季節外れの卒業式(この小説、季節設定とかあったのとか言わないで)
アグレリオの呪いが解け、騒動の元凶であるゴガツは無事に警察のお世話になった。その後、アマザラシ高等学校は今回の騒動について、全生徒と全教師に伝えた。
「とりあえず、モンスター騒動は収まったってわけか」
「いやー、まさかモンスターの正体が古に呪われた王子様だったなんてねー」
「ゴガツが捕まった? あのビッチ、ようやく捕まったのか」
などと、生徒たちは話をしていた。女子生徒もこの話題で話を盛り上げていた。話をする中、女子生徒の一人がぽつりとこう言った。
「今思ったんだけど、騒動が終わったってことは、ベーキウさんともお別れってことじゃない?」
この言葉を聞いた他の女子生徒は、悲鳴を上げた。男子生徒もシアンとキトリのことを考え、頭を抱えた。
「そうだった。勇者とキトリちゃんとの別れがあった」
「ああ、勇者派とキトリちゃん派でいろいろ話し合っていた時が懐かしい」
「キトリちゃんに告白すればよかった」
「ダメだろ、キトリちゃんはベーキウ先生に惚の字だからなー」
と、男子生徒は話をしていた。この話を聞いていたクーアは怒りのオーラを発し、男子生徒に近付いた。
「そこの男子たち、誰か一人を忘れてないか?」
男子生徒たちは一瞬だけ顔を上げてクーアの方を見て、急いでクーアから距離を取った。
「うわァァァァァァァァァァ! キトリちゃんと離れるのは嫌だァァァァァァァァァァ!」
「時よ、戻ってくれェェェェェェェェェェ!」
「おいこのクソガキ! わらわみたいなピッチピチのJKが話しかけてくるんじゃ、離れるなんて失礼じゃと思わぬか!」
「うわァァァァァァァァァァ! 加齢臭ババアが近付いてくる!」
「逃げろ! あの臭いだけは耐えられない!」
「あんただけはすぐにどっか行ってくれェェェェェェェェェェ!」
男子生徒は悲鳴を上げながらクーアから逃げ、クーアは奇声を上げながら男子生徒を追いかけた。そんな中、チャイムが鳴り響いた。
「生徒のみなさァァァァァァァァァァん! 今から勇者パーティーの卒業式が行われますのでぇ、体育館に集合してくださいこのバカチンがァァァァァァァァァァ!」
「ゴールドエイト先生、最後のバカチンはいりません。つーことで、今すぐ体育館に集合してくれー」
オーガツカの言葉の後、チャイムが再び鳴り響いた。
クーアは急いで体育館に向かい、ステージ裏で待機しているベーキウたち、そしてジャオウたちと合流した。
「何じゃ、お前たちもいるのか」
「お礼を渡したいと言われてな」
ジャオウの言葉を聞き、クーアは納得したようにうなずいた。それからしばらくして、勇者パーティーの卒業式の開幕宣言が行われた。最初に校長があれこれ言った後、校長がステージ裏にいるベーキウたちの方を見てこう言った。
「では勇者パーティー、そして今回の騒動解決に力を貸してくれた皆様の登場です。生徒の皆さん、拍手をお願いします」
校長の言葉の後、拍手が鳴り出した。シアンは代表として最初に姿を現し、次にベーキウとキトリが姿を現した。
「いやァァァァァ! 卒業しないでベーキウせんせェェェェェい!」
「これからもずっと私たちの先生でいて!」
「別れるなんて、嫌ですよォォォォォ!」
と、女子生徒は泣き叫んだ。男子生徒の一部はシアンやキトリへの愛のメッセージが書かれた旗を振り回し、キトリの名を叫んでいた。その様子を見ていたクーアは、歯ぎしりしていた。
クソが。どうしてわらわよりあの二人の方が人気あるんじゃ? こうなったら、派手に目立ってやる!
