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成長するタイミングは人それぞれ


 ツバキはベーキウを守るため、剣を使って突進してきたテイシイテの攻撃を防いでいた。しかし、力も魔力もベーキウ以下のツバキは、徐々にテイシイテに押されていた。


「ツバキ! 待ってろ、今行く!」


 ベーキウはキトリが作った闇の剣を手にし、体を回転させるテイシイテに近付いた。だが、遠くにいたはずのホアダアホがベーキウに突進を仕掛けてきた。


「援護はさせないよーだ! お前はおいらがやっつけるんだ!」


「グッ! この野郎が!」


 ベーキウは突進してきたホアダアホに向かって闇の剣を振り下ろし、一閃を与えた。ダメージを受けたホアダアホは悲鳴を上げながら転倒したが、すぐに立ち上がってベーキウを睨んだ。


「よくもおいらを転ばせたな! お前だけは許せないぞ!」


「あなた、口調が幼稚だから痛々しいのよ。だからぶっ飛びなさい」


 そう言いながら、キトリは闇の魔力を使って、ホアダアホの下から闇で作った拳を放った。攻撃を受けたホアダアホは悲鳴を上げながら宙を舞った。


「待っててホアダアホ! こいつをやっつけたら、僕が助けに行くから! と言うわけで、さっさと倒れてよ!」


 テイシイテは、自身を睨むツバキを見てこう言った。ツバキは歯ぎしりしながら、自分が持っている力と魔力を出し切り、テイシイテを跳ね返した。


「そんな! 僕が押されるなんて!」


 そう言いながら、テイシイテは後ろに吹き飛んだ。ツバキは何度も大きく深呼吸をし、飛んで行ったテイシイテを見た。


 あいつはまだ倒れていない。僕が休んでいる間に、攻撃を仕掛けてくるはず!


 そう思ったツバキは、ゆっくりと立ち上がった。疲れ切ったツバキを見たベーキウは、両手を振り回しながら攻撃してくるホアダアホの攻撃を対処しながら叫んだ。


「俺とキトリがどうにかする。ツバキは休んでてくれ!」


「大丈夫です! 僕も剣士です。ベーキウさんたちに頼ってばかりじゃいられない!」


 そう言って、ツバキは剣を構えた。それと同時に、テイシイテが体を回転させながらツバキに向かって突進を仕掛けた。


「ぐるぐるアタックを喰らえ! 最初に君を倒してやるぞ!」


 テイシイテはそう言ったが、ツバキは動じなかった。


「あははははは! 僕の動きを見て、何もできなくて動けないのかい?」


 動じないツバキを見て、テイシイテは笑ってこう言った。だが、ベーキウは察していた。ツバキはテイシイテの動きを見て、回避して攻撃を仕掛けると。


「よそ見は厳禁だよー!」


 そう言いながら、ホアダアホはベーキウに攻撃を仕掛けたが、ベーキウは攻撃をかわし、ホアダアホの腹に向かって闇の剣を突き刺した。


「あああああ!」


「キトリ、追撃を任せていいか?」


「もちろん」


 キトリは返事をした後、指を鳴らした。その直後、ホアダアホの下から闇で作られた刺が現れ、ホアダアホの体を貫いた。


「うわァァァァァ! そんな……おいらがやられるなんて!」


「ホアダアホ!」


 ホアダアホの体が消滅するところを、テイシイテは目撃した。その瞬間、回転していたテイシイテの体は止まってしまった。


「隙あり!」


 今がチャンスだと察したツバキは、テイシイテに接近し、力を込めて剣を振るった。ツバキの一閃は、テイシイテの体を奇麗に一刀両断した。


「そ……そんな……僕もやられるなんて」


 テイシイテが悔しそうにこう言った後、塵となって消えた。




 戦いが終わり、ベーキウたちは座って休んでいた。


「はい。一応手当は終わったわ」


 キトリは包帯をしまいながらツバキにこう言った。戦いで少しダメージを負ったツバキは治療を受け、ありがとうと礼を言った。キトリはどうもいたしましてと言葉を返し、救急箱をリュックにしまった。


