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目覚めのキス


 ヒーデブスはエスタクラフトの守護者的な存在、ジャーマネの力によって消滅した。これでヒーデブスを倒したことには違いないのだが、ベーキウたちにはもう一つの目的がある。捕まったリプラを助け、呪いを解くことである。


 ベーキウがリプラに近付こうとしたのだが、突如現れた結界によってベーキウの手を防いだ。


「こりゃー厄介な結界だな。これじゃあ手も足も出ない」


「剣でも壊せないわね。ヒーデブスが苦戦するわけだわ」


 シアンは剣を振るって結界を攻撃していた。シアンが何度も剣で結界を叩いても、結界にはひび一つどころか傷さえつかなかった。クーアは魔力で火を発したのだが、結界は火を弾いていた。


「魔力の攻撃も無意味。キトリの闇もこれじゃー意味ないのー」


「それじゃあどうするのよ?」


「わらわに聞かれても。完全にお手上げじゃ」


 クーアは両手を上に上げ、手段がないことをアピールした。ツバキは結界に手を触れ、何としてもリプラに近付こうとした。それを見たレイダーズはため息を吐いた。


「ツバキ、皆があれこれしても意味なかったんじゃから、お前さんが何をしても……」


 無意味だと思ったレイダーズは止めろと言おうとしたが、結界の一部が門のように開いた。それを見たツバキは困惑しつつも、リプラを助けるために中に入った。


「ツバキ、俺たちも行くぞ!」


 後に続こうとしたベーキウたちだったが、ツバキが結界の中に入った直後に結界に空いた空間が閉じられた。


「あ、クソ! ワシらは入れさせてくれないのか! 一人くらい入れたっていいじゃろうが! せめて、ワシだけは入れさせろ!」


 文句を言うレイダーズだったが、このエロジジイの考えることをベーキウたちはすでに見抜いており、文句を言うレイダーズを殴り飛ばし、その場に座った。


「今はツバキがリプラの呪いを解くことに賭けるしかできなさそうね」


「ああ」


「若いもんに任せるしかないの」


「できるって信じましょう」


 ベーキウたちはそう言って、ツバキが奇跡を起こすことを祈った。




 ツバキは一人、ベッドの上で眠っているリプラに近付いた。


「リプラ」


 声をかけてみたのだが、リプラは反応しなかった。心配したツバキはリプラに近付き、脈を確認した。脈は動いており、かすかだがリプラが呼吸をする音も聞こえた。生きている。そう思ったツバキは安堵の息を吐いた。その後、ツバキはリプラのベッドの横に座り、気配に気付いて起きないか試してみた。だが、それでもリプラは起きなかった。


「リプラ、どうしたら君は起きるんだ?」


 ツバキはリプラの顔を見て、こう言った。その時、小さな妖精がリプラの胸元から現れた。


「うわァァァァァ! 何? いつの間に羽虫が!」


「失礼ね! だーれが羽虫よ! あんな小汚い生き物と私を一緒にしないで! 私は守護の呪いの代理人、リップよ!」


 リップはこう言うと、呆れたようにため息を吐いた。


「守りの呪いにかけられた子の知り合い? ふーん、まだガキっぽい顔だけど、大人になればイケメンになりそうね」


「あの、僕の顔の評価はどうでもいいので、どうすればリプラが目を覚ますか教えてください」


 ツバキの質問を聞いたリップは、いじわるそうな顔をした。


「それじゃあ逆に質問するわ。あなたはどんな行為でこの子の呪いが解除されると考えてるの?」


 逆に質問をされたが、話を聞いていたクーアが立ち上がって吠えた。


「おい! いきなり現れた蚊トンボ!」


「誰が蚊トンボよ!」


「うるさい蚊トンボもどき! 質問に質問を返すなと国語の先生に言われなかったのかァーッ? いい加減とっとと教えやがれッ! 早く教えねーと炎の魔力でテメーを焼きトンボにしちまうぞッ!」


