外道とご対面
武器を構えたベーキウたちは、ヒーデブスがいると思われる部屋の扉を蹴り飛ばし、部屋の中に入った。ツバキの目に入ったのは、部屋の奥にあるベッドの上で眠っているリプラと、彼女を守るかのように展開するバリアだった。
「リプラ!」
リプラの姿を見たツバキは、一目散にリプラの元へ向かおうとした。だが、レイダーズが慌ててツバキの動きを止めた。
「放してください! 僕をリプラの元へ行かせてください!」
「ダメじゃ」
レイダーズが返事をした直後、ツバキの足元に火の玉が飛んできて、床に命中した。ツバキは察した。レイダーズが自分を止めなければ、丸焦げにされていたと。
「チッ、あと少しだったのに」
そう言いながら、ヒーデブスがベーキウたちの前に姿を現した。ヒーデブスの醜い顔と体を見て、シアンたちは思わず嗚咽した。
「おげェェェェェェェェェェ! 気持ち悪い!」
「部屋に入った時から臭いと思ったが、こいつの体臭じゃったか! うえ、吐きそう」
「こんなに不潔な人、初めて見たわ」
シアンたちは嗚咽しながら自分のことをボロクソに言ったため、怒りが爆発したヒーデブスは魔力を開放した。
「僕様のことを罵倒するな! お前たち、生きてここから出られると思うなよ」
「おげぇ! こいつの口から変な臭いがする!」
「体臭だけじゃなくて口臭も酷いのかよ。うっ、臭いがここまで……」
ベーキウは鼻をつまみ、その場で片膝をついた。レイダーズは慌てて周囲を見渡したが、驚きの声を上げた。
「嘘じゃろ、この部屋窓がない!」
「そんな、こんな臭い部屋の中で戦えっての?」
「地獄じゃ! こんな場所で戦えるわけがないじゃろうが!」
シアンとクーアが文句を言った後、臭いに耐え切れず、我慢の限界に達したキトリが魔力を開放し、壁に大きな穴を作った。
「これで換気ができるわ」
キトリがこう言った後、ベーキウたちは急いで穴に近寄った。それを見たヒーデブスは自分がバカにされていると思い、大声を発した。
「このクソッたれが! 僕様をバカにすると痛い目にあわすぞ!」
「やかましいんだよこの汚物野郎がァァァァァァァァァァ!」
シアンは光の魔力を発し、巨大な塊にしてヒーデブスの口の中に向かって投げた。巨大な光の塊はヒーデブスの口の中に入り、そのままの勢いでヒーデブスを後ろに倒した。
「皆今よ、飛び道具であいつを始末するわよ!」
「了解!」
ベーキウたちは魔力を開放し、魔力の刃や衝撃波、ビームなどを発して遠くからヒーデブスを攻撃した。攻撃を受け続けたヒーデブスは立ち上がり、怒りの声を発した。
「よくも僕様をボロボロにしたなー! こうなったら、奥の手を見せてやる!」
と言って、ヒーデブスは羽織っているマントを脱いだ。
「おげぇ、ブサイク野郎のスッポンポンなぞ見たくないわ」
レイダーズは嗚咽しながらこう言ったが、ヒーデブスの裸を見て驚いた。ヒーデブスの上半身には紫色に光る紋章がまんべんなく描かれていたのだ。
「はっはっは! 剣聖レイダーズ、経験と知識のあるお前ならこれが何なのか理解しているはずだ!」
「ああ。古に存在したと言われる呪いの紋章、エスタクラフト。お前、禁断の呪いに手を出したな」
「その通り。この力のおかげで、今の僕様は最高に強い。本気を出せば、お前らなんて秒で倒せる」
「自信を持つのはいいんじゃが、大きな力を手にしたら、それ相当の何かを失うぞ」
「気にしなくていいさ。僕様はまだ、何も失っていないからなァァァァァァァァァァ!」
ヒーデブスは叫び声を上げながら、魔力を開放して地面を殴った。その直後、地面の中から無数の刃が現れ、ベーキウに襲い掛かった。
「俺が狙いか!」
ベーキウはシアンたちから離れ、高く飛び上がった。下から現れる刃は勢いよく上にいるベーキウに向かって伸びたが、ベーキウはクレイモアを振り下ろして迫る刃を破壊した。
