実の父親がとんでもない奴だと知った日
翌朝、ベーキウは何もかもが終わったかのように真っ白に燃え尽きていた。それもそのはず。剣聖であるが、自分の欲に正直で状況を考えず突っ走るドスケベ淫乱クソジジイことレイダーズが、自分の実の父親であったことが判明したからだ。そう思うと、ベーキウは母親が父親のことについて何も言いたくなかった理由をベーキウは理解した。父親がこんなんでは、語りたくないだろう。
「ベーキウ……」
「昨日のあれでショックを受けとるの」
「あんなエロジジイが実の父親だと知ったら、誰だってそうなるわよ」
心配したシアンたちは、ベーキウに寄り添った。ツバキはボロボロになったレイダーズを見て、ため息を吐いた。
「ベーキウさんがああなった以上、戦力が落ちてしまいます。なので、今日からはレイダーズさんがしっかりしてくれないと大変ですからね」
「若造が偉そうに命令すんな。言われなくてもそーするっつーの」
と、レイダーズは指で耳をほじりながらこう言った。その態度にイラっとしたクーアは、回し蹴りでレイダーズの耳を蹴った。その結果、指が耳に突っ込んだ。
「ギャァァァァァ! 耳が! 指が耳に入っちゃったー! 抜けないから、誰か助けてェェェェェ!」
「はいよ」
シアンは無理矢理レイダーズの指を耳から抜き、手を洗うために洗面所へ向かった。ツバキはこんなパーティーでリプラが助けられるかどうか、不安になった。
ヒーデブスは相変わらず眠っているリプラをじーっと見つめていた。
「ああ、美しいリプラ王女よ。こんな呪いがなければ、君はこの世で偉大な呪術師、ヒーデブス様の妻となっていたのに……」
そう言いながら、リプラを守っているバリアに手を触れた。触れた瞬間にヒーデブスの手に電撃が流れ、激しく火花が散った。
「クソッ! こんなことをするなんて!」
ヒーデブスはそう言って水晶玉がある部屋に戻った。水晶玉には、ベーキウ一行の姿があった。
「あいつら、再び動き出したな。一人、燃え尽きたような奴がいるが……戦力が削れた今なら好都合。一気に倒してやる!」
今ならベーキウ一行を全滅できるチャンスだと察したヒーデブスは、大量の戦士人形を作り出した。
「お前ら、今ならあいつらを倒すことができる! 今すぐ行ってこい!」
ヒーデブスの命令を受けた戦士人形たちは敬礼し、外に出て行った。
真っ白になったベーキウは歩くことができたが、まっすぐ歩くことができず、歩行速度も昨日より大きく落ちていた。そして、時折止まっては力が抜けたようにその場に倒れてしまうのだ。
「ベーキウ。ベーキウ」
「うーむ……もう少し休んだほうがよかったか?」
キトリとクーアが心配してベーキウに近付いたが、ベーキウは何も言わなかった。声を出すこともできないほど力がないことを察したシアンは、レイダーズの方を向いてこう言った。
「あんた、ベーキウの実の父親なら息子をおんぶして歩きなさいよー」
「ジジイのやることじゃない」
「あんたのせいでこうなったんでしょうが! 少しは、責任を負いなさい!」
シアンに怒鳴られ、レイダーズは渋々ベーキウを背負うことにした。
「あーあ、女の子をおんぶするなら乳が背中に当たって、太ももを触れるから嬉しいんだけど、野郎を背負っても嬉しくねーのー」
「こいつ、半殺しにしてやろうか」
クーアは文句を言いながらベーキウを背負うレイダーズを見て、殺意がわいてきた。そんな中、ヒーデブスが放った戦士人形が上空から現れた。
「あれはヒーデブスが作った戦士人形!」
「早速お出ましってわけか!」
クーアは魔力を開放し、地面に降りようとする戦士人形に向かって、火の魔力を放った。この攻撃で一部の戦士人形が焼かれて倒れたが、攻撃に耐えた戦士人形が剣を持ってクーアに襲い掛かった。
「一人で戦わないでよね、もう!」
