剣聖の実力
ヒーデブスが作った人形に倒された戦士は、レイダーズの動きを見て驚いていた。ベーキウやシアンも、レイダーズがあっという間に人形を一閃する光景を見て、驚きのあまり口を大きく開けていた。
「早い動きじゃ。老体なのに……」
右手で剣を回しながら周りの人形を見回すレイダーズを見て、クーアは思わず呟いた。
「さて。まとめてかかってきなさい。一体ずつ相手にすると、時間の無駄じゃからねぇ」
と、レイダーズは人形たちではなく、空に向かってこう言った。その時、キトリはあることを察した。
「もしかして、ヒーデブスの奴がどこかで私たちを見ているんじゃ……」
「そうかもしれませんね。だとしたら、都合よくあいつの手下がここに集まることなんて、ありえませんから」
ツバキの言葉を聞き、納得したクーアは周囲を見回してこう言った。
「おい! ヒーデブスと言う奴! 自分は引きこもってわらわの相手は手下に任せるとか、酷いことを働く奴じゃの! 男なら正々堂々と前に立って戦え!」
ヒーデブスに対し、大きな声で挑発するクーアを見て、キトリはため息を吐いた。
「そんな簡単な挑発が、相手に聞くはずないと思うけど」
クーアが放った挑発は、ヒーデブスの神経を刺激していた。
「あのエルフ。僕様を挑発させたことを生涯後悔させてやる!」
と言って、ヒーデブスは大量の人形を作り出し、大声でこう言った。
「人形たちよ! 今、僕様をバカにしたエルフを始末してこい! 倒すまで、絶対戻ってくんな!」
人形はこの命令を聞いて頭を下げ、クーアがいる場所に向かって飛びだった。それを見たヒーデブスは、心の中でこう思った。
僕様を怒らせた罰だ! ザマーミロ!
レイダーズは迫りくる人形を見て、余裕の表情で剣を構えた。
「次々と現れるねぇ。まぁその分、シアンちゃんたちにおじさんのカッコいいところをアピールするいいチャンスだけどね」
と言って、襲い掛かってきた人形の攻撃をかわし、素早く剣を振るって人形の右手を斬り落とした。その後、レイダーズは斬り落とした人形の右手を別の人形に向かって蹴り飛ばし、ひるませた。
「隙ありっ!」
大きな隙を作った人形に対し、レイダーズは力を込めて剣を振り、一閃した。別の人形たちは攻撃を終えて隙があるレイダーズに接近し、攻撃を仕掛けた。だが、レイダーズは笑みを浮かべて人形たちを見た。
「隙だらけだから攻撃するって? そんなやわな考え持っちゃだーめだーめよー?」
そう言うと、レイダーズは左足を軸にし、コマのように体を回転させた。この攻撃で、レイダーズの周囲にいた人形たちが次々と斬られていった。
「す……すげぇ」
「何だあのおっさん? 見た目と違ってかなり強いじゃねーか」
「俺たちがあんなに苦戦した人形をたった一人で……」
戦士たちは、レイダーズの無双ぶりを見て驚いていた。攻撃を終えたレイダーズは動きを止め、カッコよくポーズを決めた。
「どう? シアンちゃんたち、おじさんのこと見直したでしょ?」
「全然。まだ次がいるじゃない」
シアンの声を聞き、レイダーズは後ろを振り向いてため息を吐いた。
「仲間が大勢やられたってのに、まだおじさんと戦う気?」
呆れた様子のレイダーズはこう言ったが、人形にその言葉は届かず、人形はクーアに襲い掛かった。
「うわァァァァァ! わらわを狙ってるみたいなんだけど!」
「あいつに挑発したからじゃない?」
「やっぱり。あいつは僕たちのことを監視してたんですよ」
キトリとツバキの言葉を聞き、クーアは逃げながら大声で叫んだ。
「分かったから何とかしてくれェェェェェェェェェェ!」
「あいよー。おじさんが助けるからねー」
剣を持ったレイダーズがクーアを追いかける人形の群れに近付き、一体を一閃した。
「人形さんたち、女の子には優しくしなくちゃいけないよ? ストーカーなんてもってのほか。そんなことやったら犯罪よ、犯罪」
