人に責任を押し付けるのはどうかと思います
古の力、エスタクラフトを使ってベーキウたちと戦うヒーデブス。だが、どんな手を使ってもベーキウたちを追い詰めることができなかった。時間稼ぎ、そしてベーキウたちの体力と魔力を削るためにヒーデブスは無数の戦士人形を召喚し、ベーキウたちと戦わせることにした。
ベーキウはクレイモアを振り回しつつ、まだ出てくる戦士人形を見てため息を吐いた。
「これだけ戦士人形を出してもすぐにやられるのに。あいつは何を考えているんだ?」
「ワシらを消耗させるつもりじゃよ」
レイダーズは戦士人形を斬り倒しつつ、ベーキウに近付いてこう言った。ベーキウは奥にいるヒーデブスを見ようとしたが、レイダーズは言葉を続けた。
「あのブス、わざと雑魚を大量に召喚させてワシらと戦わせ、疲れ切ったところを攻撃するつもりじゃ。外道が考えそうなことだ」
「私も同じ考えよ」
シアンが戦士人形を斬り倒し、ベーキウに近付いた。シアンの姿を見たレイダーズは指を動かしながらシアンに近付いたが、シアンはジャンプして背後にいるレイダーズに回転蹴りを放って蹴り倒した。
「このエロジジイと同じことを考えるのは嫌だけど、まぁ仕方ないわ。あいつの思惑通りにさせたくないけど、これだけ雑魚がいたらあいつの思い通りになるわ」
「そうじゃのう。じゃが、雑魚は雑魚。皆で協力して……」
「だから、雑魚の掃除はあんたに任せるわ」
シアンはレイダーズに向かってそう言った後、ベーキウの方を見た。
「ベーキウ。あとはこいつに任せてヒーデブスの元へ行くわよ。あんなブサイク、さっさと倒すのよ!」
「ああ。つーことで任せたぞ、父さん」
ベーキウがこう言った後、話を聞いていたクーアたちがベーキウとシアンに近付き、ヒーデブスに向かって高くジャンプした。
「ああん! 待って、放置しないで! ワシ、放置プレイは嫌いなんじゃ!」
子供のように鳴きながらレイダーズはこう言ったが、誰もこの言葉を聞いてはいなかった。レイダーズがしょんぼりする中、戦士人形に一人がレイダーズに向かって剣を振り下ろした。レイダーズはこの攻撃をかわし、ため息を吐いた。
「あーあ、仕方ないのー」
と言って、近くにいた戦士人形の頭に向かってストレートパンチを放った。攻撃を受けた戦士人形の頭は吹き飛び、壁に当たって砕け散った。
「シアンちゃんたちと別行動になったの、お前たちのせいじゃからな。ワシ、ちょっと怒っているから、どうなっても知らんぞ!」
レイダーズはゆっくりと立ち上がり、大きく息を吐いた。
ヒーデブスは自分の元に向かって飛んでくるベーキウたちを見て、笑みを浮かべていた。
「剣聖はいらないのか?」
「私たちだけで十分」
シアンはそう言って、ヒーデブスに斬りかかった。ヒーデブスはバリアを張ってシアンの攻撃を防御したが、左右からベーキウとツバキの斬撃が襲い掛かった。
「ふん!」
ベーキウとツバキの同時攻撃に対し、ヒーデブスは大声を発して衝撃波を放った。ベーキウたちが吹き飛ばされた直後、魔力を開放していたクーアとキトリの合体攻撃がヒーデブスを襲った。
「これは……」
ヒーデブスに迫るのは、雷と闇が混じり合った大きな弾丸。ヒーデブスはバリアを発して防御したが、雷と闇の弾丸は勢いよく回転しているため、ドリルで固い物体を削るかのようにヒーデブスのバリアを削った。
「クソッ!」
バリアによる防御は無理だと判断したヒーデブスは、バリアを展開したまま後ろに下がった。だが、この行動を予測していたツバキがヒーデブスに接近し、剣を振り下ろした。
「てやァァァァァァァァァァ!」
ツバキ渾身の一閃は、ヒーデブスの腹に命中した。攻撃を受けて後ろに下がった直後、ヒーデブスは自分が展開したバリアが破壊する音を耳にした。
「なっ……あ……」
