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卑劣なる男との戦い


 ヒーデブスが生み出した戦士人形の相手をレイダーズに押し付けて、ベーキウたちはヒーデブスの元へ向かい、総攻撃を仕掛けた。ヒーデブスは攻撃を受ける寸前にバリアを張って攻撃を防御し、ベーキウたちの隙を伺っていた。


 まずいな。あいつら武器を下ろさない。僕様がまだぴんぴんしてるってこと、分かっているみたいだな。


 と、ヒーデブスは心の中でこう思った。しばらくして、ヒーデブスはバリアを張ったまま後ろに下がり、遠くからベーキウたちを奇襲しようと考えた。その考えを見抜いたクーアは魔力を開放し、強風を発した。そのせいで、攻撃の衝撃で発生した煙が消滅し、煙で隠れていたヒーデブスの姿がはっきりと分かった。


「んなっ!」


「見つけたぞ! あいつ、何か企んでいやがったか!」


 ベーキウはクレイモアを構えて走り出し、ヒーデブスに接近した。あっという間に近づいたベーキウを見て、ヒーデブスは魔力を開放した。何かあると察したベーキウはすぐに防御の構えをとったが、その前にヒーデブスの前に紋章のようなものが現れた。


「なっ、何だこれは!」


「特別に教えてやる! 戦士人形をヒントに創り出した僕様の必殺技、ナイトパンチだ!」


 ヒーデブスがこう言った直後、紋章から巨大な戦士の腕が現れ、その拳がベーキウの腹に命中した。攻撃を受けたベーキウは後ろにいるシアンたちの元へ吹き飛ばされ、地面に倒れる際に激しく咳き込んだ。


「ベーキウ、大丈夫?」


「グッ……骨が何本か折れたかも」


「あのブス野郎! よくもベーキウを!」


 怒りに任せてクーアは魔力を開放し、巨大な炎の矢を作って投げた。ヒーデブスは紋章を自身の足元に移動させ、巨大な炎の矢が命中する寸前にしたからナイトパンチを発し、巨大な炎の矢を折って消滅させた。


「意外とやるわね。あいつ、本気を出したらやばい奴だった」


「そんなこと言ってる場合じゃないわよ。同時に攻撃を仕掛けるわよ!」


「そうね、任せたわよ、キトリ!」


 シアンとキトリは同時に走り出し、左右からヒーデブスに迫った。ヒーデブスに接近したキトリは笑みを浮かべるヒーデブスを見て、違和感を覚えた。


「左右から同時に攻撃すれば、どちらかの攻撃が当たるかと思ったか? 甘いなぁ!」


 ヒーデブスがこう言った瞬間、シアンとキトリの目の前に紋章が現れた。それを見たシアンとキトリはぎょっとして防御を取ろうとしたのだが、その前にナイトパンチが発し、シアンとキトリに命中した。攻撃を受けて宙を舞うシアンとクーアを見て、ヒーデブスは笑みを浮かべて新たに紋章を発した。


「これで終わりだと思うなよ」


 そう言って、ヒーデブスは新たに発した紋章から戦士の足を発し、宙にいるシアンとキトリに攻撃を仕掛けた。


「もう一つの僕様の必殺技、ナイトキック。これは結構痛いぞ」


 攻撃を受けたシアンとキトリは悲鳴を上げる間もなく、天井に激突した。その様子を見ていたクーアは氷で作られた鋭い剣を手にし、ヒーデブスに接近した。


「こぉんのブス野郎! お前はこの剣で、もーっと醜い顔にしてやるのじゃ!」


「やれるもんならやってみろよ! 無理だと思うけどねぇ!」


 怒りの形相で迫るクーアを見て、ヒーデブスは笑いながらこう言った。その言葉を聞いたクーアの怒りはさらに強くなり、感情に任せて氷の剣を力強く振るった。


「ダメですクーアさん! そんな太刀筋では人を斬れません!」


 ベーキウの治療をしていたツバキが叫んだが、その言葉はクーアの耳に届かなかった。しばらくして、氷の剣の刃が折れる音が響いた。クーアは折れた氷の剣を見て、驚いた表情をしていた。


