敵はいくらでも現れる
ベーキウの怒りの攻撃によって、新型戦士人形の群れはあっという間に全滅した。かなり無茶苦茶に魔力を使ったせいで、ベーキウはかなりばてていた。
「はぁ……はぁ……もう……限界だ」
そう言って、ベーキウはその場に倒れた。シアンたちはすぐにベーキウに近付き、回復をしたり、持っていたお茶を飲ませたり、挙句の果てには衣服を脱がしてタオルで汗を拭いていた。
「大丈夫ベーキウ? 今、回復するから待っててね」
「ふひひひひ、わらわがその体を拭いてやるぞ。さぁさぁ、じーっとしておれよ」
「ゆっくりでいいからお茶を飲んで。慌てて飲んだら、お茶が変なところに入るから」
ベーキウに対し、優しくしっかりと対応するシアンたちを見たレイダーズは、実の息子であるベーキウに嫉妬していた。
「くっそー。どうして息子の方が人気なんじゃ? ワシがベーキウのパパなのに!」
「救いようのないスケベで、セクハラをするジジイより、真面目なイケメンの方が女子に人気ありますよ」
と、少し呆れた様子のツバキがこう言った。一方、この光景を見ていたヒーデブスは、怒りで体を震わせていた。
「クソが! 僕様が作った新型戦士人形があんな三流以下の剣士にやられるなんて! もっと強い奴を作らないとダメか」
そう言って、ヒーデブスは水晶玉を見て、ベーキウたちの現在地を調べた。
「僕様がいる場所まではまだ距離があるな。確か……ワキノシタとビコーコツ言う通り道と、ウエカラナダレと言う山道を通らなければならない。まだ距離があるから、強い戦士人形を作る時間がある。急がねば」
その後、ヒーデブスは早急に新しい戦士人形を作り始めた。数分後、ヒーデブスの前には新しい戦士人形があった。他の戦士人形や、ベーキウが蹴散らした新型戦士人形と比べて、見た目も武装もかなりカッコいい出来になっていた。
「うむ! やはり僕様はセンスがいい! かなりカッコいいから、名前を付けよう。えーっと……そうだ。デマルマデ! お前の名前はデマルマデだ!」
名前を付けられたデマルマデは、手稲に頭を下げてこう言った。
「私みたいな存在に名を与えてくれて、本当にありがとうございます」
「礼儀がいいな。では、デマルマデ! 今すぐワキノシタと言う通り道へ向かい、勇者パーティーを一掃してこい!」
「了解しました。ご主人様へのお土産として、奴らの遺体を持ってきましょう」
「期待しているぞ! デマルマデ!」
デマルマデはヒーデブスの言葉を聞いた後、笑みを浮かべてワキノシタと言う通り道へ飛んで行った。
その頃、ベーキウたちはずっと歩いていたが、戦士人形が襲ってこないことを察し、話をしていた。
「あいつが作った戦士人形、襲ってこないわねー」
「奴は本拠地でわらわたちの行動を見ておる。わらわの無双ぶりを見て、勝てぬと判断したんじゃろう」
と言って、クーアは高笑いを始めた。戦いの疲れを何とか癒したベーキウは、クレイモアを杖代わりにして歩いていた。
「大丈夫、ベーキウ?」
「ああ、何とか歩けるよ」
ベーキウは心配したキトリにこう言葉を返した。この光景を見たレイダーズは、羨ましそうにベーキウを見た。
「いいなー、いいなー。ワシもキトリちゃんに心配されたーい」
「あなたはいいでしょうが。できれば、今すぐに寿命で逝ってほしいわ」
キトリの冷たい言葉を聞き、レイダーズは涙を流した。
「およよよよよ。こんなジジイに酷いことを言うなんて」
「あんたは普通のジジイじゃないわよ。あんたは救いようのないドスケベ淫乱クソジジイ。全女子の敵よ」
と、シアンは汚物を見るような目でレイダーズにこう言った。ツバキは少し嫌な空気を何とかするため、慌てながらこう言った。
「それよりも、前を見てください。あそこはワキノシタと言う通り道です」
「ワキノシタ? 変な名前だな。誰が名前を付けたんだ?」
