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どんなに強い奴でも弱点はある


 バニシングアーマーと言う中二臭くて変な名前の鎧を装備したヒーデブス。ばかばかしいと思いつつも、シアンはヒーデブスに攻撃を仕掛けるため、接近した。だが、ヒーデブスは素早く腕を動かしてシアンの攻撃を防いだ。


「なっ!」


 シアンは動揺した。ヒーデブスの腕、ガントレットが異様に硬かったからだ。攻撃を塞がれたシアンは後ろに下がり、ヒーデブスの様子を見た。


「フッフッフ。このバニシングアーマーを甘く見ては困るな。どんなに質のいい剣でも、僕様のバニシングアーマーを斬り壊すことは不可能!」


「いーや。不可能じゃないぞー」


 レイダーズの声が聞こえた。その声を聞いたヒーデブスは一瞬だけ動揺したが、姿を現したレイダーズを見て笑みを浮かべた。


「剣聖。貴様のような救いようがなく、どうしようもないスケベジジイが僕様のバニシングアーマーを壊せるって?」


「まーの」


 レイダーズが答えと、素早く剣を振るった。ヒーデブスは無意味なことをやるなと思ったが、ガントレットの一部が欠けていた。


「な……」


「ほーれ。これ見なさい」


 レイダーズは落ちていたガントレットの破片を手にし、ヒーデブスに見せびらかした。


「確かに硬かったが、コツを掴めばどんなに硬い物質でもスパッと斬れる」


 勝ったかのようにレイダーズは微笑んだ。ヒーデブスは怒りの形相になり、レイダーズに殴りかかった。だが、ヒーデブスは左手で攻撃を受け止めた。


「そーんな攻撃がワシに通用すると思ってんのか?」


「このクソジジイが!」


 ヒーデブスは怒り狂い、レイダーズに向かって何度も拳を放った。レイダーズは攻撃を防御する中、ベーキウたちの方を見て笑みを浮かべた。ベーキウはその笑みを見て、攻撃しろと合図を送っているのだと察した。


「今のうちに攻撃するぞ」


「うん」


 ベーキウたちはこっそりヒーデブスの背後に移動し、攻撃を仕掛けた。シアンは魔力を開放し、巨大な光のビームを発した。光のビームはヒーデブスを包み、ついでにレイダーズも包んだ。


「ギャァァァァァァァァァァ!」


「ちょっと、ワシも巻き込んでるけどォォォォォォォォォォ!」


 レイダーズの悲鳴を無視し、クーアは無数の風の刃を発した。


「切れ味抜群の風の刃! これで貴様のヘンテコな名前の鎧をズタズタにしてやるのじゃァァァァァ!」


 風の刃はヒーデブスのバニシングアーマーを傷付け、レイダーズの服を切り裂いた。


「グウッ! 僕様のバニシングアーマーが!」


「いやーん! ワシがエッチな姿になるー!」


「ジジイのエロい姿など見たくないわ」


 キトリは闇の魔力を開放し、地面から無数の闇の槍を発して攻撃した。ヒーデブスは槍を受けたが、レイダーズは体を蛇のように動かして攻撃をかわしていた。


「がァァァァァァァァァァ!」


「キトリちゃーん! いや、キトリ様! ワシも巻き込んでる! ワシも巻き込んでるから! つーか、わざとやっとるじゃろ!」


「チッ、ばれたか」


 キトリは後ろを向き、舌打ちをした。そんな中、武器を持ったベーキウとツバキがヒーデブスに接近した。


「二人でやるつもりか?」


「そのつもりだ!」


 ベーキウはそう言ってクレイモアを振り下ろし、その動きに合わせるかのようにツバキは剣を横に振るった。二人の同時攻撃はヒーデブスに命中したが、ダメージを与えられなかった。