「ど……どうして」


「エルフは長寿でそれなりに知識がある種族と僕様は効いた。お前はその真逆だ。知性も理性もないんだな、お前は」


 ヒーデブスは足元から強固な壁を作り、クーアの斬撃を防御していたのだ。怒りのせいで目の前が見えていなかったクーアはそのことに気付かず、氷の剣を振り下ろしてしまったのだ。


「さて、終わりにするか」


 と言って、ヒーデブスは巨大な紋章を発し、その中から巨大な戦士の手を出現させ、クーアの体を掴んだ。捕まったことを察したクーアは、すぐに魔力を開放して離れようとしたのだが、巨大な戦士の手は離れることはなく、壊れることもなかった。


「クソッ! 放せ! 放さんか!」


「誰が敵の言うことを聞くかよ! やはり僕様は強い! 勇者パーティーを全滅させてしまったのだからなァァァァァ!」


 ヒーデブスは高笑いをしながら、巨大な戦士の手で捕らえたクーアを地面に強く押し当てた。




 戦士人形の群れと戦っているレイダーズは、ベーキウたちの方を見てため息を吐いていた。


「うーん。結構強かったの、あいつ。ベーキウたちにはちと荷が重すぎたかなー」


 と言って、レイダーズは攻撃を仕掛けた戦士人形に蹴りを放ち、剣で戦士人形の体を突き刺した。


「さっさとこいつら倒して援護に行きたいけど、それまでもつかなー、難しいかのー」


 そう呟いていると、別の一体の戦士人形がレイダーズに攻撃を仕掛けた。この攻撃もレイダーズは難なくかわし、反撃で剣を振るって一閃で倒した。塵となった戦士人形を見た後、レイダーズはあくびをしながら呟いた。


「あの坊主が自分の才能を早く察すればいいんじゃが」




 ベーキウたちが倒され、ツバキは動揺しながらヒーデブスを見た。ツバキの視線に気付いたヒーデブスはツバキの顔を見て、笑みを浮かべた。


「お前はなんだ? ちっぽけで弱っちい剣士がこの僕様に何の用だ?」


 気持ち悪い笑みを浮かべ、ヒーデブスはツバキを見下すようにこう言いながら、歩いて近付いた。この顔を見たツバキは恐怖を感じたが、勇気を振り絞って剣を抜き、叫んだ。


「僕はツバキ! リプラの幼なじみだ! お前みたいな酷い顔のおっさんに、リプラは渡さない!」


「だーれが酷い顔のおっさんだァァァァァ! この雑魚野郎が! お前だけは絶対にぶっ殺してやる!」


 叫び声をあげたヒーデブスは、ツバキを殺すために強い魔力を開放した。この時のヒーデブスは、リプラを捕らえた時の言葉を思い出していた。


「助けて! 助けてツバキ!」


 リプラはヒーデブスに捕まった時、ツバキの名を叫んでいたのだ。この時ヒーデブスは察した。リプラはツバキのことを誰よりも信頼していると。


「死ね! クソガキィィィィィ!」


 大声を発し、ヒーデブスは無数の巨大な戦士の腕を発した。それを見た瞬間、ツバキは終わったと思った。だが、ベーキウが上半身を起こしていた。


「ツバキ。最初から無理だと思うな。人間、本当にやばい時になったら力が発揮するもんだ」


 ベーキウの言葉を聞き、ツバキは戦わないとと思い、迫る戦士の腕を見た。


 一方、この攻撃でツバキが死んだと確信したヒーデブスは、大声で笑っていた。


「アーッヒャッヒャッヒャ! これでリプラ王女は僕様のものだ! 僕様のことをバカにしたから、みーんな死んじゃうんだよ!」


 笑い声をあげ、ヒーデブスは攻撃を続けていた。しばらくしてヒーデブスは攻撃を止め、砂煙の中を見ようとした。哀れな肢体となったツバキを見るためだ。


「さーてと。あの非常識なクソガキはぐちゃぐちゃになって死んだかなー? 早くあいつの死体を見たいなーっと」


 そう言っていたヒーデブスだったが、煙を裂くように現れた剣を見て驚き、一瞬だけ無防備になってしまった。その剣はヒーデブスの体に向かって勢いよく振り下ろされた。


「ギャァァァァァァァァァァ!」


 斬撃を受けたヒーデブスは、痛みに耐えきれずその場に倒れ、転がった。煙の中からは、剣を手にして見下すようにヒーデブスを睨むツバキの姿があった。


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