怒りの超攻撃!
ヒーデブスはベーキウたちを倒すために、今まで作った戦士人形よりも強く、強固な鎧と兜を装備した新型戦士人形を送り出した。新型戦士人形はベーキウたちの前に降り立ち、剣を向けた。
「あらま、今度はデカブツがきたわね」
「あんなん見た目だけじゃ。装備は頑丈そうに見えるが、亀のようにノロい動きじゃったら攻撃が当て放題じゃ!」
クーアは魔力を開放し、新型戦士人形に向かって放った。だが、新型戦士人形は素早い動きでクーアの攻撃をかわし、クーアの背後に回った。
「チッ! 予想より早いのじゃ!」
攻撃がくると予感したクーアは、振り向きつつ強い魔力を開放してバリアを張った。クーアの予想通り、新型戦士人形はクーアに向かって剣を振り下ろした。クーアのバリアは新型戦士人形の剣が命中したと同時に、ガラスのように砕け散った。
「威力もあるのか。魔力で作ったバリアがいとも簡単に粉々じゃ」
「あいつ、まだ動くつもりよ!」
キトリの言葉を聞いたクーアは、新型戦士人形が連続して攻撃を放つことを察した。だが、シアンが前に出て剣を構えた。
「かかってきなさいデカブツ! 私が相手になるわ!」
と言って、シアンは新型戦士人形を挑発した。新型戦士人形はシアンに向かって剣を横に振って攻撃したが、シアンは攻撃を防御して前にジャンプした。
「ほらほら、私はここよ」
挑発するような仕草をし、シアンはちょこまかと動き始めた。新型戦士人形は後ろに下がり、ちょこまかと動くシアンを見つめていた。
「あのデカブツ、シアンを見るだけで何もせんぞ」。攻撃を諦めたのか?」
戦いの様子を見ていたクーアはこう言って、シアンの価値を確信していた。しかし、レイダーズは怪訝そうに戦いの様子を見ていた。
「いや、あいつはまだやる気じゃ」
「どうして分かるんじゃエロジジイ?」
「あのデカブツは無駄に攻撃をしても意味がないことを学んだのじゃ。じゃから、確実に攻撃を当てるためにはシアンちゃんの動きを見て、観察して、クセを学んで理解し、それらを総合してどのタイミングで攻撃すればいいか、考えておるのじゃ」
レイダーズの話を聞き、ツバキは剣を持った。それを察したレイダーズは、急いでツバキを止めた。
「未熟なお前さんが助けに行っても、戦いの邪魔になるだけじゃ」
「でも、僕も剣士です!」
「一流じゃないじゃろう? ま、いい機会じゃから、シアンちゃんがどうやってこの状況を切り抜けるか一緒に見よう。クーアちゃんとキトリちゃんもワシの隣で一緒に見ようよー」
そう言いながら、レイダーズは嬉しそうに手招きをした。だけど、クーアとキトリはその手招きに応えることはなかった。
シアンは何もしない新型戦士人形を見て、徐々にレイダーズが言ったことを理解した。
私のふざけた動きに何かクセがあるって言うの? まぁ、そんなことどうでもいいわ。隙を見て、奴を叩く!