「やはりダメージを与えられないか……」


「だけど、バニシングアーマー……でしたっけ? その鎧に傷を付けました!」


 ツバキは深い傷を負ったバニシングアーマーを見て、ベーキウにこう言った。レイダーズはボロボロになりながらも、ヒーデブスに接近して剣を振り下ろした。


「いいか二人とも? どんだけ固い鎧も何度も何度も攻撃すれば、いずれぶっ壊れるのじゃ」


「そうだな。あまり、あんたの言うことを聞きたくねーが」


 ベーキウはため息を吐いてこう言った。ヒーデブスは怒りの声を上げながら、両手に魔力を溜めた。


「この野郎! よくも僕様に傷を! 許さんぞ、ぶっ殺してやる!」


 叫びながら、ヒーデブスは魔力のビームを発した。危機だと察したベーキウとツバキはレイダーズを盾にし、攻撃を防いだ。


「いィィィィィギャァァァァァァァァァァ! ベーキウ、実の父親を盾にするって酷くなァァァァァァァァァァい?」


「うるせぇエロジジイ! このまま突っ込むぞ!」


「え? 突っ込むって? まさかワシの尻に?」


「変な意味を考えないでください!」


 ベーキウとツバキはバカなことを言ったレイダーズに向かって叫んだ後、そのままレイダーズを使ってヒーデブスが放つビームを押し返した。


「何だと! 剣聖を盾にして僕様のビームを押し返すつもりだと? そんな非人道的なことをして、許されると……」


「うるせぇ! テメェも知ってんだろ? このクソジジイがどんなクソジジイか?」


「この人に関しては、こっちもいろいろとうっぷんが溜まっているんです!」


「ベーキウとツバキの言う通りよ!」


 シアンたちがベーキウとツバキの横に立ち、魔力を発してレイダーズを押した。


「ギャァァァァァァァァァァ! ちょっと待って! 止めて、タンマタンマ! 前からも後ろからも大変なことになってんだけど!」


「黙れ! ちったーわらわたちの役に立たんかエロジジイ!」


 クーアは叫びながらレイダーズの汚い尻を蹴った。その勢いは強く、あっという間にレイダーズはヒーデブスに迫った。


「おわァァァァァァァァァァ!」


「なっ……うわァァァァァァァァァァ!」


 レイダーズとヒーデブスがぶつかり合い、周囲に激しい砂煙が舞った。




「おえ! おえっ! うげぇ!」


 ヒーデブスは嗚咽しながら目を覚ました。そして気付いた、レイダーズのあれの部分が自分の顔の上にあると。


「おっげェェェェェェェェェェ! シリアスなバトルの真っただ中で下ネタをやるか普通!」


 なんてことを叫びながら、ヒーデブスはレイダーズを横に蹴り倒し、シアンたちを睨んだ。


「クソッたれが! よくも僕様にあんなことを!」


「あれはまぐれよ。運がなかったわね、あんた」


「運であんなことがあってたまるか! クソッたれ、絶対にぶっ殺してやる!」


 ヒーデブスは剣を作って装備し、シアンに斬りかかった。だが、レイダーズがヒーデブスの前に現れ、剣を使ってヒーデブスの攻撃を受け止めた。


「オイ若造。ワシの大事な愛棒を汚したうえ、シアンちゃんに傷を付けるじゃと? そんな無礼なことをさせてたまるか」


「一番無礼なのはあんただと思うけど」


 ベーキウの言葉を聞き流し、レイダーズはヒーデブスに攻撃を仕掛けた。ヒーデブスは剣を手にしているものの、レイダーズの攻撃を対処できなかった。


「うっ! グッ、クソ!」


「魔力を使った技は達人級じゃが、剣の腕はへっぽこじゃのう。ツバキの方が格上じゃ」


「うるさい!」


 ヒーデブスは大声で叫び、剣を振るった。だが、レイダーズはジャンプしてヒーデブスの攻撃をかわした。


「そんな見え見えな攻撃、ワシに通用せんぞ!」


 ヒーデブスの背後に着地したレイダーズは、剣でヒーデブスの背後を突いた。その瞬間、バニシングアーマーが粉々に砕け散った。


「な……ああ……」


「お前さん自慢のなんちゃらアーマーが粉々になっちゃったのー。じゃがま、どんな鎧も攻撃を耐え続ければ壊れるもんじゃ」


「それがバニシングアーマーの弱点か。なら僕様からも一つ言っておこう。お前にも弱点はあると!」


 ヒーデブスはこう言うと、少し離れた所に美女人形を作った。それを見たベーキウたちは、次がどんな展開になるのか、すぐに予想でき、呆れた表情になっていた。


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