と、レイダーズは人形を叱るようにこう言ったが、人形は何も言わずレイダーズに向かって剣を振り下ろした。
「やっぱり、人形に人の言葉は通じないか」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
クレイモアを持ったベーキウが現れ、近くにいた人形を一閃した。その後ろには剣を持ったシアンが次々と人形を斬り、光の魔力で吹き飛ばしていた。
「とにかくこいつらを一掃するわよ! 皆、このエロジジイに頼ってばかりじゃダメ!」
シアンの声を聞き、戦いを見ていたクーアたちも戦いに入った。ベーキウのクレイモアが人形を吹き飛ばし、シアンの光の魔力が人形をかき消し、クーアが放つ無数の魔力が人形を宙へ吹き飛ばした。そして、キトリが放つ闇の剣が人形たちを粉々に粉砕し、未熟ながらもツバキも剣を振るって人形を倒していった。
「ふむ。勇者パーティーも本気を出せば強いし、あの剣士もそこそこ強いの」
レイダーズは人形の頭を掴みながら、ベーキウたちの戦いの様子を見ていた。
数時間後、ベーキウたちはヒーデブスが放った人形たちを全滅することに成功した。
「ふぅ、やっと終わったのじゃー」
魔力を使いすぎて、疲れたクーアはその場に座った。キトリは軽くストレッチをし、シアンはあくびをして周囲を見回していた。
「敵は一掃したみたい。あとからやってくる奴もいない。とりあえずは何とかなったわね」
「そうですね。あとは……」
ツバキは周囲にいる傷付いた戦士たちを見た。戦士たちは大きな傷を負っておらず、立ち上がる者もいたが、中には重傷を負った戦士もおり、魔力を持った戦士はその戦士の傷を手当てしていた。
「今は傷を負った人たちの治療をしないとね」
「僕、近くの町で救助を呼んできます」
「お願いします、ツバキさん」
キトリは急いで町に戻るツバキに礼を言った後、シアンの方を向いた。
「救助隊がくるまで、私たちで何とかしましょう」
「オッケー」
会話を終えたシアンとキトリは、魔力を開放して傷付いた戦士たちの治療を始めた。その魔力を感じたレイダーズは、笑みを浮かべてこう思った。
この魔力の力なら、重傷を負った戦士もそれなりに回復するじゃろう。急がなくても、大丈夫そうだ。
そう思い、横になって少し寝ようとしたが、クーアがレイダーズの額を突いてこう言った。
「おいエロジジイ。お前も救助活動に参加せんか」
「ワシが? かよわいエロジジイに力仕事ができると思ってるの? クーアたん」
「たんって言うのを止めんか! ベーキウに言われたら少しうれしいが、お前みたいなエロジジイに言われても少しも嬉しくないわ!」
「えー、そんなこと言わないでよー」
そう言いながら、レイダーズはクーアの太ももをなでまわすように触った。あまりの気持ち悪さにクーアの全身に鳥肌が立った。
「気持ち悪いことすんな、この色ボケクソジジイがァァァァァァァァァァ!」
クーアは魔力を開放し、レイダーズに攻撃を仕掛けた。だが、レイダーズは瞬時に攻撃を回避し、クーアの背後に回って尻を触った。
「怒らないで、クーアたん。もうちょっと笑顔でいようよ」
「そんなことされて笑顔になる奴がどこにいるかァァァァァ!」
クーアは後ろにいるレイダーズに回し蹴りを放ったが、レイダーズは高くジャンプして蹴りをかわし、背後からクーアの乳を揉んだ。
「びぎゃァァァァァァァァァァ!」
「少しぺったんだけど、まぁそれはそれでいいよね」
「お前は一度! あの世へ逝けェェェェェェェェェェ!」
クーアはレイダーズの腕をつかみ、力を込めて背負い投げをした。背中から落ちたレイダーズは痛そうな表情をしたが、クーアの乳を揉んだせいか、顔に笑みが浮かんでいた。
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