトリに近付いた。
「お前はよくぐっすり眠れるのー。いつ、あのエロジジイがセクハラするか分かっとるのか?」
「あのエロジジイならどこかに行ったわよ」
キトリの返事を聞き、ベーキウたちは驚いた。
「あれ? いつの間に?」
「皆が部屋に戻った時。あのエロジジイ、王女にセクハラできないと知ってすぐにどこかに行ったわ。私、その時外に出て風に当たっていたから、遭遇してしまったの」
「そ……そうなのか」
ベーキウはそう答えつつ、心の中でこう思った。実の息子と別れるんだから、少しぐらい挨拶しないのかと。そう思った直後、キトリはベーキウに手紙を渡した。
「これ、エロジジイから」
「父さんから?」
ベーキウは手紙を受け取り、中を見た。そこには、こう書かれていた。
息子、ベーキウよ。
まさかさー、こんな状況で実の息子に会うとは思わんかったわー。まー、少しの間だけど実の息子と旅ができて楽しかったぞ。
で、お前はどの子と結婚するつもりか? シアンちゃんもクーアちゃんもキトリちゃんもしっかりとしたお嫁さんになるよ。選ばれなかった方は、ワシが貰うから。とりあえず、結婚したり子供ができたときには呼んでちょーだい。時間はかかると思うけど、見に行くから。
シアンちゃんは料理の腕は多少あれだけど、器量があるし、性格もいいからいいお嫁さんになると思うよ。おっぱいはないけれど、そこはまぁ気にしなければ……
ベーキウはイラっとし、レイダーズの手紙を地面に叩きつけた。シアンたちは叩きつけられた手紙の中身を読んで、近くにあったハサミでズタズタに斬り、捨てた。
「あんのエロジジイ! 別れの言葉じゃなくて、ただのセクハラの言葉じゃないの!」
「何じゃあの手紙、大半がわらわたちの体のことしか書いておらんじゃないか!」
「最悪! しかも、選ばれなかった方はワシが貰うって、そんなの絶対に嫌だ! あんなジジイに抱かれたくない!」
シアンたちは嫌そうにこう言った。ベーキウはレイダーズの顔を思い出し、殺意を放った。
翌日、まだ国王たちは踊っていたため、ベーキウたちの旅立ちの見送りはツバキとリプラがすることになった。リプラがシアンに自然のエメラルドを渡す中、クーアが口を開いた。
「国王様はまだ踊っているのか。どれだけ嬉しいのかはよーくわかったけど、休まないのか?」
「今の父は、すごくテンションが上がっています。上がったら一か月はあの状態です」
「ス〇ッチ2が当選したこの作者みたいだ」
クーアが余計なことを言ったため、キトリがクーアの頭を叩いた。
「そんなこと言っちゃダメ。この時点で持っていない人もたくさんいるんだから」
「ちょっとー、変な話をするのは止めなさーい」
シアンの言葉を聞き、クーアとキトリは黙った。ツバキは咳ばらいをし、ベーキウに近付いた。
「ベーキウさん、そして皆さん。あなたたちのおかげでリプラを助けることができました」
「いやいや、リプラ王女の呪いを解いたのは、まぎれもなくあなたよ。あなたがいなかったら、王女を完全に助けられなかった」
シアンは笑みを浮かべてこう言った。ツバキは少し照れたが、リプラはツバキの右腕を抱いた。
「これからは、悪い呪いに負けない国を創っていきます」
「あなたならできるわ。頑張って」
シアンはそう言って、リプラと握手をした。そんな中、ツバキがベーキウにこう聞いた。
「で、次はどこに行くんですか?」
「次はシェマルームって国に向かう。そこにある空色の勾玉を手にすれば、ファントムブレードの素材を集め終える」
「シェマルーム? 確かあの国は……」
ツバキが言いかけた中、ベーキウたちが旅立つことを知った国王たちが、慌てながらベーキウたちの元にやってきた。
「皆様! 遅れて申し訳ない! 踊りが楽しかったので、ついつい時間を忘れて踊り狂っていました!」
「一日休まず踊り狂うのもあれだと思うけど……まぁいいわ」
その後、シアンは国王や兵士たちに挨拶をし、国王ももう一度頭を下げ、ベーキウたちにありがとうと告げた。そして、彼らに見送られながらベーキウたちは旅立った。歩く中、ベーキウはツバキが言いかけたある言葉が気になっていた。
「ねぇ、どうかしたの?」
キトリがベーキウにこう聞いた。ベーキウはキトリの方を振り返り、口を開いた。
「ああ。ツバキが次の目的地、シェマルームについて何か知ってそうな口ぶりだったんだけど、王様たちが入ってきたから聞きそびれたんだ。あの国で、一体何が起きているのか気になって」
「心配するなベーキウ!」
話に割り込んできたクーアが、ない胸を叩いてこう言った。
「何が起きてもわらわの魔力ですぐに解決してくれるわ! これまでの冒険で、わらわがどれだけ活躍したか分かっておるだろう?」
と言ったクーアだったが、ベーキウは今までのクーアの活躍を思い出した。確かに強敵相手に戦い、勝利を掴んできたクーアだが、それ以上にシアンと何度も何度も何度も何度も大喧嘩を繰り広げたことしか記憶になかった。
「あれ? いつもシアンと喧嘩をしているイメージしかない」
「うそーん!」
予想外の返事を聞き、クーアはショックを受けていた。シアンは騒がしいと思いつつ、徐々に近づいてくる旅の終わりに切なさを感じていた。
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