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単純な奴ほど単純な罠に引っかかる


 ヒーデブスは人形たちが全滅したことを知り、歯ぎしりをしていた。


「あいつら……僕様が作った兵隊たちを難なく倒しやがった! しかも、あのスケベな淫乱ジジイは剣聖、レイダーズ・シュバルティーグ! どうしてあの剣聖がここにいるんだ!」


 ヒーデブスは叫びながら、机を叩いた。人形が全滅したこともあるが、ヒーデブスが魔力を動力として動く、肉眼でも確認しにくい超小型ドローンカメラを使っていたことがばれたからである。このおかげで、どの位置に戦士たちがいるのか分かっていたのだ。しかし、そのドローンは破壊されずに放置されている。


「むう……まだ相手の居場所は特定できる。だからと言って、相手を攻撃しないと相手は動きを止めないぞ。さて、どうする……」


 その時、監視カメラ映像からレイダーズの悲鳴が聞こえた。ヒーデブスが映像を見ると、レイダーズがシアンたちに猛攻撃をされている映像が映っていた。




 レイダーズはシアンたちにセクハラを仕掛け、逆に攻撃をされていたのだ。


「いだだだだだ! ゴメンって! マジでごめんよシアンちゃん! もう二度とおっぱい揉まないから!」


「あんたの言う言葉には信頼性がないわ!」


 シアンは胸を手で覆いながらレイダーズから離れたが、レイダーズはゴキブリのように動いてシアンの背後に回り、尻と太ももを触った。


「じゃあおっぱいの代わりにお尻と太ももを……」


「どこ触っても駄目だっつーこと理解しねーのかこのクソジジイがァァァァァァァァァァ!」


 シアンは大きな怒声を上げながら、地面に這うレイダーズの後頭部を強く踏みつけた。その後、魔力を開放したクーアが大きな火を放ち、レイダーズの背中に攻撃した。


「わらわなんて何度も乳を揉まれたぞ! それどころか、尻も太ももも触られた! こんなことされるの初めてじゃ!」


「気持ちよかった?」


「セクハラされた女子にそんなこと聞くなこのクソジジイがァァァァァァァァァァ!」


 クーアは魔力を強くして火力を上げ、レイダーズの背中を燃やした。その直後、地面から闇で創られた拳がレイダーズの腹に直撃した。


「どさくさに紛れて、私もセクハラされた。胸も触られたし、太もももかなり触られた……本当に気色悪い!」


「いやー、大きいおっぱいもいいけど、たまには貧乳も……」


「死ねェェェェェェェェェェ!」


 キトリは泣き叫びながら、無数の闇の矢をレイダーズに向かって放った。ヒロインたちの怒りの猛攻撃を受けつつも、レイダーズは生きていた。


「イタタ……ねぇ、ベーキウ君、ツバキ君。仲間が酷い目に逢ってるんだから助けてくれなーい?」


「仲間にセクハラするからだろうが」


「自業自得です」


 ベーキウとキトリはレイダーズから目線をそらし、呆れて大きなため息を吐いた。




 あまりにもバカバカしい攻撃を見たヒーデブスだが、あるアイデアが浮かんだ。


 そうだ。あのエロジジイを楽に始末する方法を見つけたぞ。他の仲間を倒すことはできないが、あのエロジジイだけなら何とか始末できる。


 そう思い、ヒーデブスは魔力を使って、自身が考える最高の美人の人形を作り出した。


「よしできた。早速剣聖、レイダーズの元へ迎え!」


「了解しました旦那さーん」


 と言って、美女の人形は外へ飛び出した。その後、ヒーデブスは念のためにと思い、同じような美女の人形を作り始めた。




 傷を負った戦士の治療を終えたベーキウたちは、立ち寄った町から旅立っていた。


「戦士の皆さんはどうするって言ってました?」


「全員リタイアするって。ヒーデブスに適わないって思ったんだろう」


 ベーキウとツバキはこんな話をしていた。二人が引く台車の上には、ボロボロになったレイダーズが置かれていた。レイダーズは何か言っているが、口には猿ぐつわがされているため、何を言っているのか分からなかった。シアンたちは鬼のような形相をし、ベーキウとツバキにこう言った。