背後を見て、雷と闇の弾丸が迫っていることを察した。ヒーデブスは察したのだが、防御することも回避することもできなかった。弾丸はヒーデブスに命中し、大きな音を鳴らしながら破裂した。
「やった?」
シアンはキトリに近付いてこう言った。キトリは砂煙を見て、目をつぶって首を横に振った。まだヒーデブスは倒れていない。そう察したシアンは剣を構え、砂煙を見つめた。
レイダーズは一人で大量の戦士人形と戦っていた。戦士人形の群れは一斉にレイダーズに攻撃を仕掛けていたのだが、レイダーズは難なく攻撃をかわしていた。
「ほいほーい。ワシはここじゃぞーい」
レイダーズは周囲をちょこまかと動きながらこう言った。戦士人形はレイダーズを追いかけ、接近しては剣を振るったが、攻撃は当たらなかった。それどころか、放った攻撃は仲間である戦士人形に命中していた。
「同士討ちか? 見ている側としたら面白いから、もっとやれー!」
と、レイダーズは笑いながらこう言った。戦士人形は怒ったような素振りをし、レイダーズに向かって走り出した。だが、展開は変わらなかった。同士討ちするため、レイダーズが手を下さなくても戦士人形の数は徐々に減っていた。
ヒーデブスもバカじゃのー。これだけ大量の戦士人形を作ったら、同士討ちする可能性があるってのに。
そう思いながら、レイダーズは攻撃をかわしていた。
これがレイダーズの狙いだった。ヒーデブスは部屋の大きさのことを考えず、大量に戦士人形を創り出した。大量に戦士人形を出したのはいいが、彼らが動くスペース、そして安全に攻撃を行えるスペースのことをヒーデブスは考えていなかった。
「ほれほれ、ワシはここじゃぞ」
レイダーズは手を鳴らして挑発しながら、戦士人形に向かってこう言った。戦士人形の一部は剣を振り上げ、レイダーズに向かって振り下ろした。だが、その攻撃はレイダーズに当たることはなく、近くにいた仲間の後頭部に命中した。仲間に攻撃したと察した戦士人形はショックを受けたような素振りをしたが、攻撃を受けた仲間は倒れ、消滅した。
「ギャハハハハハ! バカじゃのー。剣を振り下ろすなら、ちゃんと敵を見ろっての!」
笑いながらレイダーズはこう言った。戦士人形は一斉に剣を持ち、レイダーズに向かって走り出した。レイダーズは笑みを浮かべ、剣を手にした。
「さてと、ガラクタたちに経験の差っつーのを教えておいてやるか。何かの役には……立たないか」
そう言った後、レイダーズは近付いてきた剣士人形の二体に向かって勢い良く剣を振るった。攻撃を受けた二体の戦士人形は膝から崩れるように倒れ、そのまま消えた。
「敵を倒すときは一撃で。一撃でダメなら次の攻撃で仕留めろ。ま、そんな状況はたまーにしかないが」
レイダーズは偉そうにこう言ったが、剣士人形はその言葉を聞かず、レイダーズに向かって攻撃を仕掛けた。レイダーズは攻撃をかわし、攻撃を仕掛けた戦士人形に近付いた。
「敵を倒すために剣を振り回すのは三流がやることじゃ。無駄のある動きは、無駄に体力を使うからの」
と言って、レイダーズは二度剣を振るって戦士人形の両足を斬り落とし、三度目の斬撃で戦士人形の体を一刀両断した。
「さて、次は誰が相手じゃ? このセクシーなジジイの遊び相手になってもらおうか」
レイダーズは相手を挑発するような仕草をしながらこう言った。戦士人形たちは剣を構え、一斉にレイダーズに襲い掛かった。
「ワシが言ったことを忘れたか? 同士討ちの危険があるぞ! ま、ポンコツが人の言葉を聞いて、意味を理解するまでの知識はないか」
レイダーズは呆れてため息を吐きつつ、迫ってくる戦士人形を次々と斬り倒していった。
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