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いざ、魔界へ参ろうか!


 二日酔いになってしまったシアンとクーアの看護をキトリに任せたベーキウは、一人でテッコウの元へ向かっていた。


「ほらよ。こいつが約束の品だ」


 と言って、テッコウはベーキウに緑色に輝く宝石を渡した。お守りと聞いていたベーキウは驚いた表情をした。その時のベーキウの顔を見て、テッコウは小さく笑った。


「お前さん、お守りだから袋に何かが入っているって考えていたのかい?」


「ええ。まぁ。まさか、アクセサリーみたいなものだとは思ってもいませんでした」


「フッフッフ。お守りってのは神社などで売られてる袋のようなものじゃない。俺が作るのは、アクセサリーのような形だ。これで、魔界に行っても動けるはずだ」


「はい。ありがとうございます。それで……お代は……」


 ベーキウが財布を出そうとしたのだが、テッコウは笑ってこう言った。


「無料だ。ソーオンヤカマシーを倒してくれた俺なりのお礼だ。それに、こう見えても俺の仕事は儲かっているんでねぇ。金持ち相手にアクセサリーを売ってるんだよ」


「そ……そうなんですか」


 笑いながら話をするテッコウを見た後、ベーキウはテッコウに再び礼を言って、シアンたちの元へ戻って行った。




「おかえり、ベーキウ」


 宿に戻って最初に声をかけたのはキトリだった。ベーキウは周囲を見回したが、シアンとクーアの姿はなかった。


「あの二人はまだダウン中か?」


「うん。でもだいぶ良くなったって言ってたよ」


「だといいんだが……」


「で、お守りは手に入れたの?」


「ああ。これだ」


 と言って、ベーキウは胸元にぶら下げてあるお守りを見せた。それを見たキトリは、声を上げて驚いていた。


「すごい。無骨そうなおじさんだったけど、こんなきれいなアクセサリーを作れるなんて。これがお守りなの?」


「ああ。これがあれば魔界に行っても大丈夫だそうだ」


 ベーキウの言葉を聞き、キトリはアクセサリーを触った。すると、稲妻のようなものがキトリの体内を駆け巡るように走った。


「力を感じる。このアクセサリーなら、魔界に行っても大丈夫だし、今後も助けになるかもしれないわ」


「だといいんだけどな」


 ベーキウはアクセサリーの緑色の宝石を触りながらこう言った。その時、勢いよく扉が開き、青ざめた表情で、生まれたての小鹿のように全身を震わせるシアンとクーアが姿を見せた。


「お……おかえり……ベーキウ。お帰りのハグをしてあげるわ」


「バカ勇者……酒の臭いを漂わせた体でベーキウを抱いたら、ベーキウが体調不良でダウンするじゃろうが。ここはわらわのお帰りのチューで……」


「そっちのほうが余計体調悪くなるわよ……」


「病人はベッドの上に戻ってて」


 と、バカなことをするシアンとクーアに対し、呆れた表情のキトリが闇の魔力を操って無理矢理シアンとクーアをベッドの上に戻した。部屋に入れられたシアンとクーアは騒いでいたが、キトリは無理矢理扉を閉め、その声は聞こえなくなった。


「あの二人の体調がよくなるまで、しばらくここで待機するかもしれないわね」


「そうだな」


 ベーキウは騒ぐシアンとクーアの声を聞きながらこう言った。




 二日後、シアンとクーアは仁王立ちで外に立っていた。


「勇者シアン、完全復活!」


「賢者クーアも病から立ち直ったぞ!」


「大げさに言うなよ。二日酔いで倒れてただけじゃないか」


 どや顔でバカなことを言うシアンとクーアに対し、ベーキウはため息を吐いてこう言った。その後、ベーキウたちはリフトの町から出て、しばらく草原を歩いていた。キトリは周囲を見回し、目立つものがないことを確認してこう言った。


