グレートティーチャーオーガツカ
職員室にて。机の上で作業をしていた鬼の種族、オーガの男性が上から響く音を聞き、上を見上げた。
「なんかうるさいっすね、何かあったんですか?」
「さぁ? もしかしたら、またゴガツさんのファンクラブか何かが騒動を起こしたんじゃ……」
横にいた教員が呆れてこう言うと、オーガの男性もため息を吐いて呆れた表情を見せた。そんな中、別の教師が慌てて職員室に入ってきた。
「大変です! 上の階で喧嘩騒動がありました!」
「やっぱり。もしかしたらまたゴガツが部下を使って何かをやらかしたんですか?」
「その通りです、オーガツカ先生!」
オーガツカと言われた男性はもう一度ため息を吐き、席を立った。
「俺、騒動を終わらせてきます」
「分かりました。穏便にお願いします」
「りょーかいっす」
オーガツカは背伸びをしながら、職員室から出て行った。
ゴガツの手下の必殺技、フォーメーションファイブで動きを封じられてしまったシアンとクーア。肥満体の手下に上乗りにされて動きを封じられた上、パンチラを見て発情していることに察したシアンは、徐々に怒りがわいてきた。
「あいつ、勇者なのにどうして本気で戦わないのよ?」
ヨーヨーを構えたベルリアがベーキウにこう聞いた。ベーキウは少し考え、こう答えた。
「あいつらはただの人間だ。感じたところ、魔力も何もない。シアンが本気を出したら、あいつらは高い確率で命を落とす」
「じゃあ、あいつらの命を奪わないように……」
「シアンなりに気を使っているんだ。だけど……プッツンしたらどうなるか」
ベーキウは不安げな表情でこう言った。その直後、シアンの怒りが爆発した。
「このスケベ野郎が! どさくさに紛れて私のパンツを見るな! 私の頬を舐めるな! 私の乳を触るなァァァァァァァァァァ!」
叫び声を上げながら、シアンは魔力を開放してしまった。だが、その理由を聞いてベーキウとベルリアは仕方ないと思った。上乗りになっていた手下は悲鳴を上げながら、窓から外に落ちて行った。その様子を見たクーアも魔力を開放し、上乗りになっている部下を吹き飛ばした。
「よーし! お前が本気を出すんなら、わらわも本気を出してあいつらをチャーシューにしてやるのじゃ!」
「まずそうなことを言わないでよ。あんなクソヤロウの肉で作ったチャーシューなんて食いたくもないわ。そもそも人の肉なんざ食えるわけないでしょうが」
「ま、それもそーじゃな」
話をした後、シアンとクーアはゴガツの手下に向かって走り出した。
「ヒッ! さっきより殺気が強い!」
「ど……どうする? 今の俺たちで対処できる相手じゃないぞ!」
「思い出せ! こいつらを倒してゴガツ様の下僕にすれば、ゴガツ様は我々を愛してくれるぞ!」
「そうか! そうだな! 愛のためなら恐怖を乗り越えて見せる!」
ゴガツの手下はそう言うと、迫るシアンとクーアを睨んだ。しばらくしてシアンとクーアは手下に接近し、攻撃を始めた。
「この豚野郎がァァァァァァァァァァ!」
「貴様ら雑魚がわらわを倒そうなど、億千万年早いのじゃァァァァァァァァァァ!」
シアンとクーアは叫び声を上げながら魔力で攻撃をし、次々とゴガツの手下をぶっ飛ばした。
「ガハァッ! つ……強い!」
「生きているだけでも奇跡」
「俺なんて勇者の生パン見ちゃったもんね」
「あ、いいなー」
「おいコラ! 今そんな話をしている場合じゃないぞ!」
ゴガツの手下たちは叫び声を上げながら、次々と散った。残った手下は怒りの形相のシアンとクーアを見て、悲鳴を上げていた。
「ひっ……ひぃ……」
手下は逃げようとしたのだが、あっという間にシアンとクーアはその手下の前に移動した。攻撃される。そう思った手下は覚悟を決めたのだが、その時だった。スリッパがシアンとクーアの前に落下したのだ。
「え?」
「何これ? スリッパ?」