そう思ったシアンは、新型戦士人形の背後に回って奇襲しようと考えた。しかし、新型戦士人形はシアンの動きに合わせるかのように振り向き、盾を構えて走り出した。
「盾を構えて走り出して、それが何になるのかしらね?」
と言って、シアンは魔力を開放しながら高くジャンプした。新型戦士人形の頭上になったことを確認したシアンは、剣の刃の溜めた光の刃を発して攻撃を仕掛けた。
「光の刃! これなら奴に一撃与えられるわ!」
シアンが光の魔力を使って攻撃したことを察し、キトリは新型戦士人形にダメージが入ることを期待した。レイダーズは小さく息を吐き、呟いた。
「簡単に攻撃が入ればいいんじゃが」
その直後、激しい爆発音が響いた。周囲に舞う煙を払いながら、シアンは新型戦士人形の様子を見た。一撃は入っただろうとシアンは予測したのだが、その予測は大きく外れた。新型戦士人形の剣が煙を払いながら現れ、シアンの目の前をかすったのだ。
「クッ……」
シアンは上半身を後ろに反らして攻撃をかわし、後ろに下がった。煙の中から、無傷の新型戦士人形が現れたのだ。
「あの攻撃を受けてぴんぴんしてるなんて、あんた意外とタフネスね」
「シアン! そんなこと言っとる場合じゃないぞ! とっとと倒さぬとやばいぞ!」
クーアが大きな声で叫んだ。シアンは後ろを見て、思わず驚きの声を上げた。上空には、同じような新型戦士人形が飛んできているからだ。
ヒーデブスは水晶玉で、新型戦士人形の戦いを見ていた。シアンが苦戦している様子を見て、どんどん新型戦士人形を出していけば、いずれ勝てるだろうと考えたのだ。
「ヒャーッハッハッハ! あの勇者でさえも、僕様の作った新型戦士人形に苦戦している! 残りの奴らも、こいつには勝てないだろう! 勇者パーティーの冒険も、ここでジエンドだ!」
ヒーデブスは、笑いながら次々と新型戦士人形を生み出し、ベーキウたちの元へ飛ばしていった。
戦意を失ったベーキウは、心の中でずっと考えていた。父親がいなかったため、自分が苦労して強くなり、剣士として立派になった。母親もあまりない金銭でやり取りしつつ、家計を助け、株を始めて大儲けした。いろいろあったが、ベーキウとベーキウ母はかなり苦労してきたのだ。それもこれも、このクソジジイことレイダーズにすべて責任があると思い、怒りがこみあがった。怒りが徐々に噴き出ると同時に、ベーキウの戦意と魔力が強くなった。
「おっ、復活したようじゃの」
レイダーズは嬉しそうにこう言って、背負っていたベーキウを下ろした。そして、クーアとキトリの方を見て、下種な笑みをしながらこう言った。
「次は誰がおんぶされたいの? クーアちゃんでもキトリちゃんでもワシはオッケーじゃぞー」
「このエロジジイ! シアンが戦ってるっつーのに、そんなことをする暇があるか!」
「だったら、あなたが戦いなさいよ! 剣聖でしょ? 強いなら前に出て戦いなさい!」
「えー、ワシが戦うのー? こんなダンディなジジイに戦えって言うのは酷じゃない?」
「貴様をただのジジイと思ったことは一度もないわ! 貴様はかなり強くて、かなり情けないスケベクソジジイじゃ!」
クーアが怒声を上げた後、ベーキウは怒りの形相でレイダーズの後頭部を掴み、新型戦士人形の群れに向かって走り出した。
「ノォォォォォォォォォォ! ベーキウちゃん! いや、我が息子よ! 実の父親に対して後頭部を掴んで走り出すとは、一体何考えてんの?」
「テメーも戦えェェェェェェェェェェ!」
ベーキウは怒りと憎しみを力に変え、レイダーズを新型戦士人形に向かって投げた。レイダーズは情けない声を上げながら新型戦士人形に向かって突っ込み、激突した。
「あだだ……おいコラ! 実の父親だからって、投げ武器にするって酷くない?」
「うるせェェェェェェェェェェ! とっとと戦えェェェェェェェェェェ!」
ごちゃごちゃ何かを言うレイダーズに対し、ベーキウは鬼のような形相でこう叫んだ。その時のベーキウの表情を見て、キトリとツバキは恐怖で体を震わせながらこう言った。
「いつものベーキウじゃない」
「優しい人ほど、怒ると怖い話は本当だったんですね」
ベーキウはクレイモアを取り出し、近くにいた新型戦士人形に向かって力強くクレイモアを振り下ろした。怒りの力があるせいか、一撃で新型戦士人形を倒すことに成功した。
「おお! ベーキウが一閃で!」
ベーキウが敵を倒す光景を目の当たりにしたシアンは、喜んでこう言った。だが、それでもベーキウの怒りは収まらず、続けて別の新型戦士人形たちに攻撃を仕掛け続けた。それから、ベーキウは気が済むまで新型戦士人形に攻撃を続けた。
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