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てんやわんやのお祭り騒ぎ


 クーアが放った魔力の塊は、ソーオンヤカマシーに命中し、花火のような音を発しながら破裂した。


「うわわわわわ! すごい音だ!」


 ベーキウが乗るヘリコプターを操るパイロットは、慌てながらこう言った。ベーキウは耳鳴りがする耳を抑えながら、ソーオンヤカマシーの方を見ていた。


「これで終わったのか?」


 そう呟くと、ソーオンヤカマシーはゆっくりと体を動かしながら下へ落ちて行った。その時、ソーオンヤカマシーの上に乗っていたシアンとクーアがヘリコプター内にいるベーキウに向かって空を飛んでいた。


「ベーキウー!」


「わらわやったよー! 褒めて褒めて!」


 いきなりシアンとクーアに抱き着かれたせいで、ベーキウは動けなかった。何とか上に乗るシアンとクーアをどかした後、ベーキウはこう言った。


「よくやったよ。俺なんて、何もできなかった」


「いざって時は私が頑張るから大丈夫よ! だって勇者だもん!」


「わらわもいるぞ! はっきり言えば、勇者より役に立つぞ!」


 その言葉を聞いたシアンは、クーアの方を睨んだ。


「私の魔力がなければ、あのバカでかい鳥を始末できなかったのによく言えるわねおばさん!」


「ほとんどはわらわの魔力でやったよーなもんじゃ! お前一人の力じゃないわ!」


「まあまあ落ち着けよ。二人の力で倒したようなもんじゃないか」


 ヘリコプター内で口喧嘩を始めるシアンとクーアを見て、ベーキウはなだめようとした。そんな中、パイロットは呆れたようにため息を吐きながらこう言った。


「とりあえずラフトの町に戻りますねー」




 ベーキウたちが倒したソーオンヤカマシーは、ラフトの町の門の外に倒れていた。町の人や戦士たちは、倒れたソーオンヤカマシーを見て驚いていた。


「こりゃまぁでかいな」


「こんなに大きな鳥のモンスターがいるなんて思ってもいなかったわ」


「焼き鳥何本くらいできるかなー?」


「下手したら、一生分の焼き鳥が作れるぞ」


 などと、人々は話をしていた。キトリは町の外へ出て、ベーキウたちが乗るヘリコプターが着陸するのを待った。しばらくして、ベーキウたちが乗るヘリコプターが着陸した。扉が開くと、そこにはベーキウとベーキウに抱き着くシアンとクーアの姿があった。


「すまないキトリ。待たせた」


「ううん。いつか戻るって分かってたから待った気なんてないわ。お疲れ様、ベーキウ」


「その言葉は俺よりシアンとクーアに言ってくれ。俺は何もできなかったよ」


 と、ベーキウは少し困ったと思わせるような顔でこう言った。その顔を見たキトリは、ベーキウに近付いてこう言った。


「あの二人はベーキウがいたから頑張れたと思うの。だから、何もできなかったわけじゃないわ」


「そうだといいが」


 キトリの励ましの言葉を聞いたベーキウは、にやけた顔で自身に抱き着くシアンとクーアの顔を見て、自分の存在がそれなりに役に立ったのだと思った。




 その日の夜、リフトの町はソーオンヤカマシーを素材とした焼き鳥パーティーを行っていた。


「ウエッヘーイ! わらわのおかげでこの鳥を倒せたのじゃーい! わらわを褒めよ! 称えよー!」


 クーアは高台の上でこう叫んだ。その手には焼き鳥の串と、大きなビールジョッキが握られていた。呆れた様子のシアンは、叫ぶクーアを見て呟いた。


「あれじゃあやってることがおっさんじゃないの」


「まぁ……何と言うか……年相応だと……思う」


 キトリはクーアの実年齢を思い出しながら、オレンジジュースを飲んだ。ベーキウは困ったように笑みを返すと、楽しそうにはしゃぐ町の人を見回した。


「でもま、皆が活躍したからこの町を守れたからさ、たまにははしゃいでもいいんじゃないか?」


「それもそうね」


 シアンはそう言うと、着ている服を脱ぎながらベーキウに近付いた。その様子を見たベーキウとキトリは口にしていた物を吹き出してしまった。


「ゲホッ! ゲホッ! 何やってんだシアン!」


「周りには人がいるのに、ストリップショーは止めて。勇者としてみっともないわよ」


「ベーキウー、私頭がくらくらするのー。私を介抱していろいろと開放してよー」


 そう言いながら、シアンはベーキウを押し倒した。キトリはもしやと思い、シアンが飲んでいたジュースのビンを見た。そこには、アルコールが入っているから未成年は飲んじゃダメよと注意文があった。