「とりあえずシアンたちと合流するまでここで休もう」


「その案に賛成。ベーキウも手当てするから、私に近付いて」


「ああ。頼むよ。けど、俺はそこまで傷を受けてないけど」


「ちゃんと治療するの。しばらくしたら、ヒーデブスと戦うんだから」


 キトリはベーキウの治療をしつつ、ツバキに話しかけた。


「そうだ。確かリプラ王女とあなたは幼なじみって聞いたわ」


「ツバキって城の兵士だっけ?」


「いえ、僕は普通の剣士です。見習いって言った方がいいでしょう」


 ツバキがこう言うと、キトリは質問を続けた。


「ただの剣士が王女と幼なじみなんて、結構いいつながりがあると思うわ。でも、どうして知り合ったの?」


 この質問を聞き、ツバキは少し考えた。


「僕の生い立ちから話しますけど、それでいいですか?」


「ええ。構わないわ」


 キトリの返事を聞き、ツバキは自身の生い立ちを語った。




 僕は孤児です。母親はいたんですが、病気で亡くなったって孤児院の先生が言っていました。五歳くらいの時、僕はアニメや絵本で見たヒーローにあこがれて、剣士になることを志しました。子供っぽい理由ですが、それでも誰かを助けるヒーロー、剣士になりたかったんです。


 そんなある日、僕は剣の訓練で孤児院の庭で木刀の素振りをしていました。そんな中、城から抜け出した王女が孤児院の庭に入り込んだんです。いきなりのことだったから、僕は驚きましたが、王女はかくまってほしいって言って僕に近付いてきました。僕は王女に言われるがままにかくまったんですが、すぐに兵士にばれてしまいました。王女は叱られました。だけど、王女は僕が素振りをしていたことに興味を持ち、時折城から抜け出しては僕のことを見ていました。それが、リプラ王女と知り合った経緯です。


 知り合った後、僕は王女といろいろと話をしました。そんな中、僕は王女にこう言ったんです。僕が剣士になって、君を守るって。その約束を果たすため、僕は強い剣士になりたいんです。




 話を聞いたキトリは、笑みを浮かべながらツバキの手を握った。


「純情な理由ね。あなたなら強くなれるわ」


「ああ。さっきの戦いを見てたけど、ツバキは戦いの中で成長をしている。きっと、強い剣士になれるさ」


 ベーキウとキトリの言葉を聞き、ツバキは照れて顔が赤くなった。


「そんな……僕は二人と比べて、まだ戦いに慣れていません。さっきだって、たまたま相手の隙ができたから、攻撃ができたんです」


「一発で敵を倒すのはなかなか難しい。それに、相手は鎧を装備していた。この市販の剣で鎧ごと相手を斬るのは難しいんだ」


 ベーキウはツバキの剣を手にしてこう言った。その時、ベーキウは小さな驚きの声を上げた。


「驚いた。固い鎧を斬ったはずなのに、刃こぼれがない」


「実は、相手の鎧を確実に斬るために、刃が固くて丈夫なところに魔力を重点的に注ぎ、力を込めて斬ったんです。少し、やり方が卑怯な気がしますが……」


「戦いに卑怯も何もない。だけど、あの戦いの中でとっさにそう判断したのは凄いと思う。未熟な剣士は、そこまで頭が回らないだろう」


 ベーキウはツバキに剣を返しながら、そう言った。褒められたツバキはありがとうございますと言いながら、頭を下げた。そんな中、キトリは崖の下を見ながら呟いた。


「それにしても、シアンたち遅いわね」




 一方その頃、シアンとクーアはレイダーズの体を縄で縛っていた。


「ねぇ、どうしてそんなことをするの? 崖の下でこんなプレイするつもりなの?」


「お前がセクハラしないように縛っているのじゃ!」


「あんたの場合、何をするか分からないからね!」


「えー? ワシ信頼されてないのー?」


「誰がするかァァァァァ!」


 シアンは大きな声で叫んだ。その時、大声の振動でぐらついた岩が、シアンに向かって落ちてきた。


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