「あのバカのこと見張っててね」


「何かしようとしたらすぐにわらわたちに報告するのじゃ」


「いつでも始末するから」


 と言って、シアンたちは前を見た。怒り狂うシアンたちを見て、ベーキウはレイダーズのことを考えた。剣聖と言う称号を手にしているため、精神的にも肉体的にも、そして人間性としても素晴らしい剣士だと考えていたのだ。だが、ふたを開ければ理想の剣聖とは真逆だった。理想と現実はやはり違うと思いつつ、ベーキウはため息を吐いた。そんな中、近くの木から半裸の女性が現れた。


「あの、すみません、助けてください」


 女性はこう言ったが、明らかに合繊音声みたいな声であり、手足の関節もどこか人形みたいな形だった。ベーキウたちは集まり、話を始めた。


「どうする、あれ?」


「人じゃないよな? 関節の形が人形みたいになっているが……」


「明らかに人形じゃろう。ヒーデブスの奴、また人形を作ってわらわたちを攻撃するつもりじゃな」


「でも、どうして変な美女の人形なんて作ったのかな?」


「僕にも分かりません」


 そんな話をしていると、美女の声を聞いたレイダーズが無理矢理体の縄を弾き飛ばし、口の猿ぐつわを外して美女の人形に飛びついた。


「お姉さーん! 今からワシとお茶しない? それとも野外プレイってのおつなもんでいいよねー!」


 怪しい美女人形に抱き着いたレイダーズを見て、ベーキウたちは呆れて言葉を失った。美女人形はダイブしてきたレイダーズに抱き着き、笑みを浮かべた。


「こんなにあっさり騙されるなんて、思ってもいなかったわ」


「え? どゆことー?」


 レイダーズが笑みを浮かべながらこう聞いた直後、美女人形は大爆発を起こした。


「あーあ、言わんこっちゃない」


「敵の罠だったんですよ」


 呆れたベーキウたちは、煙を払いながらレイダーズの音へ向かった。爆発の近くにいたレイダーズは無事だったが、周囲に散らばった人形の破片を手にして涙を浮かべていた。


「ああ……あんな美人が木っ端みじんに……うわーん! 爆発する前にやっとけばよかったー!」


「何言ってんだお前は!」


 シアンはレイダーズに近付き、その顔に飛び膝蹴りを仕掛けた。後ろに転倒したレイダーズだったが、近くの木の後ろには、同じような美女の人形がいた。


「しゃちょさーん。今日はどですかー?」


 と、不思議な言葉を使ってきているドレスの胸元を開けた。それを見たレイダーズは興奮し、その美女人形に抱き着いた。


「お姉ちゃーん! こんな森で君みたいな美女に会えるなんて思ってもいなかったよー! さっきのお姉ちゃんは爆発しちゃったからさ、君がワシを慰めてよー!」


「それじゃあ一緒に熱くなりましょう」


「わーい!」


 美女人形の言葉を聞いてレイダーズは嬉しそうな声を上げたが、美女人形の体が徐々に熱くなっていくのをレイダーズは感じた。


「あり? 君の体熱くなってるよ。一緒に熱くなるって物理的にって……」


 その後、美女人形は爆発した。呆れたベーキウたちは何も言わず、煙を払いながらレイダーズの元へ向かった。


「うそん……どうして、美女は爆発するの?」


「こんな場所で露出度が高い美女が歩いているわけがないだろうが。さっさと歩くぞ!」


 ベーキウは無理矢理レイダーズを立ち上がらせ、歩かせようとした。だが、再び美女人形が現れた。


「お疲れですか? 私と遊ばない?」


「わーい! 遊ぶ遊ぶー!」


 と、レイダーズは再び美女人形に抱き着き、再び爆発に巻き込まれた。こんな光景を続けて見たシアンは、呆れて何も言えなかった。結果、こんなバカな展開があと十回ほど続いた。


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