「僕が生まれる前からそういう名前でした。作った人は、多分何も考えていないと思います」
「もしかしたら、脇フェチかもしれんぞー」
レイダーズが笑いながらこう言ったが、突如その表情が変わった。
「構えろ。何かいるぞ」
「は?」
シアンがレイダーズの方を振り向いたと同時に、レイダーズは素早く剣を抜いてシアンの方に向かって剣を突いた。突如、レイダーズが変な行動をしたため、シアンは驚いて目を開けた。だが、すぐにレイダーズの行動の意味を察した。シアンの背後には、デマルマデがいたのだ。
「お前、新手のヒーデブスの手下じゃな?」
「ご名答。私の名前はデマルマデ。あなたたちをあの世へ送る案内人です」
デマルマデはそう言って、後ろに下がった。ベーキウはクレイモアを構えつつ、デマルマデの様子を見たのだが、レイダーズの突きを受けた傷がなかった。
「おい、さっきの攻撃を受けたはずなのに、どうして傷がないんだ?」
「ベーキウ。あいつは皮膚を固くして攻撃を防御したのじゃ。厄介な相手じゃのー。体を固くするってことは、防御はもちろん攻撃にも使えるからの」
レイダーズがこう言うと、デマルマデは笑い始めた。
「あなたはただのご老人ではございませんね。私の考えを見抜くとは」
「経験が違うんじゃよ。経験が」
レイダーズは笑いながらデマルマデを見て、こう答えた。シアンは剣を構えてデマルマデに斬りかかろうとしたが、レイダーズがシアンにこう言った。
「言ったじゃろ、あいつは体を固くする。いくらシアンちゃんが光の魔力を使ったとしても、あまりダメージを与えられぬぞ」
「じゃあどうするのよ?」
「様子を見るのじゃ。初めて会った敵の対処法、まず相手を知ること」
レイダーズはあくびをしながらこう言ったが、ツバキは剣を構えてこう言った。
「でも、こんな奴に時間を使うわけにはいきません! リプラを早く助けたいんですよ、僕は!」
「んなこと知っとるわい。確か王女は、呪いの力に対抗するための力で眠っているんじゃろ? 対抗するってことは、ヒーデブスの奴が何かをしない限り無事ってことじゃ。それに、ヒーデブスがあんな敵を出してきたってことは、まだ王女に手を出していないこと、呪いを解除できてない証拠じゃ」
レイダーズの言葉を聞き、ツバキは納得した表情になった。その話を聞いていたデマルマデは拍手をしながらこう言った。
「その通りです。そこまで頭が回るとは思いませんでしたよ」
「ジジイを甘く見るなよ? 生まれたてのへっぽこ君とは違うのじゃ」
「へっぽこ君?」
この言葉を聞き、デマルマデの額に青筋が走った。相手は煽りに弱いことを察したシアンとクーアは挑発して相手の調子を狂わせようとしたのだが、レイダーズが止めた。
「止めなさい。下手に煽らせて相手を強くさせたら、意味がない」
「じゃあこのまま戦うってわけ?」
「その通り。じゃ、頼むぞ息子よー」
「あんたに息子って言われたくねぇ!」
上空にいたベーキウが、叫び声を上げながらデマルマデに向かってクレイモアを振り下ろした。ベーキウの存在に気付いたデマルマデは、急いで両腕を固くし、ベーキウの攻撃を防御した。
「グウッ! 長話をしていたのは、このためか!」
「その通りじゃ! 最初に言っておくが、戦いにルールなんてもんはないからの!」
レイダーズは剣を手にし、デマルマデに接近して剣を振るった。
「ふむ。浅いか」
レイダーズは、剣の刃に付着した紫色の血液らしき液体を見て呟いた。攻撃を受けたデマルマデは息を荒げながら、レイダーズの方を向いた。
「グッ……私に一閃を浴びせるとは……」
「お前さんが弱いだけじゃよ。そいじゃま、本格的に喧嘩を始めようかのう」
そう言って、レイダーズは怒りの形相のデマルマデを見て、笑みを浮かべた。
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