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魂を食う大剣の最期


 イートソウルはクーアが放った炎の魔力を、魂を吸い取る要領で吸い取っていた。吸い込まれていく炎を見て、クーアは驚きの表情をしていた。


「何じゃと! あの剣、わらわの魔力を吸い取ることもできるのか!」


 クーアは攻撃が無意味であることを察し、魔力を抑えて炎を消した。イートソウルを構えるゴガツは、不敵な笑みでクーアを見ていた。


「うっふふふ。残念だったわね。あなたの強力な炎も、こいつが飲んじゃったわね」


 そう言ったのだが、ゴガツは再びイートソウルに体を乗っ取られた。


「あっぢやァァァァァァァァァァ! 炎を飲むなんて無茶なこと、しなければよかった! 刃の中がめっちゃ熱い! 中から高熱がジワリと襲ってくる感覚だよ!」


 熱そうに叫ぶイートソウルを見て、ため息を吐いてキトリは呟いた。


「一応ダメージは受けたみたいね」


 その後、ゴガツは体を取り戻し、クーアを睨んだ。


「さぁ、あんたの人生もここまでよ! かわいそうだから、念仏の一つでも唱えてあげるわよ!」


「そんなもん必要ないわい! 貴様みたいなひよっこが、わらわに勝てると思うなよォォォォォ!」


「ねぇ、あまり悪党が言うようなセリフを言わないでよ。負けるじゃない」


 キトリは小さな声でクーアにそう言ったが、突如クーアの動きは止まった。


「はぁ。わらわの出番はこれで終わりか」


「みたいね。私たちも早くアグレリオの治療に行くわよ」


 と言って、キトリは急いでアグレリオの元へ向かった。クーアは後頭部をかきつつ、シアンに向かって叫んだ。


「シアーン。お前がこいつを倒さないと、後々で面倒になるから、ちゃーんと倒せよー」


「あんたに言われなくても分かっているわよ、おばさん」


 シアンは呆れた表情でこう言った。シアンが持つ剣の刃からは、大きくて幅広い光の刃が放たれていた。


「さぁ、とっととこんなくだらない戦いを終わらせるわよ」


 と言って、シアンは剣を構えた。




 ベーキウとジャオウはシアンが解放した力を見て、すごいと心の中で思っていた。


「すごい力だ。最初、戦った時はあんな力がなかったはずだが……」


「今回の旅で、経験と力を積んだんだ。最初にお前に倒されたころの俺たちじゃない」


 ベーキウの言葉を聞き、ジャオウは最初にベーキウとシアンと戦った時のことを思い出し、小さく笑った。


「そうだな。次に戦う時が楽しみだ」


「いつかは決着を付けよう。だが今は、この戦いを見守るぞ」


「ああ」


 ベーキウとジャオウは話を終え、シアンの戦いを見守った。




 シアンから放たれる光の魔力を感じ、イートソウルは身震いしていた。


「あーもう! あんたバイブレーション機能なんてあったっけ? たかが大剣にそんな機能いらないわよ! あんたみたいなもので夜のあれに使っても、気持ちよくなさそうだし!」