シアンはそう言いながら、クーアに攻撃を仕掛けようとした戦士人形を蹴り飛ばした。シアンの後ろにいたキトリは闇の魔力を地面に向かって放ち、地面から戦士人形に向かって闇の槍を放って攻撃した。
「敵はまだいるわ。気を抜かないで」
「キトリの言う通り。あいつら、まだまだやってくるわ!」
シアンがこう言うと、上空から新たな戦士人形が現れ、シアンたちに襲い掛かった。ツバキは剣を手にして戦士人形に斬りかかったが、戦士人形は盾を使ってツバキの攻撃を防御した。
「固い……」
固い盾で攻撃を防御され、苦しそうな表情をするツバキを見て、レイダーズはため息を吐いてこう言った。
「おーい、盾を持っている相手に防御されたら、一度後ろに下がれ。力で押して勝てると思わないほうがいいぞー」
レイダーズのアドバイスを聞き、ツバキは後ろに下がった。ツバキの攻撃を防御していた戦士人形は防御の隊形を解き、後ろに下がったツバキに接近した。剣で攻撃を受け止めようとしたツバキだったが、その動きを察したレイダーズがこう言った。
「剣は盾じゃない。防ぐこともできるが、逆に剣の寿命を縮めるだけじゃ。奴の攻撃はかわして、その隙に奴を斬れ」
「はっ、はい!」
ツバキは迫る戦士人形の攻撃をかわし、隙だらけの背中に向かって剣を振り下ろした。攻撃を受けた戦士人形は態勢を崩し、前のめりになった。
「今じゃ。そいつの背中に剣を突き刺せ。相手は魔力に似た力で作られた人形。人じゃないから殺人じゃない」
「わ……分かりました!」
アドバイスを聞いたツバキは急いで戦士人形に近付き、背中に向かって剣を突き刺した。戦士人形は苦しそうにもがきながら、消滅していった。
「た……倒した」
「見た目に騙されるな。あいつらの攻撃は強いが、防御はもろい。攻撃をかわして隙を見て斬れば、一撃で倒せるはずじゃ」
そう言いながら、レイダーズはあくびをした。ツバキはレイダーズの方を見て、やっぱりこの人は剣聖なんだと心の中で思った。
シアンたちの手によって、次々と戦士人形が倒される光景を、ヒーデブスは水晶玉を通じて見ていた。
「クッ……やはり勇者パーティー。ただの戦士人形では勝てないか。なら、もっと強い奴を作らねばならないな!」
ヒーデブスは魔力を開放し、今まで作ってきた戦士人形よりももっと強い戦士人形を作り出した。その戦士人形はとても大きく、硬くて大きな鎧と兜を装備していた。
「これなら奴らも手が出まい。さぁ、行ってこい新型戦士人形よ! 勇者パーティーを血祭りにあげてこい!」
ヒーデブスの命令を受けた新型戦士人形は、敬礼をして外に出て行った。
戦士人形を蹴散らしたシアンたちは、再び歩いていた。
「ベーキウ、まだ気を取り戻さないのね」
レイダーズが背負っているベーキウを見て、キトリが不安な声を出した。レイダーズは笑いながらキトリの方を向いた。
「なーに。元気がないのは今のうちだけじゃ。そうじゃ、キトリちゃんに意中の相手が元気のないときの対策を教えてあげる。まず、ラブホに連れ込んで無理矢理脱がして、自分も脱いで……」
「未成年にとんでもねーことを教えてんじゃねーぞクソジジイィィィィィ!」
シアンは叫び声を上げながら、レイダーズの頭に手刀を放った。レイダーズは鼻血を出しながら後ろに下がり、シアンの方を向いた。
「シアンちゃん、確かに未成年に言っちゃいけないことだけど、いずれ人は成長して、いろいろな知識を得るんだ。いずれ知る知識だから、前もって手に入れても何も問題は……」
「大ありじゃボケェェェェェ!」
クーアは叫びながらジャンプし、レイダーズの顔面に向かって蹴りを放った。レイダーズは後ろに下がり、気持ちいいと一言呟いた。その時、こちらに向かって何かが接近してくることを察した。
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