そう思ったクーアは、近くにあった派手な衣装に着替え、ステージ上に姿を現した。その姿を見た生徒たちは、一瞬にして静かになった。
「おいコラァァァァァ! ベーキウたちとの扱いに差がありすぎるじゃろうがァァァァァ! わらわに対して何か一言、何かメッセージはないのか?」
「加齢臭がきついです!」
「ババアが若作りするな!」
「勇者やキトリちゃんの前に立つんじゃねぇ! 二人の姿が見えないだろうが!」
罵倒じみた野次を聞き、キトリは魔力を開放した。
「このクソガキがァァァァァ! 貴様ら全員塵にしてやろうかァァァァァ!」
「ちょっと、待ってください! 相手は子供ですよ!」
アルムは急いでクーアを止めに入った。アルムの姿を見た一部の男子生徒はアルムの美しさを見て呆然とした。
「うォォォォォォォォォォ! 一体誰なんだ、あの美人は?」
「もしかして、勇者パーティーの知り合いか?」
「メアド教えてー!」
男子生徒はシアンやキトリの愛のメッセージが書かれた旗をその場に捨て、アルムに興奮し始めた。レリルはあくびをしながらステージ上に現れ、アルムのズボンを掴んだ。
「発情期の男子たちー。今からあんたらに真実ってのを見せてあげるから、冷静になりなさーい」
と言って、アルムのズボンをずり下し、アルムのあれを丸出しにした。
「うわァァァァァ! またこの技をやらないでください!」
「仕方ないじゃなーい。うるさい発情期たちを静かにするには、これしか方法ないじゃなーい」
レリルは口笛を吹きながらこう言った。とんでもない光景を見た生徒たちだったが、それが逆に男子生徒たちの心に火を付けた。
「うォォォォォォォォォォ! かわいくて立派なものがあるなんて、お得じゃないか!」
「かわいければ男でも興奮するんだよ!」
「ヒャッハー! いいものを見れたわァァァァァ!」
生徒たちは、アルムを見て歓喜の声を上げた。ベーキウは呆れたように頭を抱えたが、人気を奪われたシアンとキトリはジト目でアルムを睨んでいた。
いろいろとトラブルがあったが、式は順調に進んだ。しばらくして、ケンマツが白馬に乗ってステージ上に現れた。
「うわ……馬をステージの上に上がらせても大丈夫なのか?」
ジャオウはステージ上に現れた白馬を見て、驚いて呟いた。ケンマツは白馬から降り、懐からエメラルドを取り出し、シアンとジャオウに渡した。
「これが自然のエメラルドだ。お主らが欲しかった宝石だ」
自然のエメラルドを手にしたシアンは歓喜の声を上げ、ジャオウは歓喜のあまり涙を流した。
「今回、君たちにはいろいろと世話になった。旅はまだ続くと思うが、気が向いた時でもいいからこのアマザラシ高等学校に戻ってきてくれ。たとえ旅人であろうとも、君たちはこの学校を卒業した。この学校の生徒、教師であることには変わりない」
ケンマツの言葉を聞き、ベーキウたちは返事をした。その後、ケンマツは羽織っている着物を脱ぎ棄てた。着物の下には、派手なサンバの衣装だった。
「ではメインイベント! ケンマツサンバで卒業式を閉幕する!」
この直後、ノリのいいサンバの音楽が流れ始めた。生徒たちはその動きに合わせてサンバを踊り出し、ケンマツも見事な動きで踊り始めた。
卒業式が終わった後、外にいたベルリアとアグレリオがベーキウたちに近付いた。
「もうどこかに行くの?」
ベルリアがこう言うと、シアンは頷いた。
「ええ。あと二つ、欲しい道具があるから」
「今回は……本当にお世話になったわ」
「君たちのおかげで、私の呪いも解くことができた。本当にありがとう」
アグレリオがそう言うと、ベルリアとアグレリオは頭を下げた。シアンは顔を上げてと言い、二人にこう言った。
「二人とも、いろいろあると思うけれど、二人なら障害を乗り越えるって私は思っているわ。幸せにね」
と言って、シアンはウインクをした。その後、ベーキウたちがベルリアとアグレリオと話をする中、ジャオウはアルムとレリルにこう言った。
「次は勇者パーティーとは別の大陸に行こう」
「そうだね」
そんな話をしていると、レリルは笑みを浮かべながらジャオウに近付いた。
「ナイスタイミングね。あいつら、次はバラローズって国に行くみたいよ」
「そうか。では、次の俺たちの狙いは空色の勾玉だな」
「うん。今すぐ行く?」
「もちろんだ」
ジャオウはそう言って、マントを翻し、アルムとレリルとともに去って行った。
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