「バカ言うな! 恐怖で体が震えてんだよ! 降参してくれ、あんな攻撃を受け止めたら俺は消滅する!」


 イートソウルの言葉を聞いたゴガツだったが、ゴガツはイートソウルを見下して叫んだ。


「たかが剣が私に命令すんなっつーの! まぁいいわ。私が協力してあげるから、あの勇者の魂を喰らいなさい!」


「いや、ここは逃げに専念して! 俺、まだ死にたくない!」


 イートソウルは泣くように懇願したが、目の前には剣を持ったシアンが迫っていた。


「はっ! 勇者ってのは、足が速いのね!」


「あんたら一般人より、足は速いって自覚してるわ!」


 シアンは叫びながら、剣を振り下ろした。ゴガツはイートソウルを使ってシアンの攻撃を防御したが、光の刃はイートソウルの刃に半分めり込んだ。


「イッデェェェェェェェェェェ! だから言ったじゃん! 勇者の攻撃に俺は勝てないって!」


「勝手に勝てないって決めつけない!」


「いやいやいやいや、この状況をちゃんと見て! 光の刃が俺の体にめり込んでる! 俺、ダメージ喰らってる! 下手したらどうなるか分かってる?」


「呪いの大剣でしょ? 剣の一部がめり込んだからってピーピー泣き言を叫ぶんじゃないわよ!」


「これ、尋常じゃないほどの痛さなんだよ! 例えると、ものすごい勢いで飛んできた円柱が、体に刺さるレベルの痛さ!」


「たとえが分かりづらいわ!」


「ギャーギャー話をするのは止めなさい!」


 シアンは剣を振り上げ、追撃を放とうとした。ゴガツは急いでイートソウルを突きの構えにし、シアンの体に向かって動かした。迫るイートソウルの刃を見て、シアンはため息を吐いた。


「仕方ないわね」


 そう言って、シアンは剣を振り下ろした。光の刃は再びイートソウルの刃に命中し、先端部分を削るように消してしまった。


「イッギャァァァァァァァァァァァァァァァ! 俺の体が! 俺の体が消滅しちゃったよォォォォォ! 痛い! 滅茶苦茶痛い!」


「うっさいわね! いちいち私の体を乗っ取って痛さをアピールしないでよ! それにあんた、剣なんだから痛みも何も感じないでしょ?」


「俺は生きてるの。生きてる剣なの! だから普通の生き物と同じように痛みも感じるの! その辺分かる?」


「大体理解したわ」


 ゴガツとイートソウルの会話中、シアンは剣を横に振って攻撃してきた。ゴガツはイートソウルを盾にしたが、再びイートソウルの刃は消滅した。


「ギャァァァァァァァァァァ! 分かってる? マジで本当に理解してる?」


「一応理解してるって言ったでしょうが! 戦いの邪魔だから喋らないで! そんなんだから、刃の半分が消滅したのよ!」


「お前が俺を盾にしたからだろうが! あー災難だ! こんな整形面で酷い性格の女に滅茶苦茶な扱いをされるとは思ってもなかったわ!」


「だーれが整形面よォォォォォ!」


 怒りのあまり、ゴガツはイートソウルをシアンに向かって投げた。シアンは飛んでくるイートソウルを見て、笑みを浮かべた。


「好都合! これなら、楽にあいつを消滅させれる!」


 と言って、シアンは再び魔力を開放した。放たれていた光の刃はさらに大きくなり、放つ光も強さが増した。


「呪いの大剣イートソウル! あんたはここで消えるのよ!」


 シアンはイートソウルに向かってこう言うと、剣を振り下ろした。光の刃はイートソウルを包み、その体をゆっくりと塵にしていった。そんな中、イートソウルから声が響いた。


「チクショォォォォォォォォォォ! この俺が! この俺がこんなところで消えちまうなんて! まだ……まだ俺は魂を満足するほど食ってねーんだよォォォォォ!」


 イートソウルはそう叫んでいたが、しばらくして完全にイートソウルの体は塵となって消えた。シアンは魔力を抑え、光の刃を消した。


「ふぅ……とりあえずどうにかなったわね」


 と言って、シアンはその場に座り込んだ。




 戦いが終わり、座り込んだシアンを見たゴガツは、心の中でこう思った。


 今がチャーンス。弱った勇者をボッコボコにしてメンタルを破壊して、私の下僕にしてやろーっと。


 そんな悪いことを考えたゴガツは、急いでシアンに向かって突進を仕掛けた。だが、その途中でゴールドエイトが現れ、ゴガツにビンタをした。


「止めなさい! これ以上悪行を重ねるのは止めなさい! このバカチンがァァァァァァァァァァ!」


 と言って、ゴールドエイトは何度もゴガツの頬にビンタを放った。この光景を見たオーガツカは、呆れた表情でケンマツに尋ねた。


「一応、止めた方がいいっすかね?」


「しばらくほっといておこう。あの少女には、それなりに痛みを伴った罰が必要だ」


「りょーかいっす。でも、あの人が暴走しそうになったら止めますんで」


「頼む」


 オーガツカとケンマツはそう言って、ひたすらゴガツにビンタするゴールドエイトを見ていた。


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