アグレリオ大ピンチ!
ゴガツの策略により、アグレリオの存在がアマザラシ高等学校中で話題となり、会議になってしまった。アグレリオのことを知っているシアンも半ば無理矢理会議に出ることになったが、アグレリオはいい人ですよーと言える雰囲気ではなく、もしそんなことを口にしたら、存在を知っているんだったらはよ倒せやなどと言われ、かなり厄介なことになるだろうと感じ、口にできないのだ。
あーあ、早く会議が終わらないかなー。
シアンはそう思いながら、机の上で落書きをしていた。そんな中、一人の教師がこう言った。
「勇者シアン! 確かあなたはベルリアさんから話を聞くため、この学校の生徒という形で編入したんでしょう? なら、話をする必要はありません! 早く討伐しに行ってください!」
モブ教師の一言がきっかけで、他の教師たちはその意見に同調して早く倒しに行ってほしいと言い始めた。別の形で面倒になってしまい、シアンは嫌な顔になった。だが、オーガツカが呆れてこう言った。
「皆さん、今すぐに倒しに行けって言われても、誰だってすぐに動けるわけがねーでしょーが」
「オーガツカ先生、あなたは生徒のことが心配じゃないんですか?」
オーガツカの言葉を聞いた教師の一人が、突っかかるようにこう言った。オーガツカはあくびをし、こう答えた。
「心配ですよ。俺は心配だから夜、あの不気味な森には絶対に近付くなって言ってあります。そんでもって、あの森には昔、処刑する時に使われた場所があって怨霊がたくさん住み着いているとか、人を食べるモンスターが何匹も住み着いている。そいつらを倒すために頭のねじがぶっ飛んだ狂気なハンターが住んでいて、そいつがいるから森の外にモンスターは現れないとか言って、嘘を教えています」
返事を聞いた教師は、眼鏡を上げながら続けるように質問をした。
「その子供のような嘘を信じているんですか? あなたの生徒たちは?」
「信じているから、被害が出ていないんすよ」
オーガツカの言葉を聞いた教師は、反論する言葉を失ったため、大人しく席に座った。オーガツカは教師たちが黙ったことを察し、続けてこう言った。
「すぐに行けって言っても無理なもんは無理。それに、もーちょい冷静になってくださいよ。危険なモンスターがいるっつーのに、どうして被害が出てないんですかね? 俺はあの話、嘘だと思いますけどね」
と言って、オーガツカは椅子に座った。しばらく沈黙が流れたが、教師の一人がこう言った。
「この話はゴガツさんから聞いたんだ。彼女が見たって言うなら、信じても……」
「あいつの話知っていますか? 自分の教室ではやりたい放題。プライベートではパパ活で荒稼ぎ。やっちゃいけないことをやりまくっている奴ですよ? そんな奴の話を真に受けるんですか? あいつのことです、きっと何か企んでいるんですよ」
「しかし! あの子はモンスターを見たって言っているんですよ!」
「見たとしても、大人しいモンスターでしょう。人に危害を加えるわけじゃないから、俺はほっといてもいいと思うんですがね」
オーガツカの言葉を聞いた教師たちは、確かにそうだと小声で呟いた。シアンはオーガツカの顔を見て、感心した表情になった。その顔に気付いたオーガツカは、シアンに向かってブイサインを作った。
オーガツカの言葉を聞き、他の教師たちはすぐにモンスターを倒す必要はないだろうと考えを持った。だが、一人だけその意見に反対する者がいた。その名はチョウマジ・メー。ちゃらんぽらんした態度、見た目のオーガツカを勝手に敵対視しているクソ真面目な先生である。
あんな奴の発言で会議の空気が変わるなんて、こんなことあってはいけない! 穏やかなモンスター? ふざけるな! 穏やかなモンスター何てこの世に存在するわけがないだろうが!
心の中でこう思ったチョウマジは、立ち上がってこう言った。
「私はすぐにでもモンスターを倒す必要があると思います!」
「あー? どうしてだ?」
嫌そうな顔をしながら、オーガツカはこう言った。その目、態度を見たチョウマジは苛立ち、机を叩いた。
「あんたの言う通りに、穏やかなモンスターがいるわけがないだろうが! 被害はないって言っているけど、それは今だけだ! いずれきっと、凶暴になって町に現れる可能性があるだろうが!」
「いずれきっと? いつの話をしてんだよお前は?」
呆れたようにため息を吐いたオーガツカは、立ち上がってチョウマジに近付いた。目の前に接近したオーガツカを見たチョウマジは動揺したが、歯を食いしばって話を続けた。
「私が未来のことを知るわけがないだろう。だが、モンスターのことだ。きっと人々を襲うだろう!」
「不確定な未来のことなんて話してんじゃねーよ。それに、モンスターは俺が生まれる前からいるって聞いてんだ。それなのに、そのモンスターによる被害はない。さて、どーしてだ? 教えてちょんまげチョウマジ君」
オーガツカに額を突かれ、チョウマジは顔が赤くなった。チョウマジも昔からモンスターがいることを知っている。だが、それなのにモンスターによる被害はないことを言われ、動揺していたのだ。何も言わないチョウマジを見て、オーガツカはこう言った。
「お前なぁ、俺のことを目の敵にしているのは分かるが、こんなことで突っかかってくんなよ。そんなことしてたら、テメーの評判下げるだけだぜー? ま、そのカチンコチンな脳みそを生クリームみたいにドロドロにしてから、意見言うんだな」
そう言って笑いながら、オーガツカはチョウマジの両肩を叩いた。なにも反論できないことを察したチョウマジだったが、オーガツカの態度でさらに怒りが募り、オーガツカに殴りかかろうとした。その時だった。突如会議室の扉が開き、派手な着物を羽織った男性が現れたのだ。その男性を見たシアンは不思議に思いつつ、オーガツカに尋ねた。
「あの人誰?」
「この学校の理事長、ケンマツさんだよ」
オーガツカの返事を聞いたシアンは、あの人が理事長なのかと思いつつ、どう動くか観察した。
「チョウマジよ。その拳を振るうのはよせ。オーガツカの言う通り、これ以上お前が何を言っても、自分自身の評判を下げるだけだ」
「ぐっ……」
チョウマジはケンマツにこう言われ、拳を引いて自席に座った。ケンマツは開いている席に座り、教師たちを見回した。
「話は聞いた。モンスターのことで騒ぎになっているようだな」
「はい理事長。今回の会議はそのために……」
「そこまで言わなくてもいい。話は聞こえていた」
ケンマツの言葉を聞き、校長は手を止めた。
「モンスターのことが不安だが、オーガツカの言う通り、今までそのモンスターは被害を出してこなかった。だから、俺たちが何もしなくても大丈夫だろう。すぐに動く必要はない」
この言葉を聞いた教師たちは、頷いたりやっぱりそうだよねと呟いていた。オーガツカは笑みを浮かべ、やっぱり話が分かる人だと思っていた。チョウマジはオーガツカの意見が通ったことを察し、悔しそうな顔になった。
「話はまとまったな。では、今回の会議はこれにて終了」
ケンマツはそう言って、会議を終わらせた。
数時間後、やつれた表情のゴガツは自室へ帰り、ベッドの上で横になった。いろいろあって疲れたが、アグレリオが倒れてベルリアは悲しみ、大泣きするだろうと考えると、ゴガツは笑いそうになった。そんな中、ゴガツが手下にしている教師から連絡があった。
「もしもし、どしたのー?」
「ゴガツ様大変です。今回の作戦も大失敗です。モンスター退治はなしになりました」
この言葉を聞き、ゴガツは大声を発した。
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