「こんなもんか?」
クレイモアを振り終えたベーキウは、自身を睨んでいるヒーデブスを見ながらこう言った。だがその直後、割れた地面から再び刃が現れ、ベーキウに向かって迫った。
「まだ攻撃は終わっていない。お前は無数の刃に貫かれ、死ね!」
ヒーデブスはベーキウに向かって親指を下に向けた。それに合わせるかのように、刃はベーキウに攻撃を仕掛けた。
さっきの攻撃で理解した。力を込めてクレイモアを振れば、刃は壊せる。
そう思いながら、ベーキウはクレイモアを振り回した。次々と破壊される刃を見て、ヒーデブスの表情は曇っていた。そんな中、シアンとクーアがヒーデブスの背後に接近し、攻撃を仕掛けた。
「なっ!」
攻撃を受ける寸前にシアンとクーアの存在を察したヒーデブスは振り向き、バリアを発して攻撃を防御した。防御された直後にシアンとクーアは後ろに下がり、笑みを浮かべた。その笑みを見たヒーデブスはどうして笑ったか分からなかったが、すぐに笑みの意味を理解した。突如足元に大きな闇の渦が発したからだ。
「なっ、何だこれは! こんなの、僕様は知らないぞ!」
ヒーデブスは飛び上がったが、ジャンプするだろうと予測したレイダーズが先に飛びあがっており、剣を振り下ろしてヒーデブスを下に飛ばした。
「いっぺん闇に飲まれなさい」
悲鳴を上げながら落ちていくヒーデブスを見て、レイダーズはこう言った。
数分後、闇の渦を操っていたキトリは渦からヒーデブスを飛ばして出し、渦を消した。攻撃を受けたヒーデブスはかなり傷を負っていたが、シアンたちはまだ武器をしまわなかった。
「これで倒した……わけじゃないな」
刃の攻撃が収まり、何とかシアンたちと合流したベーキウがこう言った。この言葉を聞いたシアンは頷き、倒れているヒーデブスに検査機を向けた。
「あんまりしたくないけど、こいつみたいな下種野郎が生きていたら、何をするか分からないわね」
「そうじゃの。とりあえずあとからギャーギャー言われるのは嫌じゃから、燃やして塵にしてしまおう」
クーアは炎を出してこう言ったが、倒れていたヒーデブスは突如立ち上がり、近くにいたシアンに殴りかかった。だが、途中で乱入したベーキウが左手でヒーデブスの拳を防いでいた。
「あまり強くないパンチだな。教えてやろうか? パンチってのは、こうやって放つもんだ!」
ベーキウは声を荒げながら、ヒーデブスの腹を殴った。殴り飛ばされたヒーデブスは後ろに壁に激突し、そのまま倒れた。ツバキは剣を手にし、倒れているヒーデブスに向かって叫んだ。
「立て! お前、まだ戦うつもりだろ? 倒れるんだったら、その前にリプラの救い方を教えろ!」
ツバキの声を聞いたヒーデブスは、額に青筋を浮かべながら立ち上がった。
「何だお前は? 僕様の王女のことを呼び捨てで呼びやがって。特別な関係か? あぁ? お前は王女の何なんだ!」
「僕はリプラの幼なじみだ。リプラを守るって、約束したんだ!」
「そうか。そう約束したのか。お前に一言言っておく、その約束が果たされることは、ありえないんだよォォォォォォォォォォ!」
ヒーデブスは魔力を開放し、無数の戦士人形を創り出した。それを見たクーアは嫌そうな顔をした。
「まーた雑魚の相手をするってか? わらわは嫌だぞ、あいつら弱すぎて話にならないもん」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ。雑魚でも数が多ければ厄介ってことは変わりないんだから」
シアンはそう言って剣を構え、無数に現れた戦士人形の群れに向かって走り出した。クーアはため息を吐き、両手に風邪を発して戦士人形に向かって走り出した。
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