「もしかして……ジュースと間違えてお酒を……」


 キトリは察した。シアンが酔っ払ってベーキウに絡んでいるのだと。そんな中、半裸のシアンはエロ親父のような顔をしながらベーキウの服を脱がそうとしていた。


「ベーキウ。私も脱いだんだからベーキウも脱いでよー」


「何だよその理屈は! 無理矢理じゃないか!」


「無理矢理じゃない! とにかく脱げェェェェェ!」


 そう言いながら、シアンは無理矢理ベーキウの服を破いた。ベーキウの鍛えた体を見た周囲の女性やちょっと変わった性癖を持っている男たちは一斉にベーキウの体を見た。


「きゃー! カッコイイー!」


「この人、すごいいい体! この人に抱かれたい!」


「ウホッ! いい体!」


「やりますねぇ」


「いい男の体を見ると、全身の血がみなぎってくるぜ!」


 などと、人々は声を漏らした。ベーキウが上半身裸になったことを察したクーアは、高台から猛スピードでベーキウに抱き着いた。


「お前らのような変態がベーキウの裸を見るなー! ベーキウはわらわのもんじゃ! 両腕のたくましい筋肉や、両足のバッキバキの筋肉、そして六つに割れた腹や枕のように分厚い胸板も! 右の乳首も左の乳首もわらわのもんじゃ!」


「ババアは黙ってろ! ベーキウは私の彼氏じゃァァァァァァァァァァ!」


 酔っぱらったシアンはベーキウの筋肉を舐めまわすクーアに向かって飛び蹴りを放った。飛び蹴りを受けたクーアは転倒するも態勢を整え、ベーキウの体中にキスをするシアンに近付いた。


「この青尻のチビ勇者! 身長も胸もないガキがわらわからベーキウを奪うな! お前はこれでも喰らってろ!」


 と言うと、クーアはシアンに向かって息を吐いた。その息を嗅いだシアンの顔は、急に青くなった。


「くっせェェェェェ! 腐った酒の臭いがするゥゥゥゥゥ!」


「げははははは! 酒の力舐めんなー! 分かったらさっさとベーキウから離れい!」


 鼻を抑えるシアンを見て、クーアは高笑いをしながらベーキウに抱き着こうとした。そんなバカを見ている人たちは、もっと騒動が大きくなるように煽っているため、誰もベーキウを助けようとはしなかった。


「はやく……誰か……このカオスな状況を何とかしてくれ」


 ベーキウが涙声でこう言うと、キトリが魔力を解放してシアンとクーアを吹き飛ばした。


「はぁ……これ以上騒ぎを広げないでよ……」


 ため息を吐きながらキトリはそう言うと、倒れているベーキウの手を握り、立ち上がらせた。


「とりあえず食事も終わったし、宿に戻ろうよ」


「ああ……そうだな。早く寝たい……」


 ベーキウは破れた服を手にし、キトリと一緒に宿屋へ戻った。




 翌日、キトリはため息を吐きながらベッドで横になっているシアンとクーアに水が入ったコップを渡していた。


「頭が痛い……吐き気がする……体がだるい……」


「うげぇ……私、昨日何があったの? 全然覚えてない……」


 苦しそうな声を上げるシアンとクーアを見て、キトリは呆れてこう言った。


「二日酔いよ。シアンは間違えて飲んだからノーカンにするけど、クーアは自業自得だと思うわ」


「そんな……それより……ベーキウは? ベーキウがいれば、この酔いもよくなるかもしれないから……」


「お守りを貰いに行ったわ。さっき、テッコウさんからお守りができたって連絡があったのよ」


 その言葉を聞いたシアンは立ち上がろうとした。だが、いきなり立ち上がったせいで、酔いの苦しみと頭痛の痛みが強くなった。


「急に起き上がるからよ。とにかく、今日は気分がよくなるまでここで寝てて」


 キトリはそう言うと、再び大きなため息を吐いた。


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