「それじゃあ、今から魔界への門を出すわね」


「ああ。頼む」


 ベーキウの声を聞き、キトリは闇の門を出した。


「今回は無事に魔界へ迎えるな! よし、時間を使ってしまったから、急ごう!」


 と言って、ベーキウは門へ向かって走り出した。だが、ベーキウは門の扉に激突し、頭を強く打ってしまった。


「慌てすぎよベーキウ。門は現れても、扉は開いてないわ」


「そうだった……イテテ……」


 ベーキウは少し照れながら、鼻を抑えて立ち上がった。しばらくして、扉は左右に開いた。それを見たキトリは前に立ち、ベーキウたちにこう言った。


「それじゃあ、魔界に行きましょう」




 魔界へ向かったベーキウが最初に目にしたのは、濃い紫色の空と黒い煙のような雲。そして、枯れ果てた荒れ地のような地面だった。


「何じゃこりゃ? ここが魔界なの?」


 クーアはそう言いながら周囲を見回した。シアンは下に生えている枯れた雑草を手に掴んだが、雑草は引っこ抜かれてすぐに塵になった。


「雑草が抜かれた瞬間に塵になって消えた。こんな場所で魔界の人は住んでいけるの?」


「うん……子の周りに住人はいると思うけど……まさか、お父さんが倒れたから、魔界中で大騒動が……」


 キトリが不安そうにこう言う中、ベーキウはバイクの音を耳にした。


「何かがくる」


 ベーキウの声を聞いたシアンたちは、すぐに武器を構えた。数分後、遠くの方からバイクに乗った集団が現れた。その集団は全員髪型がモヒカンで、鎖分銅や釘バット、土産屋で売られているような安い木刀、ヒノキの棒などを手にしていた。


「魔界にも暴走族はいるのね」


「ああ。いきなり変なのに絡まれたようだな……」


 ベーキウがこう言うと、変なバイクの集団はベーキウたちを取り囲んだ。


「ヒャッハー! なんか変な集団がいるぜー!」


「イケメンにガキが二人と……」


 キトリを見た変なモヒカンの集団の一人が、慌ててこう言った。


「ゲエッ! ヤッベェ! 今の魔王の娘がいるぞ!」


「え? キャァァァァァ! 下手に手を出したら処刑されちゃう!」


 と言って、変なモヒカンの集団の一部は女のような声を上げて逃げて行った。その様子を見たシアンは、キトリにこう言った。


「あんた、この世界では有名なの?」


「忘れたの? 私、魔王の娘なんだけど」


「その設定話したのいつ? 読者どころかこのバカ作者も忘れてるんじゃない?」


「シアン、そんなメタなことを話している場合じゃないぞ。見ろ、キトリを見ても逃げない奴がいるぞ」


 ベーキウの言葉を聞き、シアンは自分たちに向かって敵意を放っているモヒカンの集団を見た。集団は魔力を開放したり、武器を手にしていて、明らかに戦闘する構えをしていた。その光景を見たシアンは、呆れながらこう言った。


「あんたら、わたしらとやるつもりなの? 止めた方がいいわよ。あんたらを相手に戦いをおっぱじめたら秒で終わるわよ。本気を出したら、あんたらは塵になって消えるわ」


 シアンの言葉を聞いたモヒカンの一人が、鎖分銅を回しながら襲い掛かった。


「ちび女が! ふざけたことを言ってると、この鎖分銅で頭を叩くぞ!」


「やれるもんならやってみなさいよ、このド低能が!」


 シアンは相手を挑発しながらこう言った。その挑発に乗ったモヒカンは、奇声を上げながら鎖分銅を投げた。シアンは魔力を解放し、鎖分銅の先端を消滅させた。


「これで分かったでしょ? 私とあんたの力の差が」


 シアンはそう言って、どや顔になった。先端が消滅した鎖分銅を見たモヒカンは、しばらくボーっとしていたが、このままだと塵になって消えると察し、奇声を上げてバイクに乗り、猛スピードで逃げて行った。その途中で、バイクは転倒した。


「フッ、自分の力を知らない雑魚が! で、あんたらはどうするの? 私らと戦って、肉体的にも精神的にもフルボッコにされる?」


 シアンは相手をバカにするように笑みを作った。その笑みを見たモヒカンの集団は、怒りのあまり頭から煙が上がった。


「このクソガキがァァァァァァァァァァ! とことん俺たちをバカにしやがって!」


「お母さんから学ばなかったのか? 人をバカにするのはいけませんって!」


「それ以上酷いことを言うとぶっ飛ばすぞ! 泣いても知らねーぞ!」


 モヒカンの集団は怒声を上げながらシアンに襲い掛かった。やれやれと思いつつ、ベーキウは背中のクレイモアを手にした。


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