スリッパを見たシアンとクーアは魔力を抑え、落下した謎のスリッパを見た。その直後、オーガツカがシアンとクーア、ゴガツの手下の間に入るように現れた。
「はい。喧嘩はそこまで。休み時間は終了だ。さっさと授業に戻れ」
オーガツカがこう言った後、手下は悲鳴を上げながらその場を去って行った。シアンとクーアは追いかけようとしたのだが、オーガツカが邪魔をした。
「勇者ってのは案外えげつないことを考えるんだな。弱腰の奴を追いかける必要はあるか?」
「あいつらにいろいろとされたのよ! 一発どころか百発ぶん殴らないと気が済まないわ!」
「落ち着け。そんなことをしたら人としても勇者としても格が落ちるだけだ」
オーガツカの言葉を聞き、シアンは落ち着いた。
その後、ベーキウたちは職員室へ向かい、ゴガツの手下のことを話した。事情を察したオーガツカはうなり声を上げ、座っている椅子を回転させながらこう言った。
「やっぱりあいつが絡んでいるのか」
「あいつって、あの腹黒そうなぶりっ子か?」
クーアの問いに対し、オーガツカは頷いた。
「そう。ゴガツのことだ。あいつのことを知っているってことは、あいつはもうお前たちに接触したってことか」
「そうです。あの子、何なんですか?」
キトリがこう聞くと、オーガツカはため息を吐いた。
「簡単に言うと、常識の枠を超えたわがまま娘。自分の思い通りに人生が動かないと腹が立つ一番厄介な奴だ」
「まぁ、確かにそんな気がするな」
ベーキウはゴガツの態度、そして手下のことを思い出しながらこう言った。
「ゴガツはこの学校で一番の問題児だ。わがままだけど、あのかわいさに惚れてあいつの手下になる奴がたくさんいる。それに、あいつは教師の弱みを握り、自分の手下にしてしまう」
「そんな奴、さっさと退学にしてしまえばいいのに」
クーアはそう言ったが、オーガツカは首を振った。
「あいつ、校長先生の弱みも握っているんだ。だから退学にしたら、何をするか分からない」
「うーわ、とんでもない娘ね……」
シアンは呆れて呟いた。そんな中、オーガツカはシアンの方を向いた。
「気を付けることだ。ゴガツはどんなことをしてもお前たちを下僕にするつもりだ」
「どうして私たちを狙うのかしら?」
「力だよ。俺もお前たちのニュースを見てきたが、お前たちには大きな事件を解決するほどの力がある。ゴガツはそれに目を付け、下僕にすればその力が自分の物になると考えたんだろう」
「虎の威を借りる狐か。さっきは手下を使って俺たちを襲わせたし、他力本願にもほどがあるだろ」
ベーキウがこう言うと、何かを思い出したかのようにオーガツカはこう言った。
「そうだ。もう一つゴガツの狙いがあった」
「狙い?」
キトリがこう聞くと、オーガツカは頷いて語り始めた。
「あいつのもう一つの狙いは、ベルリアの人気を奪うことだ。意外だと思うが、ベルリアはこの学校でかなりの人気者だ。本人はそんな気はしてないと思うが、騒動があれば颯爽と現れて、颯爽と事件を解決する。まぁこの学校のヒーローみたいなもんだ。そんなんだから、ゴガツに目を付けられ、勝手に憎まれてるんだろうな」
「勝手に嫉妬しているだけね」
「勇者の嬢ちゃんの言う通りだ。ベルリアと仲良くなれば、お前たちもゴガツから敵と見られる。あまりゴガツを敵に回すのは勧めないが、まぁその辺はお前たちに任せる」
オーガツカはそう言うと、授業があると言って職員室から出て行った。話が終わった後、ベーキウはシアンに話しかけた。
「変な厄介なことに巻き込まれそうだな」
「ええ。ゴガツはよからぬことを考えて、騒動を起こして広げる奴ね。変なことにならなければいいけど」
と、シアンは大きなため息を吐いてこう答えた。
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