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どんな強敵も多人数で戦えば怖くない


 クーアのドジにより、シアンが一時的に行動不能になってしまった。その間、ベーキウはイートソウルと戦うことを決意した。


「俺があいつを食い止める。皆は隙を突いて攻撃してくれ」


「無茶しないでくださいね」


「何かあったら、戻ってね」


 アルムとキトリにこう言われ、ベーキウはクレイモアを構えてイートソウルに向かって歩き出した。一人で立ち向かうベーキウを見たイートソウルは、大声で笑い始めた。


「おいおいおいおい、お前一人で挑むつもりか? 相当な自信を持っているが、俺を倒すことはできないぜ!」


「やってみないと分からない」


 ベーキウはクレイモアを振り上げ、イートソウルに向かって振り下ろした。イートソウルは本体を使ってベーキウの攻撃を防御したが、イートソウルの顔に苦痛の色が見えた。


 やはりな。


 その顔を見たベーキウは、心の中でそう思った。イートソウルは後ろに下がり、ベーキウと距離を開けた。


「おいおいおいおい、人を見下すようなことを言っている割には、俺の一撃を防いで後ろに下がってんじゃねーか」


 ベーキウは笑みを浮かべながら、イートソウルに向かってこう言った。イートソウルは唾を吐き、構えをとった。


「うるせぇ! クソッ! 女の体なぞ奪わなければよかった! 力がないからまともに戦えない!」


 イートソウルの独り言を聞いたベーキウは、もう一度笑みを浮かべた。その笑みを見たイートソウルは苛立ち、大声で怒鳴った。


「何だその顔は!」


「お前の弱点を理解したんだ」


「弱点だと? 悪いが、俺にそんなものは存在しない!」


 叫び声を上げながら、イートソウルはベーキウに襲い掛かった。ベーキウは呼吸をし、イートソウルを睨んでいた。動じないベーキウを見たレリルは、慌てた声を発した。


「ちょっと! 敵が向かってるってのにどうして動かないのよ! あれじゃあ斬られる、援護に行くわ!」


 援護に行こうとしたレリルだったが、キトリとアルムが手でレリルの行く手を阻んだ。


「ちょっと! ほっといていいの?」


「ベーキウはあいつの弱点を理解したって言ってたわ」


「僕もあいつの弱点を理解しました。僕たちはベーキウさんが隙を作った後で動きましょう」


 この言葉を聞き、レリルはうなり声を上げながら後ろに下がり、座り込んだ。


「分かったわよ。でも、あいつの弱点って何なの?」


「見てれば分かるわ」


 キトリの言葉を聞き、レリルはベーキウとイートソウルの戦いをじっくりと見ることにした。




 ベーキウが察したイートソウルの弱点は、二つある。まず一つ。イートソウルにダメージを与えるには本体である大剣に攻撃すればいい。ベーキウが攻撃をした時に、イートソウルが自身を使って防御した時に苦痛の顔をしたので、そのことを理解した。


 そしてもう一つの弱点。それはゴガツの体を乗っ取ったこと。ゴガツはただの性根が腐ったわがままなJKである。魔力は弱いし、体力も同年代の平均と比べて下の方である。そんな弱い体で重たい大剣を何度も振り回したら、疲れがたまるのも時間の問題である。


 クソッ! 弱い体を乗っ取ってしまった! これじゃあ俺の本来の力が出せないじゃないか!


