ジジイだってカッコつけたい
バカなことをしたレイダーズは、ベーキウたちの手によってボロボロにされていた。クーアが放った火の魔力によって黒焦げアフロになってしまったレイダーズだが、剣を持って周囲を見回した。
「さて、これからこのレイダーズさんのカッコいいところを見せてあげるのじゃ」
「さっき見たからいい」
「お前が十分に強いってことは分かったのじゃ。分かったらさっさと敵を倒してこい」
「早くしてねー」
シアンたちはそう言って、近くの切り株の上に座った。レイダーズの行為を見て呆れたベーキウとツバキもシアンたちの近くに座り、レイダーズを睨んでいた。
「ねぇ、ワシ一人で戦えっつーの?」
「当り前だクソ親父。皆を悲しませた罰だ。テメーだけで戦え」
ベーキウの冷たい言葉を聞き、レイダーズは涙目になった。それでも、ベーキウたちは動こうとはしなかった。誰も助けてくれないことを察したレイダーズは、ため息を吐いてこう言った。
「ワシがカッコよく決めちゃったら、シアンちゃんたちが惚れ直しちゃうかもよ?」
「それは絶対にないから、安心して戦いなさい」
シアンの言葉を聞き、レイダーズはしょぼくれた表情で雑木林の中に入って行った。
ネラウラネは自分の元に向かって歩いてくるレイダーズを見て、ぎょっとしていた。
どうしてだ? どうして私の元へ歩いてくるのだ!
まぐれかと思ったネラウラネだったが、その場から離れてもレイダーズはゆっくりとネラウラネに向かって歩いている。しばらくレイダーズから逃げていたネラウラネだったが、それでも歩いてくるレイダーズを見て、ネラウラネは察した。レイダーズは自分の存在に気付いていると。
クッ! そっちがその気なら、私もお前を殺してやる!
確実にレイダーズを殺す。そう考えたネラウラネは狙いやすい場所に移動し、跳弾をスナイパーライフルにリロードした。跳弾を木に当てて跳ねらせて、レイダーズを撃つつもりなのだ。
たとえどんな剣の達人でも、跳弾を使って攻撃すれば、対処できまい!
そう思ったネラウラネは、引き金を引いた。放たれた跳弾は周囲の木に当たりながら、レイダーズに向かって飛んで行った。そして、跳弾はレイダーズの左胸に近付いた。
ハッ! やはり剣の達人でも、跳弾を使われたらどうしようもできないなぁ!
レイダーズを倒した。そう思ったネラウラネは笑みを浮かべた。だが、レイダーズは体を動かして跳弾をかわした。その動きを見たネラウラネは驚いたが、すぐに次の跳弾をリロードした。
今のはまぐれだ。たまたま体を動かしたら、弾が外れただけだ。
そう思いつつ、再び引き金を引いた。同じように木に当たりながら跳弾はレイダーズに向かって飛んだが、この跳弾もレイダーズは難なくかわした。
な……何だと。同じまぐれが、二回も起こるはずがない!
動揺しつつ、ネラウラネは再び跳弾をリロードしたが、レイダーズは息を大きく吸って、口を開いた。
「おーい! そこにいるのは分かってるぞー! 跳弾なんてせこい弾丸を使っとるから、ワシに一発も当たらんのじゃ! 悔しかったらワシの股間に一発当ててみろ、へっぽこド素人スナイパー!」
この言葉を聞いたネラウラネは、静かに怒りを爆発した。レイダーズは察していた。わざと挑発して相手を怒らせ、集中の妨げをしているのだと。確かにネラウラネはレイダーズの言動を見て怒りが爆発したのだが、冷静になって落ちつこうと自分で自分に言い聞かせた。
怒りで我を忘れるところだった。あいつの言葉など、聞く価値はない。あいつの言葉に価値はない。私は確実に、あのふざけたクソジジイの額に弾丸を撃ちこむ!
落ち着いたネラウラネは、スコープを動かしてちょこまかと動くレイダーズを見ていた。しばらくして、スコープからレイダーズの姿が消えた。
消えた? 高くジャンプしたのか?
