欲深い奴らはどうしようもない戒めを受ける
ベルリアは自身に攻撃が迫ることを察し、反射的に両腕を前に出して目をつぶった。だが、しばらく待っても痛みは襲ってこなかった。恐る恐る目を開けると、そこには盾になるように両手を広げて立っているアグレリオの姿があった。
「あ……アグレリオ……」
「怪我がなくて……よかったよ」
アグレリオはそう言うと、傷から血を流してその場に倒れた。その光景を見たアルムは急いでアグレリオに近付き、手当てを行った。アグレリオを斬ったイートソウルは動揺し、後ろに下がった。
「嘘? どうして? 俺はそんなことをするつもりはなかったのに! あんな弱い奴の魔力を吸っても、腹の足しにはならないのに!」
「うるせェェェェェェェェェェ!」
シアンが怒り叫びながら、イートソウルに攻撃を仕掛けた。イートソウルは逃げようとしたのだが、両腕はイートソウルの意に反し、本体を盾にして攻撃を防いだ。
「イッデ!」
イートソウルは悲鳴を上げながら後ろに下がった。だが、武器を構えたベーキウとジャオウが魔力を開放し、イートソウルに向かって走ってきたのだ。
「ウッソォ!」
ベーキウとジャオウの魔力を感じ、このままだと勝てないと察したイートソウルは、何が何でも逃げようと思った。しかし、再び体が勝手に動いた。イートソウルの両手は本体を構え、迫るベーキウに向かって本体を振り下ろした。
「いやァァァァァァァァァァ! 勝手に動かないで! あれだけ強い魔力を受けたら壊れちゃう!」
「いいことを聞いた! 普通の攻撃でも、お前を壊すことができるのだな!」
ジャオウはありったけの魔力を開放し、大剣を振り下ろして衝撃波を発した。勢いと威力がある衝撃波を見たイートソウルは、逃げた方がいいと思った。しかし、体は言うことを聞かず、本体を強く振るって衝撃波をかき消そうとした。
「え? ちょっと待って! あんな衝撃波消すことなんてできないけど! 助けて! 勝手に動く体をどうにかしてェェェェェ!」
と、イートソウルは泣きながらこう言ったが、悪党の泣き言などベーキウとジャオウは耳にしなかった。イートソウル本体とジャオウが放った衝撃波がぶつかり合い、その衝撃で周囲に砂煙が舞った。ベーキウはクレイモアを強く振るって砂煙をかき消し、動揺するイートソウルの姿を見つけた。
「どうしよう、このままだとまたやられ……ゲ!」
イートソウルは迫りくるベーキウの姿を見て、あたふたしていた。その時、突如イートソウルの意識が薄くなった。
「あれ? 俺の意識が……」
「やーっと取り戻せたわ。私の体!」
突如、口調がゴガツのような口調に変わった。驚いたベーキウは動きを止めてしまったが、その隙にゴガツはイートソウルを投げてベーキウに攻撃した。
「グッ!」
ベーキウはクレイモアを上に振り上げてイートソウルを吹き飛ばしたが、ゴガツはベーキウを抑え込んだ。
「お前……元に戻ったのか?」
「そりゃーそうよ! あんなへんてこな呪いの剣に乗っ取られる私じゃないわ! 隙を見て、奪い返したのよ! どさくさに紛れてベルリアを殺そうとして失敗したけど、まぁいいわ! このままあんたを犯してやるわ!」
と言って、ゴガツは無理矢理ベーキウのズボンを下ろそうとした。その光景を見たクーアとキトリは怒りで魔力を開放し、ゴガツに襲い掛かった。
「このクソビッチがァァァァァァァァァァ!」
「ベーキウは絶対に渡さない!」
迫るクーアとキトリを見て、ゴガツは笑みを浮かべて右手を動かした。すると、遠くに落ちていたイートソウルが動き出し、ゴガツの右手へ向かって飛んできた。
「なっ!」
「この剣は私の物よ! だからこうして、自由に動かせるのよ!」
「あのー、それはあんたが俺の力を奪ったからでは……」
「うっさいわね、このバカ剣! ご主人様に逆らうんじゃないわよ! と言うわけで、お前ら全員切り裂いてあげるわ!」
