やかましい鳥をぶっ倒せ!
リフトの町で鳥のモンスター、ソーオンヤカマシーと遭遇したベーキウたちは、急いで飛び去ったソーオンヤカマシーの元へ向かった。
「あいつはただでかくてやかましいだけじゃない。爪やくちばしは鉄のように硬く、どんなに頑丈で重い鎧や兜、盾でも簡単に壊しちゃうの」
キトリからソーオンヤカマシーの説明を聞いたベーキウは、恐ろしいモンスターだと思っていた。だが、着替えを終えたクーアがこう言った。
「じゃが、あいつの肉で作った焼き鳥はうまい! 肉はもちろん、レバーや皮も焼けば絶品なのじゃ! よく塩を付けて食べてたなー」
と、クーアはソーオンヤカマシーの料理を思い出しながらこう言った。話を聞いたシアンは、高台に飛び乗った。
「なら早くあいつを倒して、焼き鳥パーティーでもしないとね。先に行くよー!」
シアンは魔力を解放し、空を飛ぶソーオンヤカマシーの元へ向かった。その様子を見たクーアは声を上げた。
「バカ勇者! 一人で先走るな! 一人であのデカブツに突っ込むバカはお前だけじゃ!」
そう言って、クーアは急いで魔力を解放して飛び始めた。ベーキウは走るのを止め、周囲を見回した。
「どうかしたの、ベーキウ?」
キトリは周りを見始めたベーキウを見てこう聞いた。ベーキウはキトリの声に気付き、キトリの方を向いた。
「ああ、協力してくれる人がいればいいなーって思って周りを見てたんだ。空の戦いだ。俺は空を飛べないし、剣しか使えない、だから、弓矢か銃を使う人がいればいいなーって思ったんだけど」
「事態は把握してあります!」
と、町の兵士が銃や弓矢を持ってこう言った。ベーキウとキトリは兵士の方を向いて頭を下げた。
「ソーオンヤカマシーの相手は我々に任せてください」
「町を守るのが、我々の仕事なので!」
「あなたたちは、そこで休んでいてください!」
そう言って、兵士たちはソーオンヤカマシーの元へ向かって行った。ベーキウとキトリは互いの顔を見た後、こう言った。
「ソーオンヤカマシーを楽に倒せると思ってるわ、あの人たち」
「あれだけでかい鳥なんだ。魔力を使えない兵士じゃきっと苦戦する。俺たちも急ごう!」
会話を終えたベーキウとキトリは、急いで走り出した。
先に上空へ飛んでソーオンヤカマシーの元へ向かったシアンは、ソーオンヤカマシーの頭の後ろにいた。
「へっへー。でかくても所詮は鳥。こっそり後ろから攻撃すれば楽に倒せる!」
そう言って、シアンは剣を逆手にしてソーオンヤカマシーに攻撃をしようとした。だがその時、いきなりソーオンヤカマシーは体を回転させた。
「へっ? おわっ! ギャアッ!」
落ちそうになったシアンは、ソーオンヤカマシーのとさかを掴み、落下を防いだ。
「あ……危なかったー」
シアンは再びソーオンヤカマシーの上に乗り、もう一度攻撃を仕掛けた。
「この鳥! よくも私を落とそうとしたわね。やられたら倍返しにしてやるわ!」
シアンの怒りがこもった一撃がソーオンヤカマシーの後頭部に命中した。だが、骨が異様に硬いせいか、刃は通らなかった。
「うそん。全然ダメージを与えられない……」
びくともしないソーオンヤカマシーを見て、シアンは少し焦った。そんな中、魔力を解放して追いかけてきたクーアが合流した。
「バカ勇者。一人で無茶をするもんじゃない」
「おばさん」
「おばさん言うな。それより、少し手を貸せ。魔力で攻撃すれば、このデカブツを倒すことができる。多分な」
この言葉を聞いたシアンは、バランスを崩しながらもクーアにこう言った。
「多分って、確実に倒さないといけないのに!」
「わらわだってこいつを倒したい! じゃがのー、さっきのお前の攻撃でこいつにダメージを与えられたか?」
クーアにこう言われ、シアンは返す言葉を見つけることはできなかった。クーアはため息を吐き、シアンに近付いた。
「魔力を貸せ。お前の光の魔力なら、それなりにダメージを与えられる」
「えー? あんたが私の光を操るのー? 勇者しか使えない光の魔力を、エルフのおばさんが使えるのー?」
「いいから早くせい! 遅くなっても知らんぞ!」