そう思ったネラウラネは、スコープを上に上げた。すると、強い太陽光がネラウラネの目を襲った。
「おわっ!」
あまりの眩しさで、ネラウラネは驚きの声を上げつつ、スナイパーライフルを落としてしまった。目が戻ったネラウラネは急いで地面に落ちたスナイパーライフルを拾い、その場から逃げようとした。しかし、横からレイダーズが姿を現した。
「かくれんぼはおしまいじゃ!」
「グッ!」
ネラウラネは接近してきたレイダーズに対し、魔力の衝撃波を発して攻撃を仕掛けた。レイダーズは剣を振るって衝撃波を切り裂き、ネラウラネの顔に向かって左手を伸ばした。
「クッ! 止めろ、汚い手で私の顔に触るな!」
近付いてきたレイダーズの左手を払い、ネラウラネは後ろに下がった。距離を開けてスナイパーライフルを構えようとしたのだが、レイダーズは素早くジグザグに走りつつ、ネラウラネに接近した。
「なっ! 狙いが定まらない!」
「残念じゃったのー。スナイパーなら、接近された時のために、ショートソードかナイフを持っていればよかったのにのー!」
そう言いながら、レイダーズはネラウラネの左足に向かって剣を振り下ろした。斬撃がくると察したネラウラネはジャンプして攻撃をかわしたが、レイダーズは笑みを浮かべていた。ネラウラネがその笑みの理由を理解するには、時間がかからなかった。
今の攻撃は囮。本命の攻撃は……。
「察したようじゃのう。これはワシの癖でな、剣を振り下ろしたり振り上げたりする時の方が、結構力が入るんじゃ!」
と言って、レイダーズは剣に力を込めて勢いよく振り上げた。ジャンプして動けないネラウラネはこの斬撃を受け、体が真っ二つに裂けてしまった。
「く……クソ……」
「悪態はあの世でするがいい」
真っ二つになっても、自身を睨むネラウラネを見たレイダーズは、魔力を開放して巨大なビームを放ち、ネラウラネの体を塵にした。
戦いが終わった後、レイダーズはスキップしながらベーキウたちの元へ戻っていた。このエロジジイは、ネラウラネを倒したからシアンとクーア、キトリに褒められてエッチなことをしてくれるのだろうと、絶対に起こるはずのない未来を考えているのだ。哀れだね。
「シアンちゃーん! クーアちゃーん! キトリちゃーん! 無事に戻ってきたよーん! 褒めて褒めてー!」
そう言いながら、レイダーズはシアンたちに顔をのぞかせたのだが、シアンとクーアはベーキウの周りに集まって口喧嘩をしていた。
「おばはん! ベーキウの横に座るのは私だけなのよ! まぁ横までは許してあげるけど、膝の上に座るのはどうかしてるわよ!」
「なーにを言っとるんじゃ貧乳勇者! わらわとベーキウはくっついてんだから、膝の上に座っても問題ないじゃろうが!」
「だーかーらー! あんたとベーキウがカップルになったっていつの話よ! ライブ感で小説を書いているこの作者だって、あんたとベーキウがカップルになってないってことはちゃんと把握してるわ!」
「それが今にでもなるんじゃ! 見てろよ、わらわがベーキウと結ばれる瞬間を!」
「このバカ作者がかなり離れた歳の差カップルの話なんて書くと思う? 書くわけないでしょうが!」
などと、シアンとクーアは罵倒を繰り広げていた。レイダーズは足音を立てずに二人に近付き、隙を見て二人の乳を揉んだ。
「そんなに喧嘩しちゃやーよ! 仲良くやろうよ、ねぇ?」
エロジジイがまたまたセクハラしたことを察し、シアンとクーアは同時に魔力を開放し、エロジジイに向かって同時にアッパーを仕掛けた。
「クソジジイ! お前は一度星になれ!」
「そして二度と、戻ってくるな! 腐った流れ星になってそのまま燃え尽きろ!」
同時にアッパーを受けたレイダーズは、悲鳴を上げながら空へ向かって飛んで行った。
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