ゴガツはそう言って、クーアとキトリに襲い掛かった。
ゴガツの攻撃からベルリアをかばったアグレリオは、苦しそうに息を吐いていた。
「アグレリオ! 死なないでよ、アグレリオ!」
「落ち着きなさい。アルムが治療してくれてんだから!」
レリルは動揺するベルリアを抑えつつ、アルムの方を見た。
「で、傷の方はどうなのよ? 順調に手当できてるようには見えるけど」
レリルは楽観的な態度でこう言ったが、アルムは目をつぶった。
「集中させてください。僕の予想以上にアグレリオさんの傷は深いです。これだけ魔力を使って治療しても、血が止まりません」
「そんな……」
アルムの言葉を聞いたベルリアは、ショックのあまりその場で座り込んだ。レリルは急いでアルムに近付き、魔力を注いだ。
「何が何でもアグレリオを治すわよ! 呪いを解くって言ったんだから、その前に死なれちゃ困るのよ!」
「レリルさん……」
アルムはレリルの魔力を感じつつ、アグレリオの傷が速く塞がるために魔力を開放した。
クーアは魔力を使いつつ、ゴガツの攻撃を対処していた。しかし、ゴガツはイートソウルを使って無理矢理クーアに攻撃をしていた。
「ハッハッハー! 勇者パーティーってこんなもんなの? これなら楽に倒せるわねー!」
「あだっ! いだっ! あのちょっと、もう少し丁寧に扱ってちょーだいよ!」
「うっさいわね! たかが剣がギャーギャーうるさいのよ!」
「俺はただの剣じゃない。呪いの大剣だ!」
「普通の剣と見た目同じじゃない! うだうだ泣き言言ってんじゃないわよ!」
ゴガツは時折イートソウルに意識を奪われるが、すぐに取り戻しては攻撃を行っていた。ゴガツの攻撃は自我を持っている状態。そして、ゴガツはただ力任せにイートソウルを振り回している。剣を使い慣れていなく、戦い慣れていないゴガツだが、クーアは予想以上に苦戦していた。
予想外じゃった。戦いのド素人じゃと思ったが、力任せに戦うから次にどんな動きをするか予想できない!
クーアの苦戦の理由、それは動きを見切れないことである。何度も戦いの経験を積んだ敵と戦ったクーアは、敵の動きを時折予想しつつ動いていた。だが、ゴガツは斬る以外のことを考えずに動いているため、思考時間がなかったのだ。
「クーア!」
危険だと判断したキトリは、闇を使ってゴガツの動きを封じようとした。ゴガツはキトリの邪魔に気付かず、無我夢中でクーアに攻撃を仕掛けていた。その結果、キトリが放った闇はゴガツの足を捕まえた。
「んなっ!」
「よっしゃ! ナイスじゃキトリー!」
クーアは後ろに下がって魔力を開放し、巨大な炎を発した。それを見たゴールドエイトは、泣きながらクーアに近付いた。
「止めなさい! 私の生徒をこんがり焼くつもりですかァァァァァ?」
「ああいうクソビッチには一度痛い目を見せないとダメなのじゃ! 親や教師たちがあいつにいろいろと言わなかったから、あんなモンスターが生まれたのじゃ!」
と言って、クーアはゴールドエイトを蹴り飛ばして巨大な炎をゴガツに向かって放った。
「チッ、仕方ないわね」
ゴガツは迫る炎を見て舌打ちをすると、手にしていたイートソウルを思いっきり炎の中に投げ込んだ。
ギャァァァァァァァァァァ! この炎で体は消えないけどこれは熱いよォォォォォ!
炎の中に投げ込まれたイートソウルは、心の中で大きな悲鳴を上げていた。
「さぁ、食いなさいイートソウル! 魂を食うあんたなら、炎ぐらい食べられるでしょ!」
ゴガツの無茶を聞き、イートソウルは嫌だと思った。だが、このままだと熱いので、嫌だと思いつつ、魂を吸い取る要領で炎を吸い込もうとした。
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