 イートソウルは荒く呼吸を吐きながら、ベーキウと戦っていた。


「どうした? 動きが遅くなってるぞ!」


 ベーキウはそう言いながら、クレイモアを振り上げた。強烈な一閃はイートソウル本体に命中し、イートソウルは大声を上げた。


「痛い! 超痛い!」


 苦しそうにわめきながら、イートソウルは後ろに下がった。大きな隙ができたため、キトリはアルムとアイコンタクトを取り、イートソウルに接近した。


「このままあの大剣に攻撃するわ!」


「了解!」


 と言って、イートソウルに攻撃を仕掛けようとしたのだが、イートソウルは歯を食いしばりながら高く飛び上がり、ベーキウたちから距離を開けた。


「はぁ……はぁ……クソッたれが!」


 苦しそうに呼吸をするイートソウルを見て、キトリはベーキウにこう言った。


「案外早く終わりそうね」


「いや、楽観的に見ないほうがいい。ああいう時は敵が何をするか分からないからな」


 ベーキウはそう言ったが、突如イートソウルの後ろに忍び寄っていたゴールドエイトが、泣きながらイートソウルの体を封じた。


「返しなさい! 私の教え子の体を返しなさい! このバカチンがァァァァァァァァァァ!」


「おわっ! 何だ何だ!」


 突如現れたゴールドエイトを見て、イートソウルは激しく動揺した。その時、魔力を開放したクーアが両手で地面を叩き、魔力をイートソウルの足元へ送った。


「そのまま奴を抑えてくれ! わらわが奴の動きを封じる!」


 クーアはそう言ったが、イートソウルは気合でゴールドエイトを吹き飛ばし、再び高くジャンプしてクーアの攻撃を回避した。


「クッ! そう何度も攻撃を受けてたまるかよ!」


「じゃあこれでも喰らいなさい!」


 と、イートソウルの行動を予測していたレリルは、背中の羽を大きく展開して飛び上がり、宙にいるイートソウルを捕まえていた。


「なっ! 何をするんだ!」


「私も少しは役に立たないとね!」


 そう言って、レリルはイートソウルに向かって息を吐きかけた。


「うっげェェェェェェェェェェ! くっせェェェェェェェェェェ!」


 強烈な口臭を嗅いだイートソウルは、激しく嗚咽しながら落ちて行った。地面に落下したイートソウルは、震える体で何とか立ち上がろうとしたが、その近くにはケンマツとオーガツカがいた。


「生徒の体を奪って戦いをするなど、許しがたい行為だ!」


「イートソウルだか何て言ったかどーでもいいが、お前は存在しちゃいけねーな」


「はん! たかが何十年しか生きていない若造が偉そうに!」


 イートソウルは本体を地面に突き刺し、その衝撃で砂煙を発した。


「クッ! 俺たちの目をごまかすつもりか!」


「理事長、後ろに下がりましょう!」


 オーガツカは、ケンマツを支えながら後ろに下がった。イートソウルは逃げた二人を追いかけたが、その前にベーキウとキトリが現れた。


「お前の相手は俺たちだ!」


「このまま消し去る!」


 ベーキウはイートソウルに向かってクレイモアを振るった。イートソウルは反射的に高く飛んだのだが、その隙を狙ったキトリが両手から闇の魔力を発していた。


「なっ!」


「隙だらけね。一人で多人数相手に勝てるわけがないでしょ」


 キトリはそう言ったのだが、イートソウルは笑みを浮かべた。


「力があれば、大量の雑魚相手に勝てるもんだぜ、魔族のクソガキさんよぉ!」


 イートソウルは本体から強い魔力を発し、キトリに攻撃を仕掛けた。クーアのバリアを破壊するほどの威力があることを知っているベーキウは、急いでキトリの前に立った。


「ベーキウ!」


「逃げろ、キトリ!」


 このままだとベーキウが斬られる。そう思ったキトリだったが、その前にイートソウルの攻撃がベーキウに襲っていた。


 斬られたと思ったベーキウだったが、目の前にシアンとジャオウが立っており、二人が攻撃を受け止めていた。


「何とか復活させたぞ」


「まさかジャオウに助けられるとは思わなかったわ」


 シアンとジャオウはそう言った後、同時に動き、イートソウルを吹き飛ばした。


「ありがとう、助かったよ」


 ベーキウはシアンとジャオウにそう言った。ジャオウは笑みを浮かべて返事を返したが、シアンはベーキウに近付いてこう言った。


「じゃあお礼はキスで……」


「こんな状況でバカなことを言わないの」


 キトリは呆れてため息を吐いた。その後、イートソウルが態勢を整えたとことを察し、ベーキウたちは一斉にイートソウルを睨んだ。


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