クーアがこう言った直後だった。何かを見つけたソーオンヤカマシーは急降下を始めたのだ。シアンとクーアは悲鳴を上げながらソーオンヤカマシーの体を掴み、落下を防いでいた。
「あわわわ! 何でいきなり落ちてんのよー!」
「何かを見つけたんじゃろ。エサか何かを!」
慌てながらシアンとクーアが話をしていると、ソーオンヤカマシーは急上昇を始めた。
「今度は上がってる!」
「エサを食べ終えたのか?」
クーアは周囲を見回すと、ゴブリンが宙に浮いていた。
「ゴブリン? どうして空に浮いているんじゃ?」
「もしかしたら、このソーオンヤカマシーのせいだよ」
シアンがこう言った後、ソーオンヤカマシーは大きな口を開けて宙で体をじたばたさせているゴブリンを飲み込んでしまった。その光景を見たシアンは目を丸くして、口を開けていた。
「嘘……ゴブリン食べちゃったよ、この鳥。お腹壊すでしょ」
「モンスターがゴブリン食って腹を壊すわけがないじゃろうが。そもそも、このソーオンヤカマシーは何でも食べる。下手したら、わらわたちだってこいつのエサになるかもしれんのだぞ!」
「そうだね……それじゃ、ちゃちゃっとやっちゃうよ!」
シアンは魔力を解放し、クーアの手を触れた。それにより、シアンの強い魔力がクーアの体内を駆け巡った。
「うおおおおお! これが勇者の魔力か! 普通の魔力より強く感じるぞ!」
「魔力の感想を言ってないで、早く倒してよ!」
「そうじゃった。それじゃ、一気に終わらすぞ!」
クーアは魔力を解放してソーオンヤカマシーに攻撃を仕掛けようとしたその時だった。いきなりソーオンヤカマシーは体を大きく動かしたのだ。
「うわっ! また変に動き始めた!」
「まずい、もしかしたらわらわたちの存在に気付いたかも!」
「それじゃあ、私たちを空の上に飛ばしてさっきのゴブリンみたいに……」
シアンはまずいと思い、冷や汗をかいた。そんな中、下から黒い物体が現れ、ソーオンヤカマシーに命中した。
「これはまさか……キトリの闇の魔力!」
クーアはキトリの闇を見て、歓喜の声を上げた。それから、町の警備員が使っている小型のヘリコプターが現れ、その中からベーキウが姿を見せた。
「シアン! クーア! 遅くなってすまない!」
「ベーキウ! 助けにきたのね!」
シアンはベーキウの姿を見て、歓声を上げた。ベーキウは少し呆れ、シアンにこう言った。
「キトリが闇の魔力でソーオンヤカマシーの動きを止めている。今のうちに強力な一撃を放ってくれ!」
「分かった! こいつを倒すのはわらわの役目じゃ! 見ておれ、わらわの大活躍を!」
クーアはそう言って魔力を解放し、右手に魔力を発して巨大な魔力の塊を発し、ソーオンヤカマシーに向かってぶつけた。
町にいるキトリは、魔力を解放しつつ深呼吸をしていた。リラックスをして、開放している魔力を安定させるために。その様子を見ていた町の兵士は、持っていた銃や弓矢を下ろしてこう言った。
「やはり、弾や矢でははるか上空までは届かない」
「我々では、何もできないのか?」
部下の言葉を聞いた隊長らしき人物が、そうだと言って返事をした。だが、次にこう言った。
「俺たちだけでは何もできない。だが……今は俺たちより強い戦士がいる。ここは、あの人たちに任せるしかない」
「だけど、我々は兵士として、戦士としての仕事を……」
「人にはやれることとやれないことがある。やれることがあっても、できないこともある。そういう時は、恥を捨ててできる人に頼むもんだ」
と言葉を返し、隊長は息を吐いた。何もできないと知った隊長は、本当は悔しいと思っている。部下はそう思い、口を閉じた。すると、上空から花火が破裂したような音が響いた。
「な……何だ何だ!」
「今日は花火大会の予定はないぞ」
「おいおい、飛行機同士でぶつかったか?」
「そんな事件が発生するわけないだろ!」
音を聞いた兵士たちは話を始めた。だが、隊長は察した。シアンたちがソーオンヤカマシーを倒したのだと。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