 感情が高ぶったクーアの叫び声を聞きながら、キトリはクーアの足元に落ちているマンガを見た。


「ビョビョの奇妙な冒険? あんた、こんな状況でマンガを見たってわけ? それで、話し方に影響されたと」


 キトリは呆れてため息を吐いた。リップはクーアに対し、文章で表してはいけない中指のあのジェスチャーをしながら挑発したが、ツバキは意を決してこう言った。


「なんとなく、分かった気がします」


「さて、その答えは?」


「キス……ですよね?」


 ツバキの答えを聞いたリップは、嬉しそうな顔で何度も首を振った。


「その通りその通り大正解! この守りの呪いは想い人と確実にチューができると言われる呪いでもあるの! 別の大陸では眠り姫の呪いって言われているけど、その理由が何だかロマンチックだからって!」


「何じゃ、セ(ピー!)じゃないのか」


 とんでもないことを発言しやがったレイダーズに対し、ベーキウたちは一斉にクソジジイに襲い掛かった。ベーキウたちがエロジジイに猛攻撃を仕掛ける中、ツバキはリプラの顔に自身の顔を近付けた。


「嫌われるかもしれない。だけど、リプラを目覚めさせるには……」


「頑張れ少年。君の勇気で想い人は救われる」


 リップの声を聞き、ツバキはリプラとの思い出を思い出した。もう一度、リプラと話をしたい、散歩をしたい。そう思いながら、ツバキは意を決して眠るリプラにキスをした。その瞬間、リプラの周りにあった結界が決壊した。


「ん? あ! 結界が決壊した!」


「え? うわ、ロマンティックなシーンを見逃した!」


「このクソジジイのせいじゃ!」


「あっふん! クーアちゃん、股を蹴らないで!」


 シアンたちが騒ぐ中、ベーキウは散っていく結界の中にいるツバキとリプラを見続けていた。結界が完全に散った後、リプラが目を覚ました。


「リプラ!」


 目を覚ましたリプラを見て、ツバキは今にも泣きそうな声を上げた。リプラはツバキの顔を見て、笑みを浮かべた。


「ありがとうツバキ。あなたが助けてくれるって信じてたわ」


「僕一人じゃないよ。ベーキウさんたちがいたから」


 ツバキの言葉を聞いたリプラは、ベーキウたちの方を向いて笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。勇者シアン、そしてその仲間たち。ツバキと一緒に私を助けにきてくれて、本当にありがとうございます」


「いえいえ、そうでもないのじゃー」


 と言いながら、レイダーズが笑みを浮かべながらリプラに近付こうとした。ツバキはレイダーズを睨みながら、リプラの前に立った。


「リプラには指一本触らせません!」


「どうしたのツバキ? このおっさん、何者?」


 リプラの言葉を聞き、レイダーズは咳払いをしてこう言った。


「申し遅れました。私は剣聖レイダーズ・シュバルティーグ。あなたがエロいって話をいやいや、あなたがブサイクに攫われたことを知って乳を揉みに違う違う、助けにきました」


「そうですか。ですが、言葉の一部一部に欲が見えていますよ」


 と言って、リプラはツバキを強く抱きしめた。ツバキは顔が赤くなったが、レイダーズは悲鳴を上げた。


「うわァァァァァ! 羨ましい、羨ましいなぁ! でっかいおっぱいとむちむちな太ももをその身で味わえるなんて!」


「あなたみたいなスケベに抱かれたくありません。抱かれるなら、子供のころからずーっと知っているツバキがいいです!」


「ちょっと、恥ずかしいことを言わないでよ!」


「いいじゃない。私にキスをしたってことは、分かっているわよ。それに、想い人のキスで呪いが解けるって言ってたでしょ? 察しなさいな」


 リプラの言葉を聞いたツバキは、冷静になってこの言葉の意味を考えた。そして、その言葉の意味を理解したツバキの顔は熟したトマトのように赤くなった。


「そ……そそそそそそそそそれって……えとそのえとそのその……」


「いいからもう一回キスでもせんか」


 呆れたリップはツバキの後頭部に飛び蹴りをした。その衝撃で、ツバキはリプラに再びキスをする形となった。


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